転職の際には、さまざまな手続きを取ることになります。例えば、退職時には離職票など受け取るための手続きが必要です。また新しく入社する会社には、同様にさまざまな書類を提出しなければなりません。

さらに、登録販売者は都道府県が発行する公的資格です。そのため登録販売者として働いていた場合、転職に伴う手続きや書類などが通常よりも多くなります。

それでは登録販売者が転職する際には、どのような手続きを行わなければならないのでしょうか? また登録販売者が再就職するためには、どのような書類が必要なのでしょうか?

ここでは、登録販売者が転職する際に必要な書類や手続きなどについて解説していきます。

登録販売者が転職する際に必要な手続き

ドラッグストアなどの薬の販売店で働いている登録販売者は、就業先や資格の状態などの情報が地域の保健所に登録されています。

このような登録情報について、変更が生じたらすぐに変更届を出さなければなりません。そのため登録販売者が退職したり就職したりした際には、就業先などの変更内容を速やかに保健所へ申告する必要があります。

ただ、この手続をする必要性があるのは登録販売者を雇用している事業者です。登録販売者本人は、勤務先の変更・退職を保健所へ届け出する必要はありません。

しかし登録販売者資格を活かして働いていた人が退職する場合、忘れてはいけない手続きがあります。それは「登録販売者として勤務していたことを証明する書類」を発行してもらう手続きです。

業務・実務経験証明書の発行がないと研修中となる

登録販売者が薬を販売できるようになるためには、過去5年以内に2年以上の実務・業務経験が必要です。この管理者要件を満たせなければ研修中の扱いとなり、市販薬販売の時間帯責任者となることができません。つまり、一人で薬を販売できなくなるのです。

ただ当然ながら、この条件を満たしていても実際に勤務していたことが公的に証明されなければ「管理者要件を満たしている」とは見なされません。

そのため新しい就業先で正規の登録販売者として働くためには、過去に勤務していた会社に「薬の販売業務に就いていたことを証明する書類(=業務・実務経験証明書/業務・実務従事証明書)」を発行してもらう必要があるのです。

具体的には、以下のような書類を入手しなければいけません。

このとき管理者要件における実務経験は、異なる会社での勤務を合算できます。例えば過去5年以内にドラッグストアAで1年、ドラッグストアBで1年働いている登録販売者は、正規の登録販売者として働くことができます。

そのため資格の状態(正規・研修中)に関わらず、登録販売者が退職する際には、実務経験証明書の発行依頼を忘れないようにしましょう。

なお、実務経験証明書の発行には一定の期間が必要です。特に本部から離れた店舗で勤務している場合、2週間~1ヶ月かかることがあります。

実際に私は北海道で登録販売者として勤務していますが、本部と店舗が車で6時間以上かかるほど離れた地域にあります。そのため、勤務証明書などの書類を受け取るまでに2週間以上必要です。また知り合いの登録販売者は「本部が東京の会社」に勤めており、証明書の発行に約1ヶ月を要すると言っていました。

このように、住んでいる地域によっては証明書の発行に時間がかかることがあります。証明書の受け取りが遅くなると、その分だけ正規の登録販売者として働けない期間が長くなります。そのため退職の予定がある登録販売者は、なるべく早く実務経験証明書の発行依頼を済ませることをおすすめします。

従事登録の内容に変更がある場合は届け出が必要

ただ転職活動中の登録販売者の中には、届け出内容が変わっている人もいるでしょう。例えば、結婚によって姓が変わった場合や本籍地を変更した場合などです。このようなとき、内容の変更届従事登録証の書き換え申請が必要となります。

以下は、実際の書類の写真です。

このように、書類に変更内容と変更の理由を記入して保健所へ提出します。書類は保健所だけでなく、各自治体のホームページからも入手することができます。

本来、登録販売者名簿の登録事項変更届は、変更が生じてから30日以内に申請しなければなりません。ただ、多忙などの理由によってこの期間内に変更届を申請していない人は多いです。

実際に私も、結婚後にしばらく店舗勤務していなかったため従事登録の氏名変更を忘れていました。このような場合、遅延理由書も合わせて提出することになります。以下は、実際の遅延理由書の写真です。

このように、遅延理由書には届け出が遅れた理由を記載します。遅延理由は「多忙のため」で問題ありません。

このとき、登録事項の変更が遅延しても罰則などはありません。ただ従事登録証の内容と実際の内容(氏名など)が異なると、会社が店舗販売業の変更届を申請できません。

つまり、転職後の会社で登録販売者として登録できない(=登録販売者として働けない)のです。そのため販売従事登録証の内容に変更があるのであれば、なるべく早めに変更手続きを行うことが大切です。

さらに登録事項の変更届には、戸籍謄本や戸籍抄本などの戸籍がわかる書類(戸籍記載事項証明書)が必要です。以下は、実際の戸籍謄本の写真です。

このように戸籍についての記載がある書類がなければ、変更届が提出できません。

ただ、戸籍抄本などは本籍地の役場でしか発行できません。そのため本籍から離れた地域に住んでいる場合、現地に赴いたり郵送で送ってもらったりする必要があるため書類の発行に時間がかかることがあります。

また中には、自分の本籍地を勘違いしているケースもあります。そのため現住所のある自治体に本籍があると思い込んで申請に行った結果、本籍が異なる場所にあり戸籍謄本の取得にかなりの時間を要することになります。

このことからも従事登録内容の変更手続きは、早めに取り掛かることが大切です。

なお、変更届が受理されてから新しい販売従事登録証が発行されるまでには約1ヶ月かかります。ただ手元に新しい従事登録証が届く前でも、新しい会社で登録販売者として勤務することができます。

この場合、新しく入社した会社には販売従事登録番号と販売従事登録の年月日、変更の手続きを申請した日などを伝えておきます。このとき、保健所のスタッフにあらかじめ相談しておくと入れ違いが起こらずに済みます。

登録販売者が再就職時に必要となる書類

実務経験証明書は、登録販売者本人ではなく会社が保健所へ提出する書類です。そのため前に働いていた企業から受け取った実務経験証明書は、新しく働き始める会社に提出します。そうすると会社が保健所に実務経験証明書を提出し、あなたが正規の登録販売者となります。

また、販売従事登録証は登録販売者の免許証に相当するものです。そのため、車の免許証を持たずに車を運転すると違反になるのと同様に、販売従事登録証がなければ登録販売者として働くことはできません。

そのため、以下のことに注意しましょう。

転職・再就職時には従事登録証の原本が必要

登録販売者が資格者として勤務するためには、事業者が該当する登録販売者を雇用していることを保健所に届け出する必要があります。このとき必要なのが、資格者が保持している販売従事登録証です。以下は、実際の従事登録証の写真です。

基本的に、店舗販売業の変更届では原本が必要です。そのため登録販売者が転職する際には、就業先から従事登録証の提出を求められます。

このとき従事登録証を所持していない場合、申請ができません。当然ながら、申請できなければ登録販売者として勤務することはできません。再就職後に登録販売者として働くためには、従事登録証の原本が必要なのです。

ただ中には、従事登録証を紛失した人もいるでしょう。このような場合は、再発行(再交付)手続きを行う必要があります。新しい従事登録証が発行されるまでには1ヶ月程度の期間を要するため、紛失に気づいたら早急に保健所へ届け出ましょう。

なお再交付手続き後に元の従事登録証が見つかった場合、古い方の従事登録証を保健所へ返納する必要があるので注意が必要です。

未経験の登録販売者が用意するべき書類

一方で薬の販売に関わったことのない未経験の登録販売者(登録販売者試験の合格者)がドラッグストアなどに転職する場合、就業開始後すぐに従事登録を済ませられる準備をする必要があります。

実務未経験の登録販売者試験合格者は、従事登録を済ませることができなければ、登録販売者として働き始めることができません。研修中の登録販売者ですらなく、一般スタッフの扱いとなるのです。

ただ従事登録するためには、薬の販売店に勤務する必要があります。そのため未経験の登録販売者(登録販売者試験の合格者)は、就業先が決まり次第すぐに資格者(研修中の登録販売者)として働けるように、従事登録に必要な書類を準備しておくことが大切です。

従事登録に必要なのは、以下の書類です。

  • 登録販売者試験の合格通知・合格証
  • 戸籍謄本や戸籍抄本など(発行から6ヶ月以内)
  • 医師による診断書(発行から3ヶ月以内)
  • 雇用証明書など
  • 販売従事登録申請書
  • 登録手数料

これらに加えて、従事登録の際には販売従事登録申請書と登録手数料が必要となります。

販売従事登録申請書は保健所にあるため、あらかじめ用意する必要はありません。また登録手数料は自治体によって異なりますが、約7,000~1万円です。これらの書類・お金を持って保健所で手続きをすれば、従事登録を済ませることができます。

また診断書は就職が決まってから近隣の内科などにかかればいいですし、雇用証明書は就職してからではないと手に入れられません。そのため従事登録に必要な書類の多くは、就職後に用意しても十分間に合います。

ただ従事登録に必要な書類のうち、注意が必要なものが一つあります。それは戸籍謄本(戸籍抄本)などです。

前述したように、戸籍謄本などは本籍地がある自治体でしか発行できません。そのため未経験の登録販売者は、転職前に自分の本籍を確かめておくことをおすすめします。

なお、中には本籍が記載されている住民票でも従事登録可能な自治体もあります。そのため登録販売者試験の合格者は、住んでいる地域のホームページなどで従事登録に必要な書類をあらかじめ調べておくようにしましょう。

精神科にかかっている人は別途診断書が必要

前述のように、未経験の登録販売者が従事登録を行うためには医師の診断書が必要です。これは、麻薬などを使用していないことや精神障害がないことなどを証明するためです。そのため、ほとんどの人は内科などで発行してもらうことができます。

ただ中には、病気などによって精神科にかかっている人もいるでしょう。このような場合は、精神科の専門医による診断書も必要となります。

このとき中には、「会社に精神科にかかっていることがバレたくないから、保健所へ精神科の診断書を提出しない」という人がいます。ただ保健所へ精神科の診断書を提出しても、会社に伝わることはありません。

また保健所へ虚偽の申請をしたことが判明すると、登録販売者資格が取り消される可能性があります。そのため精神科にかかっている人は、かかりつけ医に相談の上、診断書を作成してもらうように依頼しましょう。

まとめ

登録販売者は資格職であるため、転職時にはさまざまな手続き・書類が必要となります。しかも、登録販売者に特有の書類があります。

例えば、転職前の会社には業務・実務経験証明書を発行してもらう必要があります。これがなければ「管理者要件を満たしている」と見なされないため、転職後に正規の登録販売者として働くことができません。

また、登録販売者として働き始めるためには従事登録証の原本が必要です。そのため従事登録証を紛失している人は、再交付手続きをしなければ登録販売者として勤務できません。

ただ、これらの手続きには1ヶ月程度の時間を要することがあります。そのため退職・再就職する予定があるのであれば、なるべく早く転職のための手続きを済ませましょう。そうすることで、再就職後すぐに登録販売者として働き始めることができます。


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