安定した職種の代表格が公務員です。一般の会社は経営状況の悪化による倒産が発生しますが、公務員だと国や地方自治体が雇い主となるため倒産によって失業することはありません。そのため、安定性を求めて公務員を目指す人は多いです。

このとき、公務員の中には資格職も存在します。例えば薬剤師は資格を活かして公立病院の調剤業務や薬事承認業務などにあたる公務員となることができます。資格職を選べば、専門的なスキルを活かしながら安定性の高い公務員として働くことが可能となります。

それでは国家資格の一つである登録販売者は、資格を活かして公務員になることができるのでしょうか? また登録販売者が公務員になることには、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

ここでは、登録販売者が公務員になる方法について解説していきます。

登録販売者は公務員になれるのか?

公務員は安定性の高さから就職希望者が多い職種です。また公務員となるために必須の資格は存在しないため、年齢条件さえ満たせば誰でも挑戦することができます。このようなことから就職先として公務員を希望する人は多く、採用されるまでの道のりは険しめです。

一方で公務員の資格職であれば、資格保有者しか職務に就けません。そのため総合職・一般職に挑戦するよりもライバルが少ない環境で挑戦できます。

このとき、登録販売者は医療系国家資格の一つです。そのため登録販売者の中には「資格を活かして公務員職に就きたい」と考えている人がいます。

登録販売者資格が必要な公務員職は存在しない

ただ、公務員の国家資格職には登録販売者資格が必要となる職種が存在しません。登録販売者は市販薬販売に特化した資格であるためです。

当然ながら、国や地方自治体などが運営する組織の中には、市販薬を販売する業態はありません。そのため、登録販売者資格そのものを活かせる公務員職はありません。

また国や自治体組織などでは薬に関する業務が多数ありますが、市販薬に関する業務のみを扱う職種は存在しません。

例えば保健所の医務薬務課ではドラッグストアなどの開設や登録販売者の従事登録などをしています。ただ医務薬務課は登録販売者だけでなく、医師・薬剤師免許の管理や病院・薬局の行政指導なども行っています。

公務員職には市販薬に特化した職種が存在しないのです。そのため、登録販売者が公務員の資格職(専門職)に就くことは不可能です。

登録販売者が公務員になる方法

ただ、資格の必要ない公務員職であれば登録販売者であっても挑戦することが可能です。国家公務員・地方公務員ともに、基本的には公務員試験・採用試験に合格すれば職務に就くことができます。

一般的に、公務員試験では高校で学習した内容や時事問題、数的処理などの教養科目が出題されます。これに加えて、行政や法律、経済などの専門区分で合格点を取らなければなりません。

また中には、行政以外の専門知識が必要な職種もあります。例えば国土交通省や環境省などでは、公務員の採用試験で土木(工学)の専門知識を有すると認められた人を採用しています。また厚生労働省などでは化学や生物、薬学の知識を持つ人が働いています。

実際に以下は、国家公務員・総合職の採用試験案内です。

ここには試験区分と採用予定数が記載されており、工学や化学・生物・薬学などの試験区分が存在しており、それぞれ採用予定数が記されています。公務員であっても、専門知識を活かした職種が存在するのです。

このとき、化学・生物・薬学分野は登録販売者の資格保有者であれば理解しやすい内容です。そのため登録販売者の知識を活かすのであれば、化学・生物・薬学の試験区分で受験するといいでしょう。

また、公務員試験には社会人経験者が受験できる社会人試験もあります。例えば以下は、神奈川・横浜の社会人採用試験の案内です。

ここには、民間企業などでの職務経験が既定の期間内に5年以上ある人が受験資格を持つと記されています。登録販売者としての知識が活かせる試験内容であるとは限りませんが、社会人としての経歴を活かして公務員になれることを覚えておきましょう。

なお通常、公務員試験には年齢制限が設けられています。例えば国家公務員の試験は30歳未満しか受験できません。また地方公務員であっても、受験資格を40歳未満に設定している自治体があります。

そのため中途採用で公務員を目指す人は、受験する自治体の年齢制限に注意しましょう。

中卒・高卒の登録販売者でも大卒レベルの公務員になれる

なお登録販売者は受験資格に制限がない資格です。そのため中には、中卒・高卒の登録販売者もいます。このような人は「最終学歴が低く、公務員試験の受験資格を満たせていないのではないか」と心配になるケースが多いです。

実際、公務員試験は「院卒者試験」「大卒程度試験」「高卒程度試験」などの難易度による試験区分があります。

これらのうち高卒程度試験では、その名の通り「高校卒業者が解答できる難易度の問題」が出題されます。高卒程度試験は国家公務員・地方公務員のどちらにも存在しているため、高卒であれば国家公務員・地方公務員のどちらも目指すことが可能です。

一方で、公務員試験には「中卒程度試験」という区分がありません。そのため、中卒の人は「受験資格を満たしていないから公務員試験は挑戦できない」と思いがちです。

ただ実際には、院卒者試験以外の公務員試験は学歴に関わらず受験することが可能です。極端なことをいえば、中卒でも大卒程度試験を受験することができるのです。

当然ながら大卒程度試験は難易度がかなり高いため、中卒の人が挑戦するのは現実的ではありません。一方で、登録販売者試験に受かるだけの実力があるのであれば、高卒程度試験に合格することが可能です。そのため中卒の登録販売者は、高卒程度試験の合格を目指すといいです(もちろん大卒程度試験を目指してもいいです)。

また同様に、高卒であっても大卒程度試験に挑戦することは可能です。当然ながら多大な努力が必要ですが、その分だけ給料が高く出世しやすくなります。

登録販売者が公務員になるメリット・デメリット

なお、公務員試験では幅広い分野から出題されるため、受験対策に時間を要します。登録販売者試験は半年もあれば試験範囲を十分に学習することができますが、公務員試験だと1年でも足りないケースがあります。

このとき、公務員職には登録販売者職にはないメリットが多数ある一方で、登録販売者が公務員となることにはデメリット・リスクも存在します。このメリット・デメリット双方を理解せずに公務員となってしまうと、受験対策にかけた時間と労力が無駄になってしまいます。

そのため公務員を希望する登録販売者は、メリットとデメリットを十分に理解することが大切です。具体的には、以下のようになります。

土日祝日休み・夕方退勤を実現できる

まず、誰もが知っている「公務員職に就く最大のメリット」は安定性が高いことです。公務員は国や地方自治体が雇い主となるため、倒産による失業がありません。そのため基本的には、大きな問題を起こさなければ定年まで公務員職に就くことができます。

また、安定性の高い職種は社会的信用が厚いです。そのためローンを組みやすくなったり、クレジットカードの審査に通りやすくなったりします。

さらに登録販売者が公務員職を選ぶことには、大きなメリットがあります。それは土日祝日が休みとなる上、勤務時間を固定化できる点です。

登録販売者として働く場合、ドラッグストアなどの小売店で働くケースがほとんどです。小売店の多くは土日祝日も営業しており、売り上げも多いです。そのため、登録販売者として小売店で働くと土日祝日を定休にすることができません。

また登録販売者が働く小売店は、朝から夜遅くまで営業している店舗がほとんどです。そのため登録販売者として働くと、早番と遅番の入り混じったシフト制で勤務することになります。

例えば以下は、東京や埼玉、愛知などに店舗を展開するドラッグストアの求人です。

この求人は「8:00~17:00」「13:15~22:15」などのシフトで2交代制勤務となります。登録販売者としてドラッグストアで働くと、勤務時間を固定することができないのです。

これに対して公務員であれば、土日祝日が休みとなる職種・部署がほとんどです。ゴールデンウィークや年末年始などに長期の休暇を取ることもできます。

また勤務時間は朝~夕方が基本です。公務員になれば、登録販売者職では難しい「土日祝日休み・夕方退勤」を実現できるのです。

地方公務員であれば全国転勤なしで働ける

またドラッグストアなどの小売企業は、店舗をチェーン展開しているケースがほとんどです。中には、全国各地に店舗が存在している企業もあります。そのため登録販売者資格を活かして小売店で働くと、引越しを伴う転勤が発生します。

実際に以下は、北海道や東京、大阪など全国に店舗を展開するドラッグストアの求人です。

この求人は入社後に全国転勤の可能性があります。登録販売者として働くと、転勤によって引越しする必要性が生じるのです。

これに対して地方公務員であれば、雇い主が地方自治体となるため遠方への転勤がほとんど発生しません。地方公務員になれば、住み慣れた土地で長く働き続けることができます。

登録販売者としての復職は難しい

ただ公務員を目指す登録販売者には、覚悟しておくべきことが一つあります。公務員として働くと、登録販売者としての復職が難しくなる点です。

登録販売者が正規の資格を維持するためには、過去5年以内に2年以上の業務・実務経験が必要です。この条件を満たせなければ登録販売者資格が「研修中」の扱いになります。そのため公務員として3年以上働くと、登録販売者資格が「研修中」へ格下げとなります。

研修中の登録販売者は、自分ひとりで薬を扱うことができません。そのため復職を考える際は需要が低く、待遇も悪いです。

例えば以下は、北海道から沖縄まで全国に店舗を展開するコンビニエンスストアの登録販売者求人です。

この求人は管理者要件を満たす人しか応募できません。つまり、研修中の登録販売者は働くことができないのです。

また以下は、東京や愛知、大阪など全国に店舗を展開するドラッグストアの求人です。

この求人は登録販売者手当が月額1万5,000円支給されますが、研修中の登録販売者だと手当が月額5,000円へ減額されます。

このように、登録販売者資格が研修中へ格下げとなると、登録販売者として復職しにくくなったり待遇が悪くなったりします。そのため、公務員を目指す登録販売者は「登録販売者の資格保有者としての価値」が下がることを覚悟しておきましょう。

年功序列のため転職後の年収が低くなる

また登録販売者が公務員となると、給料が下がる可能性が高いです。特に地方公務員を目指す登録販売者は、年収の大幅な低下を覚悟する必要があります。

小売業界は実力主義であるため、成果を出せば若いうちから高収入を実現できます。これに対して公務員は、勤続年数に応じて昇給・昇進が決まります。そのため、公務員に転職すると給料が大きく下がるケースが多いです。

実際に、地方公務員の初任給は高卒で月額15万円、大卒で18万円ほどです。これに対して以下は、東京や神奈川、埼玉などに店舗を展開するドラッグストアの求人です。

この求人は高卒だと月給18万円、大卒だと月給20万円以上が支給されます。初任給を比べても月額2~3万円の差があるのです。

また以下は、愛知や奈良、京都などに店舗を展開するドラッグストアの求人です。

この求人例では、28歳で580万円、32歳で720万円となっています。実際に私の知り合いには、30代前半で年収600万円以上を達成している登録販売者がいます。登録販売者職であれば、やる気さえあれば若いうちから高年収を実現することが可能なのです。

これに対して、新卒入社した公務員が年収600万円に届くのは40歳を超える頃です。中途採用された年齢が高いと、年収600万円に届くのがさらに遅くなります。

これに加えて、地方公務員の給料は地域によって大きな差があります、一般的に、大都市と規模の小さな町村では年収に200~300万円の開きがあるとされています。

そのため地方公務員を目指す登録販売者は、給料が大きく下がることを覚悟しておきましょう。

メリット・デメリットを考慮して転職サイトで求人を探す

なお公務員としての勤務そのものに興味・やりがいを感じているのであれば、デメリットを踏まえた上で公務員を目指すといいです。ただ一方で、安定性や働きやすさなどを求めているのであれば、公務員にこだわらず求人を探すことをおすすめします。

まず登録販売者は国家資格であるため、もともと安定性の高い職種です。資格職であることからリストラ対象になりにくいですし、転職先も見つかりやすいです。登録販売者は市販薬という必需品を扱う性質上、人口の少ない地域でも需要があります。

また、登録販売者職の中にも働きやすい求人はあります。例えばドラッグストアであっても、転勤なしで働くことはできます。実際に以下は、東京や神奈川などに店舗を展開するドラッグストアの転勤なし求人です。

この求人だと登録販売者が引越しなしで働くことができます。また以下は、東京や愛知、大阪など全国に店舗を展開するドラッグストアの求人です。

この求人は「ナショナル職」「リージョナル職」「エリア職」の3つの勤務区分から選択することが可能であり、エリア職を選べば転職を伴う転勤なしで働くことができます。ドラッグストアであっても「引越しを伴う転勤なし」で働くことは可能なのです。

また、登録販売者資格を活かして調剤事務やテレフォンオペレーター職に就けば、土日休みや夕方退勤を実現できます。これらは登録販売者としての業務であるため、業務・実務経験も積めます。登録販売者資格を維持しながら働きやすい環境で勤務することは可能なのです。

そのため働きやすい仕事に就きたい登録販売者は、公務員にこだわらず転職サイトを利用して幅広い職種から求人を探しましょう。

転職サイトの担当者は、膨大な数の求人からあなたに合う案件を紹介してくれます。そのため転職サイトを利用すると、働きやすい求人を見つけやすくなります。

また、転職サイトには「準公務員」と呼ばれる公益性の高い法人の求人もあります。準公務員とは公務員とほぼ同等の待遇を受けられる職種です。独立行政法人などがこれに該当します。

一方で雇用主が国・地方自治体ではないため、公務員試験を受ける必要がありません。転職サイトを利用すると、公務員試験を受けずに公務員のような職種に就くことも可能となるのです。

ただ、転職サイトの担当者の力量には個人差があります。そのため転職サイトは、最低でも3社以上登録しましょう。そうすることで、希望の条件を満たした求人を見つけやすくなります。

まとめ

公務員の中には、資格を活かして就ける資格職があります。ただ、登録販売者の資格が必要となる資格職はありません。そのため、登録販売者資格そのものを活かして公務員となることはできません。

ただ、登録販売者の知識を活かしやすい公務員試験は存在します。また社会人試験であれば、登録販売者としての職歴を活かした公務員への転職が可能となります。そのため公務員を目指す登録販売者は、化学・生物・薬学区分や社会人試験を受験するといいです。

このとき、登録販売者が公務員になることには「カレンダー通りの休日」「夕方退勤」などのメリットがあります。一方で「登録販売者資格の格下げ」「年収の低下」などを覚悟しなければなりません。

そこで、働きやすい仕事に就きたい登録販売者は、公務員にこだわらず転職サイトを利用して幅広い職種から求人を探すことも視野に入れましょう。そうすることで、場合によっては公務員試験なしにて、準公務員として公務員と同等の求人を見つけることも可能です。そうして、希望条件を満たした求人先で長く働くことができるようになります。


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