薬店などに勤めたことがなく、薬の販売に携わった経験のない登録販売者は研修中(見習いのようなもの)の扱いとなります。研修中の登録販売者が「正規の資格者」となるためには、業務・実務経験が必要であるためです。
そして、研修中の登録販売者は一人で薬を扱えないため、正規の登録販売者よりも需要が低く求人が少ないです。そのため正規の資格者になるためには、見習いの登録販売者であっても働ける求人を探さなければなりません。
また登録販売者として働き続けたいのであれば、正規の登録販売者となるための条件を知っておくべきです。これを知らなければ、長期間働いても正規の登録販売者になれなかったり、再び研修中へ格下げとなったりしやすくなるためです。
では、どのような働き方を実践すれば正規の登録販売者となることができるのでしょうか? また、研修中の登録販売者が転職を成功させるためには、どのような点に注意すればいいのでしょうか?ここでは、「実務経験なしの登録販売者が正規の資格者になるための条件」「研修中の登録販売者が転職を成功させるコツ」について解説していきます。
もくじ
研修中の登録販売者が正規の資格者になるためには?
登録販売者試験に合格し、保健所で従事登録を済ませると「登録販売者」と名乗ることができます。ただ、自分一人で薬を扱える正規の登録販売者となるためには業務・実務経験が必要です。
具体的にいうと、過去5年以内に2年以上の業務・実務経験がないと研修中の登録販売者となります。そのため、過去にドラッグストアなどでの勤務経験がない登録販売者は「市販薬販売に関する業務に2年間就いた段階」で正規の登録販売者となります。
一方で正規の登録販売者となっても、退職・休職などによってドラッグストアなどで勤務していない期間が3年以上になると、登録販売者資格が「研修中へ格下げ」となります。管理者要件を満たせなくなるためです。
そのため基本的には、ブランクを3年以上空けずに市販薬販売に関する業務に就いていれば、正規の登録販売者資格を維持することができます。
勤務時間が80時間未満だと研修中の扱いとなる
ただ働き方によっては、ブランクを3年空けずに薬店で勤続しても研修中(見習い)の登録販売者のままとなってしまいます。これは、市販薬の販売に関わる業務時間が月間80時間以上ではないと、登録販売者としての業務・実務経験としては認められないためです。
例えばドラッグストアでアルバイト・パートとして働いている場合、実際の勤務時間が月80時間未満となった月は業務・実務経験に換算されません。そのため、登録販売者として薬店で長期間働いていても、労働時間が短いと管理者要件を満たせないことがあります。
また正規雇用で働いている場合でも、欠勤や遅刻、早退などによって勤務時間が月80時間未満となった月は管理者要件における実務経験とはなりません。そのため、正社員勤務でも状況によっては実務時間不足で管理者要件を満たせないことがあります。
例えば、以下の図のような状況が生まれると、実務経験と認められない月が発生します。
このように、正社員勤務であっても病気などによって月間の出勤時間が80時間に満たないケースがあると、管理者要件を満たしにくくなるのです。そのため研修中の登録販売者が正規の資格者になるためには、月間の勤務時間が80時間を切らないように注意する必要があります。
研修中・見習いの登録販売者は仕事がないのか?
登録販売者は市販薬を販売できるため、小売業界で重宝されている資格です。ただ、研修中の登録販売者は薬の接客はできるものの、自分一人で薬を販売することができません。そのため、研修中の見習い登録販売者は正規の資格者よりも求人が少ないのは事実です。
例えば、以下は岩手や宮城、福島などに店舗を展開するドラッグストアの求人です。
ここには、登録販売者としての実務経験が2年以上ある人材を募集していると記載されています。つまり、研修中の登録販売者は応募できないのです。
ただ中には、研修中の登録販売者を採用している求人もあります。例えば、以下は千葉や愛知、京都などに店舗を展開するドラッグストアの求人です。
ここには、登録販売者資格を所持していれば未経験でも応募可能なことが記されています。このような記載のある求人を選べば、研修中の登録販売者でも中途入社が可能となります。
ただ研修中の登録販売者を採用している企業であっても、状況によっては採用されないケースがあります。それは「登録販売者資格を取得した理由が明確ではない場合」です。
合格後に働かない期間が長いと採用されにくい
中途採用の面接では志望動機が重要視されます。転職するということは前の会社を辞める(または辞めている)ことですし、働く意欲が低い人材は仕事をするにしても長続きしません。
早期退職されると、面接・教育にかけた費用が無駄となります。そのため転職の面接では、働く意欲が高く早期退職しにくそうな人材が採用されやすいです。
このとき、登録販売者試験に合格後、資格者として働いていない期間が長いと「登録販売者として働く意欲が低い」「考えなしで資格を取った」という印象を与えやすいです。そのため試験合格後に登録販売者として働かなかった期間が長い合格者は、不採用となりやすい傾向にあります。
したがって登録販売者試験に合格後、働いていなかった研修中の見習い登録販売者は「資格取得後すぐに登録販売者として働かなかった説得力のある理由」が必要です。
例えば、地域によっては研修中の登録販売者が応募できる求人が出ていないタイミングがあります。そのため、ドラッグストアなどが少ない地域に居住している人は「登録販売者として働きたかったが研修中可の求人が出ていなかったため、試験合格後にブランクが生じてしまった」と説明することができます。
一方でブランクに至ったやむを得ない事情を説明できない場合、「合格後ブランクが生じてしまったが、どうしても登録販売者としてのキャリアをスタートさせたい」などと、熱意を伝えることが大切です。
研修中は白衣を着用せず、一般スタッフ扱いされることがある
研修中の登録販売者は一人で薬を販売することができないため、正規の登録販売者と明確に区別されます。
具体的にいうと、研修中の登録販売者は名札の資格者欄に「登録販売者(研修中)」などと記載することが法律で義務付けられています。
また給料も正規の登録販売者より低くなることがほとんどです。実際に以下は、東京や大阪など全国に店舗を展開するドラッグストアの求人です。
ここには、正規の登録販売者には手当として月額1万5,000円支給される一方で、研修中は手当額が5,000円となることが記されています。研修中の登録販売者は、正規の登録販売者よりも低い給料で働くことになるのです。
さらに中には、研修中の登録販売者には白衣を着用させない企業もあります。
顧客は基本的に、スタッフのネームプレートを見ません。そのため研修中の登録販売者であっても、白衣を着ていれば薬の相談を持ちかけられるケースがほとんどです。
一方で、白衣を着ていなければ「薬の専門家である」と顧客に認識されません。
そのため研修中の登録販売者に白衣を着させない店舗で働くと、登録販売者としての仕事をする機会がかなり少なくなります。その結果、やりがいを感じたり経験が積んだりできなくなり、登録販売者としてのキャリアを諦めざるを得なくなるケースもあります。
そのため登録販売者として働きたいのであれば、事前に店舗を見学して研修中の登録販売者が白衣を着ているかどうかを確かめておくことをおすすめします。
研修中の登録販売者が転職を成功させるコツ
スーパーやホームセンター、コンビニエンスストアなどは薬の売上比率が低いため、時間あたりの資格者が一人になるシフトを組んでいるケースがほとんどです。そのため、スーパーなどの「薬以外の商品がメイン商材の店舗」では研修中の見習い登録販売者が働けないことが多いです。
実際に以下は、北海道・札幌にあるローソンの登録販売者求人です。
ここには、管理者要件を満たす登録販売者を募集していることが記されています。つまり、実務経験なしの登録販売者を募集していないのです。そのため研修中の登録販売者は、コンビニエンスストアやスーパーなどの「薬が主商品ではない業態」では働けないことを覚えておく必要があります。
ドラッグストアの実務経験なし求人を狙う
一方で、薬が主な商材の一つとなっている業態は多くの資格者が在籍しています。そのため研修中の登録販売者は、このような業態を中心に求人を探しましょう。
例えば、ドラッグストアは市販薬が主力商品の一つです。ドラッグストアが資格者不足によって市販薬が販売できなくなると、売上が減少するだけではなく顧客からの信用を失います。そのため、ドラッグストアには多くの資格者が在籍しています。
また、ドラッグストアの中には調剤薬局が併設されている店舗も多いです。調剤薬局が開局している時間には、必ず薬剤師がいます。そのためドラッグストアは、研修中の登録販売者がもっとも実務経験を積みやすい環境です。
例えば以下は、東京や大阪、愛知などに店舗を展開するスギ薬局の求人です。
ここにはドラッグストア経営だけではなく、処方せん調剤を行っていることが記されています。スギ薬局は調剤併設のドラッグストアを多く展開しているのです。そのため、スギ薬局は研修中の登録販売者も応募できます。
実際に以下は、この求人の応募資格の欄です。
ここには登録販売者を募集していることが記されており、管理者要件に関する記述はありません。つまり、この求人は研修中の登録販売者も応募できるのです。
そのため薬剤師や登録販売者などの資格者が多いドラッグストア業態は、研修中の登録販売者がもっとも経験を積みやすい業態といえます。
調剤薬局での勤務もおすすめ
またドラッグストアと同様に、調剤薬局も研修中の見習い登録販売者におすすめの業態です。調剤薬局は市販薬を取り扱っている施設がほとんどであり、必ず薬剤師がいるためです。
実際に以下は、埼玉にある調剤薬局の求人です。
ここには、登録販売者を募集していることが記されています。登録販売者資格は、調剤薬局で活かすこともできるのです。そのため、研修中の登録販売者はドラッグストアや調剤薬局を中心に求人を探しましょう。
調剤薬局のある大型スーパーは狙い目
前述したように、スーパーなどのドラッグストア以外の業態は研修中の登録販売者を雇用していないことがほとんどです。
ただ例外的に、大型スーパーの中には市販薬の販売金額が大きく、調剤薬局を併設している店舗を設けているところがあります。実際に以下は、北海道にあるイオンの薬売り場です。
このように、このイオンの薬売り場には調剤薬局があります。つまりこの店舗には薬剤師が常駐しているのです。
このとき薬剤師は人件費が高いため、市販薬の販売業務は賃金が低い登録販売者が担っています。実際に、私がよく行くイオンには研修中の登録販売者が業務経験を積みながら働いています。イオンのような大型スーパーでは、研修中の登録販売者も働くことができるのです。
大型スーパーを運営する大手小売企業は、福利厚生や休日休暇制度などが充実していることが多いです。そのため、研修中の登録販売者は大型スーパーの求人にも応募できることを覚えておきましょう。
転職サイトを利用して転職を成功させる
これまでに述べたように、研修中の登録販売者は正規の登録販売者よりも働ける職場が限定されます。
また研修中の登録販売者は薬を販売できないことから、給与面でも差をつけられることが多いです。このような環境の中、好条件の求人を自力で探すことは困難です。
そのため研修中の登録販売者は、転職サイトを利用して求人を探しましょう。
転職サイトの担当者は未公開案件も多数抱えています。そのため転職サイトを利用すると、より良い条件の求人も検討することが可能となります。
さらに、転職サイトのコンサルタントはあなたの経歴を活かして会社と賃金などの交渉を行ってくれます。そのため、転職サイトを利用すると好条件での入社が叶いやすくなります。
ただ、コンサルタントの力量には個人差があります。そのため、転職サイトは最低でも3社以上登録しましょう。そうすることで能力の高い担当者と巡り合いやすくなり、希望する条件での転職を成功させやすくなります。
まとめ
登録販売者資格は、管理者要件を満たさなければ研修中(見習い)の扱いとなります。具体的には3年以上ブランクを空けずに薬店で働いていれば、正規の登録販売者資格を維持することができます。
ただ管理者要件には細かい規定があるため、働き方によっては長期間勤続しても正規の登録販売者となれないことがあります。そのため研修中の登録販売者は、正規の登録販売者となるための条件を正しく認識することが大切です。
このとき、研修中(実務経験なし)の登録販売者が応募できる求人は限られています。ただ研修中の登録販売者は、薬の取扱店で働かなければ業務・実務経験が積めません。研修中の見習い登録販売者は、働かなければ正規の登録販売者になれないにも関わらず応募できる求人は少ないのです。
そのため薬の専門家として働き続けたい研修中の登録販売者は、転職サイトを利用してドラッグストアや調剤薬局の求人を探しましょう。そうすることで、求人が少ない環境でも好条件での転職を成功させ、登録販売者としてのキャリアをスタートできるようになります。
登録販売者が転職を行い、求人を探すにしても自分一人で行うのは現実的ではありません。そこで、ほとんどの人が転職エージェントを活用します。
転職サイトを利用すれば、「年収の交渉」「希望の勤務地」「労働時間の調節」を含めてすべて代行してくれるようになります。
しかし、転職サイトによって「地方在住者でも事前面談に対応している」「40代以上でも利用可能」など特徴に違いがあります。人気の転職エージェントの中でも、これらの特徴を理解したうえで、どの転職サイトを利用すればいいのか検討しなければいけません。
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