ほとんどの業界は、時代の流れや情勢などによって不況になる可能性があります。そのため、大企業へ入社しても倒産・リストラのリスクをゼロにすることはできません。
ただ、医療業界は他の業界に比べて時代・情勢の変化に強いです。病気・怪我を完全に予防することは不可能であるためです。特に、薬の製造・開発を行う製薬会社は「安定している」として人気が高いです。
このとき、登録販売者は医療系資格の一つです。そのため登録販売者の中には、資格を活かして製薬会社へ就職したい人もいるでしょう。
それでは、登録販売者資格を活かして製薬会社へ就職することは可能なのでしょうか? また登録販売者が製薬会社で働くためには、どのように行動すればいいのでしょうか?
ここでは、登録販売者が製薬会社へ就職する方法について解説していきます。
もくじ
登録販売者が製薬会社で働くことはできる?
製薬会社の求人は、大きく分けて研究開発職と営業職、事務職の3つに分かれています。
これらのうち研究職は、理系大学を卒業している人しか募集していないことがほとんどです。そのため、登録販売者資格を活かして製薬会社の研究職に就くことはできません。
一方で営業職や事務職には、理系大学で学ぶような専門性の高い知識を必要としません。そのため、製薬会社で登録販売者が働く場合、営業職か事務職のどちらかを選ぶことになります。
また製薬業界には、CROなどの製薬会社をフォローする会社も多数存在しています。この記事では、このような会社も含めて紹介していきます。
登録販売者がMRなど営業職に就く
なお製薬会社の営業職は、主に一般小売店のルート営業と医師・薬剤師に営業活動を行うMRの2つに分けられます。
・小売店向けのルート営業
これらのうち小売店向けのルート営業では、取引している小売店を回り市販薬や化粧品などの営業・プロモーションを行います。そのため、小売店営業は登録販売者の知識を活かしやすいです。
ただ製薬会社の多くは、卸会社を通じて商品を流通させています。小売店と直接取り引きしている製薬会社は少ないのです。
また、市販薬は薬全体の1割程度しかありません。このようなこともあり、製薬会社の小売店向け営業求人はかなりレアです。
・医師や薬剤師に営業を行うMR
一方で医師・薬剤師に営業活動を行うMRは、小売店向け求人よりも多いです。世の中に流通している薬のほとんどは医療用医薬品(医師・薬剤師が関わる薬)であるためです。
MRは、病院や薬局などを訪問して医師・薬剤師に医療用医薬品の情報を提供したり、医師などから上がった副作用についての情報を会社へ報告したりするのが基本業務です。
また多くの場合、MRには会社から数値目標(ノルマ)が課せられます。
ただ、MRは製品の値段を決定する権利がありません。そのため、知識や話術、気配りなどを駆使して製品を売り込まなければなりません。
またMRが製品案内をするのは、医療と薬のプロである医師・薬剤師です。そのため、MRには小売店向けの営業よりも高度な知識が必要となり、登録販売者としてのスキルだけでは足りません。
ただ登録販売者は薬などの基礎知識があるため、MRに必要な知識が頭に入りやすいです。
また、登録販売者とMRの仕事には「顧客へ薬の説明をする」という共通点があります。そのため登録販売者としての勤務経験があれば、MR求人へ挑戦しやすくなるのです。
例えば以下は、東京や大阪など全国に事業所を展開する製薬会社のMR求人です。
この求人は、営業か販売・接客の経験が2年以上ある人を募集しています。登録販売者としての勤務経験があれば、営業経験がない人であってもMRになることが可能なのです。
ただMRへの転職は35歳がギリギリであり、できれば20台後半までには転職を完了させなければ厳しいという現状があるのは理解しましょう。
製薬会社の事務職に就く登録販売者の仕事内容
一方で製薬会社の事務職では、受発注業務やデータ入力などを担います。そのため、パソコンの基本知識と電話などでの対応力が求められます。
また製薬会社の事務職が扱う商品は、言うまでもなく薬です。そのため製薬会社で働く以上、事務職であっても薬の知識が必要となります。登録販売者の持つ「薬の基礎知識」は、製薬会社の事務で活かすこともできるのです。
さらに製薬会社の事務求人の中には、登録販売者として店長以上の役職経験を活かせるものもあります。小売店の店長を経験していると、経営に必要な基礎知識が身についているためです。
例えば以下は、大阪や京都などにある製薬会社の事務求人です。
この求人は、受発注業務・計数管理の経験やサプライチェーン(供給連鎖)に対する理解がある人を求めています。
登録販売者として店舗で働いていれば、受発注業務をこなすスキルが身についています。また、小売店の店長として実績を上げるためには計数管理スキルが必須です。店長以上の役職を経験していれば、供給連鎖(サプライ・チェーン)に関する基本的な知識も身につきます。
そのため小売店の店長以上を経験している登録販売者は、知識・経験を活かして製薬会社の内勤として高度な仕事を担うこともできます。
製薬会社で実務経験は積めるのか?
このとき登録販売者が製薬会社へ就職する際、気になるのは「実務経験を積めるかどうか」でしょう。登録販売者は過去5年以内に2年以上の業務・実務経験がなければ、「研修中の登録販売者」へ格下げとなってしまいます。
研修中の登録販売者は、市販薬販売の時間帯責任者に就けません。そのため、登録販売者資格が研修中へ格下げとなると、小売業界での転職が不利になります。
ただ、製薬会社では登録販売者としての実務経験を積めません。登録販売者は市販薬を販売する資格であるため、製薬会社での仕事は「登録販売者業務である」と認められないためです。
そのため、登録販売者が製薬会社へ入社する場合、資格が研修中へ格下げとなることを覚悟する必要があります。
ただ、市販薬を一般客に販売しない業務(=製薬業界での仕事)には、登録販売者資格の状態は関係ありません。むしろ、製薬業界では登録販売者資格そのものではなく「製薬業界で役立つ経験・経歴」を重視します。
そのため、製薬業界で働くことによって登録販売者資格が研修中へ格下げとなっても、製薬業界での転職活動には全く影響しません。
ただ、いずれ小売業界へ戻る予定があるのであれば、製薬業界で働くことによって転職が不利になることを覚えておきましょう。
登録販売者が製薬会社で働くメリットは高い年収
なお一般的に、製薬業界は小売業界よりも平均年収が高めです。そのため登録販売者が製薬会社へ転職すると、年収が上がりやすくなります。
例えば以下は、東京や千葉、大阪など全国に店舗を展開するドラッグストアの求人です。
この求人は専門卒を月給18万5,000円以上、大卒を月給20万5,000円以上で募集しています。これに対して、以下は東京のMR求人です。
この求人は月給24万7,000円以上に加えて、別途外勤日当を支給しています。登録販売者がMRとなると、小売店勤務よりも給料が高くなるのです。
また小売店勤務では、品出し・納品で10kg前後の荷物を持ち運びすることがあります。そのため、小売店のスタッフ勤務は体力仕事です。腰痛を発症する人も多いです。
一方、製薬会社で働く場合、重い荷物の運搬がありません。そのため、局所的な体への負担が軽く「体力的に楽である」と感じやすいです。
土日休み・年末年始休暇を取ることができる
また年収以外にも、登録販売者が製薬会社で働くことには大きなメリットがあります。それは、カレンダー通りの休みを実現できる点です。
小売店は土日祝日の来客数が多く、売上も多いです。そのため小売店で勤務する場合、土日祝日を定休とすることはできません。
また、一般的な休みであるお盆や年末年始などは、繁忙期であるため休みを取れません。小売業で勤務すると、世間一般的には休みとなっている日に出勤することになるのが普通です。
一方で製薬会社では、病院や薬局などの都合で週1回程度土曜出勤を生じることがあるものの、基本的に土日祝日は休みです。また、お盆や年末年始などにも休みを取ることができます。
実際に以下は、北海道や東京、福岡など全国に営業所を展開する製薬会社のMR求人です。
この求人は土日祝日が定休であり、年末年始に休暇を取れます。製薬会社で働くと、小売店勤務では不可能なカレンダー通りの休みを実現することができるのです。これは、営業でも事務職でも同様です。
働きやすい勤務時間を実現できる
また登録販売者がMRになる場合、規則正しいシフトで働けるというメリットもあります。
登録販売者が店舗で勤務する場合、基本的には早番と遅番が入り混じったシフトで働くことになります。そのため、登録販売者資格を活かして店舗勤務する場合、規則正しい勤務時間となることはありません。
これに対して製薬会社では、朝から夕方までが基本的な勤務時間となります。例えば以下は、北海道や東京、福岡など全国に営業所を展開する製薬会社のMR求人です。
この求人は就業時間が8時30分~17時15分となっています。登録販売者がMRになると、小売店では不可能な「朝から夕方までの勤務」を固定化することができるのです。
なお、場合によっては病院が診療を終えてから医師に営業をかけなければいけないケースがあるため、終業時間が遅くなることがあります。
ただ、近年では病院のセキュリティ管理が厳しくなっていることから遅い時間のMR訪問を受け付けていないケースが多いです。また、講演会などが発生すると就業が22時を過ぎることがあるものの、頻度は低いです。
そのためMR職では遅い時間に予定が入ったとしても、登録販売者としての店舗勤務ほど不規則なシフトとはなりません。
ちなみにこれが事務職になると、講演会などは存在せず確実な定時退社を実現できるようになります。
登録販売者が製薬会社へ就職する方法
ただ、登録販売者は市販薬を販売する資格です。そのため、市販薬を販売していない業態の製薬会社では、登録販売者資格そのものを活かすことができません。
製薬業界は小売業界と異なり、「登録販売者資格を持っているだけで優遇される」というわけではないのです。
そのため登録販売者が製薬会社への転職を有利にするためには、「薬の専門家としての勤務経験を製薬会社で活かせること」を具体的にアピールする必要があります。
例えば薬の接客機会が多い店舗で働いていたのであれば、顧客に薬の案内をすることに慣れています。また、上質なコミュニケーションを取って顧客との関係性を良くするスキルもアピールできます。
一方で数値目標の厳しい店舗に配属されていたのであれば、経営に関する知識や業績を良くするための論理的思考スキルがあることをアピールできます。
そのため登録販売者が製薬会社への転職を成功させるためには、資格そのものではなく登録販売者として働いた経験をアピールしましょう。
転職サイトを利用して製薬会社の求人を探す
ただ、登録販売者を募集している製薬会社の求人はほとんどありません。登録販売者は市販薬を販売する資格であるため、小売業界で働くのが基本であるためです。
登録販売者が製薬業界へ転職することは想定されていないため、登録販売者向けの製薬会社求人がないのです。そのため、登録販売者が応募できる製薬会社求人を自力で探すことは難しいです。
そこで製薬会社で働きたい登録販売者は、転職サイトを利用して求人を探しましょう。
転職サイトの担当者は、膨大な数の求人からあなたに最適な案件を紹介してくれます。そのため転職サイトを利用すると、登録販売者が応募できる製薬会社求人を見つけやすくなります。
また担当コンサルタントは、あなたと会社との間を取り持ってくれます。あなたの経歴やスキルなどを会社へアピールし、勤務条件の交渉などを行ってくれるのです。そのため、転職サイトを利用すると製薬会社への転職が成功しやすくなります。
ただ担当者の力量には個人差があります。そのため転職サイトは最低でも3社以上登録しましょう。そうすることで、製薬会社への転職が成功しやすくなります。
まとめ
一般的に、製薬業界は安定した雇用と高収入を実現しやすい業界であるといわれています。そのため、医療系資格の一つである登録販売者の資格者の中には、製薬会社への転職を希望する人もいるでしょう。
このとき登録販売者は薬や病気などの基礎知識があるため、製薬会社の営業職や事務職に就くことができます。登録販売者は製薬会社で働くこともできるのです。
ただ、登録販売者の資格保有者を募集する製薬会社の求人はほとんどありません。登録販売者は市販薬を販売する資格であるため、製薬会社で働くことが想定されていないからです。
そこで製薬会社へ転職したい登録販売者は、転職サイトを利用して求人を探しましょう。そうすることで製薬会社への転職を実現し、安定した業界で働くことが可能となります。
登録販売者が転職を行い、求人を探すにしても自分一人で行うのは現実的ではありません。そこで、ほとんどの人が転職エージェントを活用します。
転職サイトを利用すれば、「年収の交渉」「希望の勤務地」「労働時間の調節」を含めてすべて代行してくれるようになります。
しかし、転職サイトによって「地方在住者でも事前面談に対応している」「40代以上でも利用可能」など特徴に違いがあります。人気の転職エージェントの中でも、これらの特徴を理解したうえで、どの転職サイトを利用すればいいのか検討しなければいけません。
そこで当サイトでは、転職サイトごとの特徴について解説しています。転職では2~3社以上に登録して活動するのが基本になるものの、どの転職エージェントを利用すればいいのか理解したうえで以下のページから比較検討し、転職サイトへ登録するようにしましょう。