登録販売者は市販薬を取り扱うことができるため、転職や再就職などの際に有利となる資格です。特に小売業界では、登録販売者が重宝される傾向にあります。

ただ登録販売者は、「一度取得したら一生安泰な資格」ではありません。規定された期間の実務経験がないと、薬を取り扱えない状態となるためです。つまり、登録販売者として稼働できなくなるのです。

企業によっては、薬を取り扱えない登録販売者を採用していないケースがあります。そのためブランクのある登録販売者は自分の資格の状態を確認し、求人選びに注意する必要があります。

そこでここでは、ブランクのある登録販売者が求人を選ぶコツについて解説していきます。

ブランク期間によって職場の選び方が大きく変わる

薬は年々新しいものが生まれています。これは、OTC医薬品(市販薬)も同様です。薬の専門家としての質を保つためには、知識のアップデートが必須となります。

このとき薬剤師であれば、ブランクがあっても薬を取り扱える資格がなくなることはありません。これに対して登録販売者は、一定期間のブランク発生によって薬を販売できなくなります。

このような制度は2015年度から開始されました。そのため、気づいたら資格を失効していたというケースがあるのです。

月80時間以上、2年間の実務経験が登録販売者には必要

登録販売者については年齢を問わず、実務経験がなくても登録販売者試験を受けることができます。

ただ登録販売者試験に受かっただけでは、「研修中の登録販売者」となります。研修中には薬を販売できる資格がありません。薬を販売できる正規の登録販売者になるためには、規定の業務経験を積む必要があります。

このとき、研修中となるのは登録販売者試験に受かったばかりの人だけではありません。ブランクがある人も研修中の登録販売者へ格下げされることがあります。

薬を販売できる管理者・管理代行者となるためには、「過去5年以内の薬を扱っている店舗での稼働時間が、月80時間・24ヶ月以上」である必要があります。

実際に、神奈川県のホームページに記載されている登録販売者の管理者要件です。

ここには登録販売者が店舗管理者などになるためには、過去5年間のうち、「薬剤師や登録販売者などの指導下での実務」や「登録販売者として業務についた期間」が通算2年以上である必要があると記載されています。

つまり過去5年以内の実務・業務経験が2年以上なければ、店舗管理者にはなれません。そのためブランクの期間によっては、正規の登録販売者として稼働できないことがあります。

例えば専業主婦(主夫)になったり、登録販売者以外の仕事に就いたりした状態で3年と1日以上が経過すると、研修中の登録販売者となります。

また登録販売者として業務に就いていても、稼働時間が月80時間未満となると実務経験とは見なされなくなります。そのためブランク期間が短くても、アルバイト・パートなどで働いていた場合は管理者要件を満たせていないことがあります。

例えば1日4時間の勤務を週4日で続けていると、月の業務時間は「4時間×4日×4週=64時間」程度となります。このような短時間勤務のアルバイト・パートをした期間は、業務経験とは見なされません。

このときは1日4時間以上の勤務を週5日続けると、「4(時間)×5(日)×4(週)=80(時間)」管理者要件を満たすことができます。

ただこのようなギリギリのシフトを組まれていると、遅刻や欠席、休憩などによって管理者要件を満たせなくなって失効してしまいます。そのため「業務経験が足りているはず」と思っていても、実際には管理者要件を満たせていないことがあるのです。

管理者要件を満たしていなければ、応募できない求人もあります。そのため登録販売者としての実務経験にブランクがある人は、自分が管理者要件を満たしているかを把握する必要があります。

このとき保健所は、個別の登録販売者のデータを管理していません。そのため保健所に問い合わせても、自分が管理者要件を満たすかどうかは確認できないので注意が必要です。

過去5年間の登録販売者としての業務時間は、勤めていた会社から記録を取り寄せることで確認することができます。

ただ手続きなどに時間がかかるケースがあるため、タイミングによっては就職活動に支障をきたす場合があります。そのためアルバイト期間などによって実務・業務経験が足りていない可能性がある人は、失効しないよう早めに調査を開始しましょう。

病院や調剤薬局での勤務は実務経験となるのか?

登録販売者は薬の知識を活かす仕事であるため、医療関係者として扱われます。このことからより高度な医療を扱っている「病院や調剤薬局などでの業務は、登録販売者としての実務経験になる」と考えている人が多いです。

ただ実際には、病院などでの勤務は管理者要件を満たすための実務経験とは見なされません。登録販売者の実務経験は、OTC医薬品を扱っている店舗販売業や配置販売業などでの業務経験である必要があります。

例えばOTC医薬品を扱っていない調剤薬局で勤務した期間が過去5年以内に2年間以上あっても、管理者要件を満たすことはできません。

またOTC医薬品を扱っている調剤薬局であっても、調剤事務などの「薬の販売に関わらない仕事」に従事していた場合は、登録販売者としての実務経験と認められません。

そのため病院や調剤薬局(OTC医薬品なし)などで働いていた人は、その期間が登録販売者としてのブランク扱いとなります。したがって業務に就いていた期間によっては、研修中の登録販売者となっていることがあるので注意が必要です。

有給の取得期間は実務経験と見なされるのか?

退職時や体調不良などによる欠勤時には、有給を使うことがあるでしょう。有給を利用した日は、出勤したと見なされて給与が支払われます。そのため中には、有給を取得した日は「管理者要件における実務経験と見なされる」と思っている人が多いです。

ただ実際には、実際に業務にあたっている時間のみが実務経験の扱いとなります。

例えば退職などの際にまとめて有給を消化し、実際に働いた日が5日となった場合、ひと月あたりの実務時間が「5日×8時間=40時間」となります。

そうなると実務時間が月80時間未満となるため、管理者要件における実務経験とは認められません。そのため店舗販売業を営む企業に2年在籍していても、有給の取り方によっては実務経験が足りなくなるケースがあるということを覚えておきましょう。

実務経験が足りていても月80時間未満だと失効するリスクがある

研修中の登録販売者は、そのことが明確にわかるように、名札に「研修中」などの記載が必須となります。また場合によっては、正規の登録販売者と制服が異なることもあります。

このときブランクが3年を超えていたり実務経験なしであったりする登録販売者は、「自分は研修中の登録販売者である」と自覚しやすいです。

一方でブランクが3年未満である人は、「すぐに働き始めれば研修中になることはない」と思い込んでいるケースがほとんどです。ただこのような人も、研修中になるリスクがあることを認識しておく必要があります。

例えば病気や介護、育児などの事情によって休む日が増えたりシフトを減らしたりすると、ひと月あたりの業務時間が80時間未満となることがあります。

特に子育て中のママが保育園に子供を預けて復職した場合、最初の1年目は毎月の業務時間がかなり短くなります。集団生活を開始したばかりの子供は、病気にかかりやすいためです。

特に兄弟がいると、交互に高熱を出しやすいです。そうすると、月の半分も出勤できないことが頻繁に起こりえます。

実際に、ブランクあり登録販売者である私が2人の子供を保育園に預けて登録販売者として働き始めた際、最初の半年は病気で保育園に行けない日々が続きました。中には、ひと月に3日間しか働けない日もありました。

このようにして業務時間が月80時間を切ると、管理者要件においての業務経験とは見なされません。ブランク期間が2~3年である場合、トラブルによって管理者要件を満たせなくなる可能性があるのです。

管理者・管理代行者として勤務している人が急に研修中に戻ると、店舗運営に大きな悪影響を及ぼします。代わりの登録販売者がいなければ、薬を販売できない時間帯が生じてしまうためです。

このような状況になると、かなり居づらくなります。環境によっては、転職を促されることも考えられます。

そのため現在は管理者要件を満たしている人であっても、「ブランク期間によっては研修中になるリスクがある」ことを知っておく必要があります。

なお東京や名古屋、札幌などの保健所に確認したところ、「管理代行者として勤務中に管理者要件を満たしていない状態(研修中)になっても、よほど悪質ではない限り指導が入ることはないだろう」との見解でした。

ただ不正などの悪質行為が続くと、「少しでも要件を満たさない人には指導・通告が入る」ということになりかねません。したがって、ブランク期間が長めの人や子育て中のママ登録販売者などは、「研修中に戻っても運営に支障のない企業」で働くことをおすすめします。

ブランクありの登録販売者が再就職先を選ぶコツ

ブランクがあったとしても、そのブランク期間が短く管理者要件を満たしている登録販売者は、ブランク不問の求人を選ぶといいです。

例えば以下は、東京や大阪、愛知などに店舗を構えるドラッグストアの求人です。

ここには登録販売者の資格を持っていれば、ブランク不問であると記載されています。そのためこのような求人を選べば、空白期間があっても採用されやすくなります。

ブランク期間が長い人は研修中可の求人を選ぶ

一方でブランク期間が長い登録販売者は、求人選びに慎重になる必要があります。

通常、求人に記載されている「登録販売者募集」は、「管理者要件を満たしている登録販売者を募集している」という意味になります。そのため「登録販売者を募集している」という表記しかない求人は、研修中の登録販売者は応募資格を満たさないことになります。

例えば以下は、東京や神奈川、埼玉などに店舗を展開しているドラッグストアの求人です。

この求人の応募資格欄には、「登録販売者資格を持っている人」とあります。そのためこのような企業では、研修中の登録販売者を採用していない可能性が非常に高いです。

一方で「研修中の登録販売者可」との記載がある求人は、研修中であったり勤務中に研修中になったりしても問題がないといえます。

例えば以下は、全国に店舗を展開しているドラッグストアの求人です。

ここには、実務経験や業務経験などのない登録販売者も歓迎していると記載されています。つまり、研修中の登録販売者が応募可能であるということです。

そのためブランクが長く、研修中であったり研修中になるリスクがあったりする人はこのような記載のある求人を選びましょう。

管理者要件を満たすタイミングを把握しておく必要がある

通常、研修中の登録販売者は管理要件を満たす登録販売者よりも収入が低くなります。

例えば以下は、全国に店舗を展開するドラッグストアの求人です。

ここには、給与と別に登録販売者手当が支給されることが記載されています。

具体的には、正規の登録販売者には月1万5000円、研修中には5000円が手当として支給されます。このことから管理要件を満たす場合と研修中では、年間12万円の年収差が生まれることがわかります。

また基本的に、研修中の登録販売者であるということは「実務・業務経験がない、または少ない」とことを意味します。そのため資格手当だけではなく、入社時の給与も低くなりがちです。研修中の登録販売者は、正規の登録販売者に比べてかなり収入が低くなりやすいのです。

したがって研修中の登録販売者は、管理要件を満たした段階ですぐに管理代行者となるための申請を行うべきです。

このとき、管理者になるための手続きは個人ではなく会社が行います。具体的には勤務先企業が勤務状況報告書を発行し、所定の書類を保健所へ提出することになります。

ただ「管理代行ができる登録販売者」の数が足りている店舗では、研修中の登録販売者を管理代行者とする必要性が低いです。そのためこのような店舗に勤めていると、申請手続きを忘れられてしまうことがあります。

管理要件を満たしても、所定の手続きを行わなければ管理者・管理代行者にはなれません。そうすると研修中のままとなり、収入も上がりません。

このようなことを防ぐためにも、研修中の登録販売者は自分の勤務状況を記録しておくことをおすすめします。そうすることで手続き漏れを防ぐことができ、しかるべき年収・待遇を手にすることができます。

ブランク期間が長い場合はドラッグストア以外の業態を選ばない

通常、ドラッグストアには複数人の登録販売者や薬剤師などが在籍しています。そのためドラッグストアでは、少数の登録販売者が研修中であっても店舗運営には支障をきたしません。

一方でドラッグストア以外の薬の販売店は、少数の登録販売者でシフトを回しています。場合によっては、時間あたりの登録販売者の勤務が一人であることもあります。

このようなシフトの店舗で、残りの唯一の登録販売者が研修中になると、薬を販売できない時間が生じます。つまり、店舗運営に大きな支障をきたすのです。

実際に私が登録販売者として勤務していたディスカウントストアでは、ほとんどの時間で一人体制となっていました。そのため退職などによって欠員が出ると、次の登録販売者の採用が決まるまで他の人が残業して穴を埋めたり、薬の販売を休止したりしていました。

このような環境下で正規の登録販売者が研修中に戻ると、店舗運営に大きな悪影響を及ぼします。そのためブランク期間が長く、研修中に戻るリスクがある人はドラッグストア以外の薬の販売店を選ばないことが大切です。

また現在研修中の登録販売者は、ドラッグストア以外の薬の販売店では採用されにくいです。

仮に採用されたとしても、薬に関する業務につくことはできないと考えるのが懸命です。ドラッグストア以外の業態では薬の売上よりも他の商品の売上の方が高いためです。

例えば電器屋では、薬の売上は全体の数%であり、主力商品は電化製品です。そのためこのような店舗ではコストの関係上、研修中の登録販売者に実務経験を積ませることはできません。そのため現在研修中の登録販売者は、電器屋などではなくドラッグストアで業務経験を積むことを目指しましょう。

知識に不安がある人は研修制度のある求人を選ぶ

薬を含め、ドラッグストアで取り扱われている商品は入れ替わりが激しいです。そのためブランクが数年間に及ぶと、知らない商品が多数生じます。

商品を知らなければ、顧客に案内ができません。また商品の訴求ポイントがわからなければうまく売り出すことも不可能です。

そのためブランクありの人が復職する際には、知識に不安を覚える人もいるでしょう。このような人は、研修制度の整った企業を選ぶことをおすすめします。

例えば、以下は全国に店舗を展開するドラッグストアの求人です。

ここには、外部研修や化粧品メーカーの研修、通信講座などを受講できることが記載されています。また薬の勉強会への参加によって、薬の知識を深めることもできます。

このような企業で働くと、ブランクによる知識不足を補いながら働くことができます。そのためブランクによる再就職で知識に不安がある人は、このような求人を選びましょう。

ブランクありの登録販売者が再就職するコツ

ブランクのある登録販売者は、そうでない人よりも求人をしっかり選ぶ必要があります。ただ適切な求人を選んでも、面接で落とされてしまっては意味がありません。

特にブランク期間が長い人は、面接で不利になりやすいです。基本的に社会人としての空白期間は、採用する側にとってはリスクと捉えられます。ブランクがない人のほうが即戦力になるためです。

そのため空白期間がある人は、うまく対応できるように事前準備をしてから面接に挑む必要があります。

ブランク理由は前向きである必要がある

ブランク不問としている企業であっても、ブランクを生じた理由によっては採用されにくくなります。

例えば面接時にブランクの理由を「働くのが嫌だったためである」と伝えたら、採用されないことは言うまでもありません。

またここまで直接的にいわなくても、具体的なブランク理由がなければ「この人は働く意欲が低い」と思われます。その結果、採用は見送られます。

特に登録販売者の場合、ブランク期間の発生によって薬を販売できなくなります。

このとき妊娠出産などによるブランクで研修中となった場合は、「やむを得ない事情で薬の販売資格を手放さざるを得なかった」と判断されます。

一方で正当な理由なしに研修中になってしまうと、「資格を無駄にした」と判断されてしまいます。つまり、先のことを考えられない人材であると見なされるのです。

そのためブランクによって研修中になっている登録販売者は、ブランク理由や働く意欲があることなどを十分に伝えられるようにしておく必要があるのです。

例えば病気によって空白期間ができた人は、病気が治っていることや治療中に得た前向きな経験などを述べるようにします。

治療中に資格などの勉強をしたのであればその事実を伝えてもいいですし、「病気を克服することによって精神的に強くなった」などと説明すれば、ストレス耐性の強さなどをアピールすることができます。

また、他の業種に就いていた場合は、そこで得た経験の活かし方や面接先への転職意欲などを伝える必要があります。例えば営業職から販売業へ転職する場合は、営業職で培った商品訴求スキルをアピールしたり、店舗経営やマネジメントなどに関わりたいという意欲を伝えたりします。

いずれにせよ、ブランクがある登録販売者が復職する場合には、嘘ではない範囲で説得力のあるブランク・志望理由が必要です。面接前の下準備として、自分なりの答えを用意しておきましょう。

転職サイトを利用して、最適な求人を探す

ブランクのない登録販売者であれば、「登録販売者募集」という求人のすべてに応募することができます。一方でブランクのある登録販売者は、自分の資格の状態に合った求人を選ぶ必要があります。

ただ、数ある求人の中から自分に適したものを選ぶのはかなり大変です。詳細な条件や企業の特色などを一つ一つ見比べて候補を出そうとすると、多大な時間と労力がかかります。

そのためブランクありの登録販売者が再就職に臨む際には、転職サイトを利用して求人を探すことをおすすめします。

転職サイトを利用すると、ブランクありでも問題なく働ける求人の候補を提示してくれます。また希望の働き方や収入なども実現しやすくなります。膨大な数の求人から、自分に適した企業を見つけ出してくれるのです。

このとき転職エージェントは、担当となるコンサルタントによって向き不向きがあります。そのため再就職の際には、複数の転職サイトに登録しましょう。そうすることで、より自分に合った求人先企業を見つけやすくなります。

まとめ

正規の登録販売者でいるためには、一定の実務経験が必要です。そのためブランク期間によっては、失効して研修中となっていることがあります。

研修中の登録販売者は、薬を販売することができません。そのため企業によっては、研修中の登録販売者を採用していないケースがあります。したがってブランクのある登録販売者は、まず「自分が管理者要件を満たしているかどうか」を把握する必要があります。

またブランクのある登録販売者は、自身の資格の状態に応じた求人探しをする必要があります。ただ、自力で自分に合った企業を探し出すためには、膨大な数の求人を比較していく必要があります。

そのためブランクのある登録販売者が再就職する際には、転職サイトを利用しましょう。そうすることで自分の条件に合ったブランク可の求人を容易に見つけ出すことができ、希望の働き方や収入などを実現しやすくなります。


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