従業員が不満を溜めやすい職場だと、退職者が発生しやすくなります。そのため、離職率が高い会社を避けるのは転職活動の基本です。

このとき登録販売者の主な就職先である小売業界は、離職率が高めに推移しています。中でもドラッグストアは、特に離職率が高い業界であるという声があります。

それでは、ドラッグストア業界は本当に離職率が高い業界なのでしょうか? また登録販売者が長く働き続けるためには、どのようにして求人を選べばいいのでしょうか?

ここでは、登録販売者の離職率の現状と働きやすい職場を探す求人選びについて解説していきます。

登録販売者職の離職率が高いといわれる理由

登録販売者は市販薬を販売する資格です。そのため、登録販売者の多くは小売業に従事しています。

このとき厚生労働省のデータだと、小売業界の離職率は宿泊業・飲食サービス業に次いで高い数値となっています。このデータからも、小売業界の離職率が高いことは間違いありません。

ただ小売業界の中で離職率が高いのは、コンビニエンスストアやアパレル、家電量販店などです。これらは長時間勤務かつ薄給であり、ノルマも多いため離職者が多い業界です。実際に、これらの業界の離職率は30~40%となっています。

これに対して、ドラッグストア業界の平均離職率は20%ほどです。これは、小売以外の業界と比較しても低めの水準です。このことから、ドラッグストアの離職率はそれほど高くないといえます。

「勤続年数平均が短い=離職率が高い」ではない

それでは、なぜドラッグストア業界の離職率は高いといわれているのでしょうか? これは、勤続年数の平均や求人の多さなどで離職率を推測する手段があるためです。

離職率の公開は義務ではないため、離職率を公開していない会社は多いです。このような場合、勤続年数の平均・求人の多さで離職率を推測するのが一般的です。

例えば、辞める人が多い会社は必然的に平均勤続年数が低くなります。また離職者が多くなると、その分だけ求人を出して人員補充を行わなければなりません。このようなことから、勤続年数平均が短い会社や通年求人を出している会社などは離職率が高いといわれています。

ただドラッグストア業界の場合、この条件は当てはまりにくいです。

まず、勤続年数の平均が短くなるのは離職者が多い会社だけではありません。事業を拡大して間もない会社も勤続年数平均が低くなります。

例えば事業を拡大すると、新入社員が急増します。そのため事業を拡大している会社は、新入社員の増加によって勤続年数の平均が押し下げられることになります。

このとき、ドラッグストア業界の勤続年数が百貨店など他の小売業態よりも低かった時期があります。このことから「ドラッグストア業界は平均勤続年数が他業態よりも短いため、離職率が高い業界である」と主張する声があります。

ただ、ドラッグストアは新規出店を重ねて事業規模を拡大する業態です。そのためドラッグストア業界は新入社員の受け入れが多く、平均勤続年数が下がりやすいです。つまり「ドラッグストア業界は平均勤続年数が低いため離職率が高い」とするのは誤りなのです。

またドラッグストア業界から出ている求人は、新規出店のための人員補給を目的とした案件が多いです。したがって「ドラッグストア業界は通年求人を出しているから離職率が高い」と判断するのも誤りだといえます。

さらに言えば、店舗を新規出店している(=事業を拡大している)企業は伸びしろがある会社であるといえます。このような会社を「求人が多いから職場環境が悪いのだろう」と転職先の候補から外してしまうと、これから成長する会社への転職機会を失ってしまうことにつながります。

そのため、勤続年数平均や求人の多さだけで離職率(=働きやすさ)を判断しないように注意しましょう。

登録販売者は給料が低いのか?

また登録販売者の離職率が高いとされている理由の一つに、給料の低さがあります。これは、日本全体の平均年収が400~500万円で推移しているのに対して、小売業の平均年収は300~400万円ほどと、低めの水準であるためと考えられます。

ドラッグストア業界も同様に、日本全体の平均よりも平均年収が低めです。このようなことからドラッグストアは、「求人が多い」「勤続年数が低い」などの理由と重ねられて離職率が高いといわれがちです。

ただ、この平均年収は非正規雇用の給料も含まれます。小売業界は非正規雇用スタッフが多いため、平均年収が押し下げられやすい傾向にあるのです。

そのため正社員の登録販売者として働く場合、他の業界に比べて特別給料が低くなるケースは少ないです。むしろ実力があれば早期出世が可能であり、若いうちから高収入を実現できる業界といえます。

実際に以下は、千葉や愛知、奈良などに店舗を展開するドラッグストアの求人です。

この求人は年収例として24歳・店長職で年収500万円、28歳係長職で年収580万円、32歳・課長職で年収720万円が可能であるとなっています。もちろん、順調にこうした出世をすることはないものの、きちんと働けば年収400~500万円に届きます。登録販売者は給料が低い職種ではないのです。

そのため「登録販売者の給料は安く、これが原因で離職率が高い」という世間の声も誤りだといえます。

登録販売者が離職者の少ない求人を見つけるコツ

ただ当然ながら、離職率の高さは会社ごとに異なります。登録販売者が働く小売業界の中にも、離職率の高い企業は存在します。登録販売者であっても、離職率が異様に高い会社は避けるべきです。

このとき前述のように、勤続年数や求人の多さだけでは離職率を正確に測ることは不可能です。

一方で、企業が公開している離職率は「勤続している人に対する退職者の多さを表す数値」です。そのため「一般公表されている離職率が高い会社は、働きやすい条件が整っていない」と考えて問題ありません。

定着率が高い求人で離職者の少ない職場を見つける

ただ当然ながら、離職率の高さをアピールする会社は存在しません。そのため、退職者の多い会社が離職率を公開することはまずありません。

一方で、離職率を公開している会社は退職者が少ない可能性が高いです。公開義務がない情報をあえて一般公開するということは、その会社にとってのアピールポイントです。そのため、離職率を公開している会社は退職者が少ない可能性が高いです。

また中には、定着率を公開しているケースもあります。定着率は「規定の期間内に退職せずに勤続している人」の割合であるため、「定着率が高い=離職者が少ない」となります。

例えば以下は、神奈川(横浜)や東京などに店舗を展開するドラッグストアの求人です。

この求人は直近1年間の定着率が85%以上となっています。つまり、離職率が低い会社なのです。このような求人を選べば、離職者が発生しにくい環境へ転職することが可能となります。

育休の利用率・復帰率に着目する

また離職率や定着率などを公表していない場合、育児休暇の利用率や復帰率などで離職率を推測することができます。

女性従業員にとって、妊娠・出産は退職するきっかけとなります。ただ育児休暇を利用する人が多いというのは、その分だけ妊娠・出産による退職者が少ないことを意味します。そのため育児休暇の利用率が高い求人は、退職者が少ない可能性も高いです。

また、育児しながら働ける環境が整っていなければ、育児休暇から復帰することはできません。そのため育児休暇の利用者が多い求人は、育児中のママ登録販売者にとって働きやすい環境が整っていると推測できます。

さらに育児しながら働きやすいということは、一般の登録販売者も働きやすい環境が整っている可能性が高いです。

当然ながら、従業員が育休を取得すれば他のスタッフに業務負荷がかかります。このような環境で育児中の登録販売者だけ優遇すると、一般の登録販売者の不満が溜まります。その結果、育児中ママと一般登録販売者との関係性に大きな亀裂が生じます。

したがって育児休暇からの復帰率が高い会社は、子供のいない登録販売者も働きやすい環境が整っている可能性が高いのです。

例えば以下は、神奈川や東京などに店舗を展開するドラッグストアの求人です。

この求人は直近3年間の育休復帰率が100%となっています。このような求人を選べば、離職率が低く働きやすい環境へ転職することが可能となります。

登録販売者の主な退職理由を知って自分に合う求人を探す

ただ、「離職率が低い=あなたが働きやすい会社」ではありません。働きやすいと感じる基準は人それぞれであり、個人差が大きいためです。

例えば、マイペースに働きたい人が離職率のみに着目して「給料・待遇が良い一方で、スピード感のある職場」へ転職してしまうと、退職につながりやすいです。

このような職場では効率よく仕事をこなすことが求められ、スタッフのモチベーションも高いです。マイペースに仕事に取り組むタイプの人だと、成果を出せずに同僚や上司などからの評価が低くなりやすいです。その結果、居場所がなくなって退職せざるを得なくなります。

一方で、自分で判断して積極的に仕事を進めたい人がゆったりした職場で働くと、浮いた存在となってしまいます。そうすると、人間関係がうまくいきにくくなり退職につながりやすいです。

このようなことから登録販売者が長く働き続けるためには、離職率の低さだけで求人を選ばないことが大切です。以下に述べるような「登録販売者の主な退職理由」を把握し、あなたのニーズに合う求人を選びましょう。

レジばかり・ノルマがきついなど業務内容への不満

例えば、業務内容に不満を感じて退職する登録販売者は多いです。具体的には「苦労して薬の専門家の資格を得たのに、資格を活かした仕事に就けない」「1日中、同じ仕事に就いていて発展性がない」などが登録販売者の大きな退職理由となっています。

このとき、登録販売者資格を活かして小売業界で働く場合、レジや品出しなどの「無資格者でも行える業務」を避けることはできません。どのような職種・職場を選んでも、レジ・品出し業務は発生します。

ただ中には、人員を多く配置し、従業員一人当たりの業務負担を少なくしている求人もあります。例えば以下は、東京や愛知、大阪など全国に店舗を展開するドラッグストアの求人です。

この求人は、1店舗あたりのスタッフ数が多いため顧客とじっくり向き合うことが可能となっています。このような求人を選べば、レジや品出しなどの日常業務ではなく、やりがいのある仕事に時間を割けるようになります。

またドラッグストアの中には、売上金額や推奨品の販売店数などのノルマが発生する企業があります。

このような店舗では、ノルマを達成しなければならない重圧感から「薬の専門家としての仕事」をまっとうしづらいです。「顧客に適した薬」ではなく、「利益額が高い商品」「推奨販売の対象商品」などを売らなければならないためです。

ただ中には、ノルマを課せられないドラッグストア求人もあります。例えば以下は、東京や神奈川、千葉などに店舗を展開するドラッグストアの求人です。

この求人は顧客に対して感じよく丁寧な接客することを大切にしており、店舗での販売ノルマを設けていません。このような求人を選べば、ノルマなしで登録販売者業に集中することができます。

・ドラッグストア以外ならノルマなしで薬の専門家として活躍できる

また、薬の専門家としての知識を活かした仕事に就きたいのであれば、ドラッグストア以外の小売店を選ぶのがいいです。スーパーなどドラッグストア以外の小売店は、登録販売者などの資格者数を少なくしているためです。

中には、時間あたりの資格者数が1人になることもあります。このような店舗を選ぶと、薬の接客のすべてをあなたが担うことになります。

また、スーパーやコンビニでは推奨販売品のノルマが発生しにくいです。ドラッグストア以外の小売店は薬の売上が低く、ノルマを達成できる環境にないためです。ドラッグストア以外の小売店で働くと、ノルマなどを気にせず薬の販売に専念しやすくなるのです。

さらに、登録販売者職の中には、顧客からの健康相談を受けるコールセンター業務もあります。

コールセンターであれば小売店のように体力を使うことがないですし、薬の知識を存分に生かした仕事に就くことができます。また、販売ノルマもありません。

したがって薬の専門家として活躍したい登録販売者は、ドラッグストア以外の業態を中心に求人を探すといいでしょう。

全国転勤は登録販売者の大きな退職要因

また、引越しを伴う転勤も退職の大きな要因となります。引越を伴う転勤は心身ともに負担が大きく、場合によってはプライベートに大きな悪影響を与えることもあります。そのため、希望しない地域への転勤が決まったタイミングで退職する登録販売者は多いです。

このとき、小売業では店舗をチェーン展開している企業が多いため、全国に転勤する可能性があるのが基本です。そのため「登録販売者は転勤なしの働き方を選ぶことは不可能である」と思われがちです。

ただ実際には、登録販売者であっても転勤なしで働くことは可能です。例えば以下は、東京や神奈川、埼玉などに店舗を展開するドラッグストアの求人です。

この求人は転居を伴う転勤がありません。このような求人を選べば、ドラッグストアであっても転勤によって引越することなく働き続けることができます。

またドラッグストア以外の小売店だと、登録販売者に転勤が発生しないのが基本です。スーパーなどは資格者の数が少なく、転勤させられるだけの人員的余裕がないためです。小売店で働く登録販売者であっても、求人を選べば引越を伴う転勤なしで働くことはできるのです。

他にも、コールセンターや調剤事務などの内勤も登録販売者に転勤が発生しない職種です。

一般的に、調剤事務は専用の資格が必要であると思われがちですが、実際には無資格で就ける職種です。実際に無資格で働いている調剤事務員はかなり多いです。登録販売者は調剤事務に就くこともできるのです。

例えば以下は、兵庫にある調剤薬局の求人です。

この求人は調剤事務スタッフとして登録販売者を募集しており、転勤なしで働くことが可能です。登録販売者は資格を活かして転勤のない調剤事務員になることもできるのです。

そのため転勤による引越しを避けたい人は、転勤なしのドラッグストア求人やドラッグストア以外の小売店求人、調剤薬局などを選ぶといいです。

転職サイトを利用して求人を探す

ただ、あなたが働きやすい求人を自力で探すことは難しいです。求人案内を見るだけでは、会社の特徴や内情などを知ることはできないためです。

そこで、働きやすく勤続年数の長い職場へ転職したい登録販売者は、転職サイトを利用して求人を探しましょう。

転職サイトの担当者は、会社の特徴・内情を踏まえた上であなたに合った求人を紹介してくれます。そのため転職サイトを利用すると、あなたが働きやすい求人を見つけやすくなるのです。

ただ、担当者の力量には個人差があります。そのため転職サイトは、最低でも3社以上登録しましょう。そうすることで、働きやすい職場へ転職し長期間働き続けることが可能となります。

まとめ

登録販売者の主な就職先であるドラッグストア業界は、求人の多さなどから離職率が高めであると推測されがちです。ただ実際には、ドラッグストア業界の離職率は小売業界の中では低めで推移しています。また、他業種と比べても高いわけではありません。

ただ、中には離職率の高い求人もあります。当然ながら、退職者の割合が極端に多い職場は劣悪な労働環境である可能性が高いです。そのため、離職率が高い求人を避けるべきなのは登録販売者であっても変わりません。

しかし離職率のみに着目して求人を選ぶと、あなたに合わない会社へ転職してしまいやすいです。その結果、一般的に働きやすいとされる会社(=離職率の低い会社)であっても退職につながってしまいます。

そこで働きやすい環境の整っている職場に就職したい登録販売者は、転職サイトを利用して求人を探しましょう。そうすることで、あなたに合った求人へ転職して長く働き続けることができます。


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