登録販売者資格を取得するためには、時間・費用を費やして勉強し、試験に受かる必要があります。そのため、取得した登録販売者資格が喪失することは避けたいことでしょう。
ただ、登録販売者は従事登録する(=薬店で働く)ことによって得られる資格です。そのため、現役の登録販売者の中には「薬店を辞めたら資格がなくなるかもしれない」と考え、退職に踏み切れない人もいます。
実際、登録販売者は資格職であるため、退職時には特別な手続きが必要です。これを忘れると、次の職場で正規の登録販売者として勤務することができなくなります。
では、登録販売者の資格は職場を辞めたらどうなるのでしょうか? また、登録販売者が退職する際にするべき手続きとは、どのようなものなのでしょうか?
ここでは、登録販売者が薬店を退職する際の手続きなどについて解説していきます。
もくじ
登録販売者の資格は辞めたらどうなるのか?
運転免許や教員免許などには有効期限が設けられています。そのため、これらの免許は更新手続きを行わないと失効してしまいます。
一方で、薬剤師などの永久性の免許もあります。このような免許・資格は、一度取得すれば免許の更新手続きを行わなくても失効することはありません。
このとき、登録販売者は薬の販売業務に就くことによって得られる資格です。そのため「薬店に勤め続けていれば資格が失効しないこと」は、ほとんどの登録販売者が知っています。
一方で「登録販売者の資格は、薬の販売業を辞めたら更新手続きをしなければならない」「離職中は更新手続きをしないと登録販売者資格が失効する」と思っている人はかなり多いです。
ただ、実際には仕事を辞めることによって登録販売者資格が失効することはありません。離職中に更新手続きをする必要はないですし、退職後のブランク期間が長くなっても再び登録販売者として働き始めることができます。
しかし、登録販売者資格そのものは失効しないものの、ブランクによって管理者要件を満たせなくなると「薬販売の時間帯責任者になれる資格」を喪失します。
具体的にいうと、ブランク期間が3年を超えると登録販売者資格が「研修中」へ格下げとなり、自分一人で薬を販売することができなくなるので注意が必要です。
外部研修を受けなくても登録販売者資格は失効しない
現役の登録販売者は、年に2回外部研修を受ける必要があります。そのため中には、「外部研修を受けなければ資格が失効する」と思って離職中にも参加している登録販売者は多いです。
ただ実際には、離職中の登録販売者は外部研修を受ける義務がありません。これは、外部研修の受講が登録販売者個人の義務ではないためです。
具体的にいうと、登録販売者を雇用している薬店には「雇用している登録販売者に外部研修を受けさせること」が義務付けられています。
そのため、離職中の登録販売者が自分で研修を探して参加する必要性はありません。また、研修を受けないことによって登録販売者資格が失効することもありません。
なお、離職中の登録販売者が外部研修を受けられないわけではありません。復職にあたって知識に不安を感じるのであれば、研修を受ける価値はあります。
ただ、ドラッグストアなどに勤めている場合、外部研修は会社から案内されて費用もかからないケースがほとんどです。一方で、自分で外部研修を受ける際には自力で研修を探して申し込みする必要があります。また、費用や交通費なども自己負担です。
そのため、登録販売者としての知識に不安がないのであれば、離職中に無理して外部研修を受ける必要はありません。復職してから外部研修を受けることをおすすめします。
登録販売者が行わなければならない退職手続き
これまでに、登録販売者資格は退職しても失効しないことについて解説してきました。では、実際に退職するとなったときに必要な手続きには、どのようなものがあるのでしょうか。
登録販売者は「薬の販売業務に就いていること」が保健所に記録されています。そのため、登録販売者が退職する際には保健所へ変更の届け出が必要です。
ただ、届け出の義務が課せられているのは登録販売者を雇用している店舗販売業者です。そのため、退職する登録販売者が保健所で行う手続きはありません。
一方で登録販売者が勤めていた会社では、退職手続き以外にも会社で行うべきことがあります。これを忘れると、再就職時に登録販売者として働けなかったり、管理者要件を満たしていても研修中の登録販売者として格下げになったりするため注意が必要です。
具体的には以下のようなことを実施しましょう。
販売従事登録証の返却を依頼する
登録販売者が薬の取扱店で働くためには、雇用(就職先の会社)が保健所で店舗販売業の変更届を出す必要があります。
この変更届を出すには、あなた(新しく働く登録販売者)の従事登録証(原本)が必要です。そのため登録販売者が薬の取扱店に入社した際には、従事登録証の原本を会社に預けることになります。
多くの場合、会社へ預けた従事登録証は、店舗販売業の変更届が済んだら登録販売者へ返却されます。従事登録証を会社が保持しなければいけない義務がないためです。
ただ中には、退職まで従事登録証を預かろうとしたり従事登録証の返却を忘れたりする店舗もあります。
実際に私が以前働いていたドラッグストアでは、退職時まで従事登録証を返却してもらえませんでした。当時は上司と私に正しい知識がなく、「従事登録証は店舗で保管するものである」と思い込んでいたためです。
このとき私は従事登録証を店舗で保管していることを把握していたため、退職時に従事登録証を返却してもらいました。
ただ場合によっては、登録販売者本人・上司ともに「店舗で従事登録証を保管している」という事実を忘れているケースがあります。その結果、再就職時に手元に従事登録証がない状況に陥ります。
従事登録証がないと、再就職先の会社が店舗販売業の変更届を出せません。つまり、登録販売者として働き始めることができないのです。
そのため、現在手元に従事登録証がない場合、店舗で保管していないかを確認しましょう。また店舗で保管しているようであれば、「店舗が従事登録証を管理する義務はない」ことを伝え、すぐに返却してもらいましょう。
業務・実務従事証明書(実務経験証明書)をもらう
正規の登録販売者として働くためには、過去5年以内に2年以上の業務・実務経験がある必要があります。この管理者要件を満たせなければ研修中の登録販売者となります。
ただ、業務・実務経験が足りていたとしても、それを証明できる書類がなければ転職後に研修中の登録販売者へ格下げされてしまいます。これは、保健所が店舗販売業(それぞれの会社)ごとに資格者を管理しており、個人の勤務状況までは把握していないためです。
そのため転職によって異なる店舗で働き始めた場合、「前の企業で業務・実務経験を積んだ証明書(=業務・実務従事証明書)」を提出しなければ研修中の登録販売者扱いとなるのです。
以下は、実際の業務・実務従事証明書(実務経験証明書)の写真です。
このように実務従事証明書には、実務経験を積んだ店舗の代表者・管理者を記入する欄があります。実務従事証明書はあなた自身で用意できる書類ではないのです。
このとき、実務従事証明書は退職後であっても発行してもらうことができます。ただ会社の本部と離れた地域に住んでいる場合、証明書を受け取るまでに一ヶ月以上かかることもあります。
実際に私は、本社から車で6時間以上かかる支店で登録販売者として働いています。勤務証明書などを受け取るまでには2週間以上かかります。場合によっては、1ヶ月程度の時間を要することもあります。
実務従事証明書の受け取りに時間がかかると、新しい会社で正規の登録販売者としての申請が遅れます。その結果、書類が届くまで研修中の扱いとなるリスクがあるのです。そのため業務・実務従事証明書は、退職前に発行依頼を済ませることが大切です。
なお人間関係のトラブルなどで直属の上司に依頼しづらい場合、総務部などに直接連絡しましょう。そうすることで、気兼ねなく実務従事証明書の発行を依頼することができます。
退職後に気をつけるべきこと
退職しても登録販売者資格が失効することはないため、「現在の会社が合わない」と感じていたり、病気・子育てなどの事情があったりするのであれば、無理せず退職するという選択肢も考えるべきです。
ただ、どのような事情があっても、なるべく早くあなたに合った再就職先を見つけることを意識しましょう。登録販売者はブランク期間が長くなると再就職が難しくなるためです。
ブランクによって研修中になると待遇が下がる
登録販売者の資格そのものは、一度取得すれば失効することはありません。そのため、退職したり離職中に研修を受けなかったりしても、登録販売者として再び働き始めることが可能です。
ただ、薬を一人で販売できる正規の登録販売者でいるためには前述の通り、5年以内に2年以上の実務経験が必要です。そのため退職後のブランクが長くなると、登録販売者資格が「研修中」に格下げとなります。
研修中の登録販売者は、薬販売における時間帯責任者になることができません。そのため、正規の登録販売者よりも求人需要が少ないのが実情です。
実際に以下は、宮城や福島などに店舗を展開するドラッグストアの求人です。
ここには、登録販売者としての実務経験が2年以上ある人を募集していることが記されています。つまり、研修中の登録販売者を採用していないのです。そのため退職後のブランクが長くなると、登録販売者として再就職しづらくなります。
また、研修中の登録販売者は採用されたとしても、正規の登録販売者と同じ条件で働くことはできません。例えば以下は、東京や大阪などに店舗を展開するドラッグストアの求人です。
ここには、正規の登録販売者には手当が月額15,000円支給される一方で、研修中は手当が月額5,000円へ減額されることが記されています。研修中の登録販売者は正規の登録販売者よりも給料が安くなるのです。
そのため登録販売者資格を活かして働きたい場合、退職後のブランクが長くなりすぎないように注意する必要があります。具体的には、3年以上薬の販売に携わらないと研修中となって再就職が厳しくなったり給料が安くなったりするので、なるべくブランクを生じないように再就職先を見つけましょう。
転職サイトに登録して次の職場を探す
ただ、ブランクを生じないために下調べが不十分な状態で次の職場を決めてしまうと、あなたに合わない環境へ入ってしまうことになりかねません。
そうすると早期退職に至ってしまい、経歴に傷がつきます。また再びブランクを生じ、登録販売者資格が格下げになる可能性があります。そのため、登録販売者が資格を活かして長期間働くためには、あなたに合った職場を探すことが大切です。
ただ自分に合う企業を見つけるためには、求人を探すだけではなく企業研究も行わなければなりません。そのため、自分に合う企業を自力で見つけ出すのは困難です。
そのため退職する予定のある登録販売者は、転職サイトを利用して次の職場を探しましょう。
転職サイトの担当者は、未公開案件を含めた膨大な数の求人からあなたに適した案件を紹介してくれます。あなたの退職理由や状況などに合わせて、人間関係の良い職場や子育て・介護しながら働きやすい職場などを探してくれるのです。
また、転職サイトのコンサルタントは給料などの勤務条件の交渉も行ってくれます。そのため、自力で交渉するよりも良い条件で入社しやすくなります。
ただ、担当者の力量には個人差があります。そのため転職サイトは最低でも3社以上登録しましょう。そうすることで、より希望の条件を叶えやすくなり早期退職を防ぐことができます。
まとめ
登録販売者は、離職したら更新手続きをする必要があると考えがちです。他には、研修を受けなければ資格が失効すると思われがちです。ただ実際には、更新手続きの必要性はないですし研修を受ける必要もありません。
つまり、登録販売者は退職しても資格を喪失することはないのです。そのた、やむを得ない事情があるのであれば、退職して環境を新しくする選択肢を選ぶことも大切です。
ただ、登録販売者が退職する際には忘れてはいけない手続きがあります。また退職後のブランクが長くなると、再就職しにくくなったり待遇が悪くなったりします。
そのため、何らかの事情で退職を考えている登録販売者は、転職サイトで新しい職場を探しながら、これまでに述べた退職手続きを進めましょう。そうすることで、あなたに合った会社へスムーズに再就職し、登録販売者としてのキャリアにブランクを生ずることなく働き始めることができます。
登録販売者が転職を行い、求人を探すにしても自分一人で行うのは現実的ではありません。そこで、ほとんどの人が転職エージェントを活用します。
転職サイトを利用すれば、「年収の交渉」「希望の勤務地」「労働時間の調節」を含めてすべて代行してくれるようになります。
しかし、転職サイトによって「地方在住者でも事前面談に対応している」「40代以上でも利用可能」など特徴に違いがあります。人気の転職エージェントの中でも、これらの特徴を理解したうえで、どの転職サイトを利用すればいいのか検討しなければいけません。
そこで当サイトでは、転職サイトごとの特徴について解説しています。転職では2~3社以上に登録して活動するのが基本になるものの、どの転職エージェントを利用すればいいのか理解したうえで以下のページから比較検討し、転職サイトへ登録するようにしましょう。