登録販売者は市販薬を販売できるようになる資格であるため、ドラッグストアでしか働けないと思われがちです。ただ実際には、薬などの知識を活かして医療に関わるさまざまな業種へ転職することが可能です。
このとき病院は、医療業界でもっとも将来が安定している施設です。そのため、登録販売者の中には資格を活かして病院で働きたい人もいるでしょう。
では、登録販売者資格を病院やクリニックなどで活かすことは可能なのでしょうか？ また登録販売者が病院で勤務することには、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか？
ここでは登録販売者が病院で働く際の仕事内容や注意点などについて解説していきます。
もくじ
病院やクリニックなどの登録販売者求人はあるのか？
登録販売者は資格の性質上、市販薬を取り扱っている施設での需要が高いです。例えばドラッグストアやコンビニエンスストア、スーパーなどの小売店です。
また、薬局の中には市販薬を取り扱っている施設が多いです。薬局には薬剤師が在籍しているため登録販売者が勤務する必要性はないものの、顧客対応が可能であることから登録販売者を積極採用しているケースがあります。
これに対して、病院やクリニックなどは市販薬の取扱がありません。そのため、登録販売者の資格を病院で活かすことはできません。
ただ登録販売者を取得する際に得た知識は、クリニックなどで勤務する際に役立ちます。病院勤務するためには、薬や薬機法などの知識が必要であるためです。
知識を活かして医療事務を目指す
登録販売者が病院・クリニックへの就職を目指すとき、最も一般的なのは医療事務を目指すことです。
世間的には、病院の事務は医療事務などの資格がないとできないと思われています。そのため「病院の事務に就くためには、学校へ通ったり通信教育を受けたりしなければならない」と考える人はかなり多いです。
ただ実際には、医療事務の職種に就くために必須となる資格はありません。医療事務の資格はすべて民間資格です。いわば称号の一つであり、「医療事務の資格がなければ就くことが許されない」という仕事は存在しません。つまり登録販売者であっても、医療事務の仕事に就くことが可能なのです。
実際に以下は、東京にあるクリニックの医療事務求人です。
ここには、未経験や無資格などでも応募できることが記されています。医療事務は特別な資格を有していなくても就くことが可能な職種なのです。
このとき、医療事務に必要な知識は一般的な事務職とは異なります。具体的にいうと、医療事務として働くためには医療制度や医学・薬学の基本知識などが必要です。
登録販売者は資格を取得する際に、これらの内容を勉強しています。登録販売者資格そのものは病院で生かせないものの、保有している知識は医療事務として活かすことができるのです。
また多くの場合、医療事務員は患者受付も行います。受付対応が悪ければ、クレームにつながったり患者が別の病院を選んだりしてしまいやすくなります。
特に病院に来る人は身体の具合が悪いため、些細なことでも気に触りやすいです。そのため、医療事務員にはレベルの高い対応力が求められます。
実際に以下は、神奈川にあるクリニックの医療事務求人です。
ここには、患者に感謝の気持ちを持って対応できる人を募集していることが記されています。つまり「患者を不快にさせない対応力のある人」を求めているのです。
このとき、登録販売者としての勤務経験がある人は接客力が高いことが多いです。ドラッグストアなどの販売店では薬の接客を行うため、接客・トーク力が向上しやすいためです。
登録販売者としての勤務経験も、医療事務（受付）でも活かすことができます。そのため、病院やクリニックなどで働きたい登録販売者は医療事務を目指すことをおすすめします。
登録販売者が病院で働くメリット
登録販売者の一般的な職場である小売店は、一定規模の売上を確保できなければ存続できません。そのため小売店で働く場合、売上目標を達成することが求められます。
これに対して、病院は売上ノルマが課せられることはありません。そのため病院勤務する場合、小売店よりも落ち着いた環境で仕事ができるといえます。
またこれ以外にも、登録販売者が病院で働くことには以下のようなメリットがあります。
土日休み・日祝休みを実現できる
ドラッグストアなどの小売店は土日祝日も営業しています。また、休日は来客が多いため出勤となるのが基本です。そのため小売店に勤務する場合、土日祝日に休むことは難しいです。
これに対して、病院は日祝が定休であるケースが多いです。中には、日祝だけではなく土曜日も休診日となっている施設もあります。実際に以下は、北海道にある病院の診療日情報です。
ここには土日祝日は休診であることが記されています。基本的に、休診日だと医療事務は休みです。そのため、このような病院を選ぶと土日祝日を定休とすることができます。
また土曜日が診療日であっても、午後は休診であることが多いです。そのため登録販売者が病院で働くと、小売業では不可能な「カレンダー通りの休日」を実現することができます。
実際に以下は、埼玉にある病院の医療事務求人です。
ここには日曜日と祝日が休日であり、土曜日は午後が休診であることが記されています。このような求人を選ぶと日祝定休・土曜午前勤務を実現することが可能です。そのため、病院での勤務は家族や友人などとの時間を大事にしたい人に向いているといえます。
勤務時間を固定しやすい
ドラッグストアなどの小売店は、営業時間が12時間以上の長時間であるケースが多いです。中には、深夜や早朝まで営業しているところもあります。
そのため小売店で働くと、シフト制勤務によって勤務時間が固定されないことが多いです。例えば、「22時退勤の次の日に9時出勤」などの体に無理がかかりやすいシフトとなることがあるのです。
これに対して、病院のほとんどは一般的な小売店よりも営業（診療）時間が短いです。そのため病院で働く場合、小売店で生じるような体に無理がかかるシフトが発生しにくいです。
また、中には診療時間が夕方までの病院もあります。このような施設を選ぶと、朝～夕方までの勤務の固定化が可能です。
例えば以下は、大阪にある病院の医療事務求人です。
ここには営業時間が9～17時（土曜は9～12時半）であるため、勤務時間もこの時間で固定されることが記されています。病院勤務すると、小売店では不可能な日勤固定が可能となるのです。
転勤が発生しない
ドラッグストアなどの小売店では転勤が発生することが多いです。店舗を広範囲に展開している企業では、転勤によって引っ越さなければならなくなることもあります。
これに対して、病院は系列施設を持つことが少なく、転勤が発生しないことが多いです。特に医療事務職は転勤なしで働くのが基本です。
例えば、以下は福岡にある病院の医療事務求人です。
ここには、勤務先の住所が一つだけ記載されています。つまり、記載されている住所以外の施設で働くことがないのです。そのため登録販売者が医療事務職を選ぶと、ドラッグストアでは困難な転勤なしを実現することができます。
登録販売者が病院で働くデメリット
登録販売者が病院で働くことには、さまざまなメリットがあります。特に、プライベートとの両立がしやすい点は小売店勤務にはない大きな魅力でしょう。
ただ、登録販売者が病院勤務するのはデメリットもあります。デメリットを知らずに転職すると、「こんなはずではなかった」と失望してしまいかねません。そのため病院への転職を考えている登録販売者は、以下のようなデメリットについても知っておくことが大切です。
実務経験を積めないため研修中となる
登録販売者が薬を販売できるようになるためには、過去5年以内に2年以上の業務・実務経験が必要となります。これを満たせなければ研修中の扱いとなり、一人で薬を販売することができなくなります。
このとき登録販売者の実務経験として認められるのは、市販薬の販売に関与した業務時間のみです。病院などの医療業界での勤務であっても、市販薬の販売業務に携わっていない場合、管理者要件における実務経験とは認められません。つまり医療事務の業務は実務経験に換算されないのです。
また処方箋を取り扱っている薬局の中だと、市販薬を販売しているケースが多いです。このような施設は市販薬の営業許可（店舗販売業）を取得しているため、調剤事務としての勤務であっても実務経験に換算されます。
例えば以下は、調剤薬局内にあるOTCの販売コーナーです。
一方で病院は市販薬を取り扱う意義がないため、OTC薬を販売している施設は少ないです。そのため病院で勤務する場合、管理者要件における実務経験を積むことができません。医療事務として働くと、正規の登録販売者資格を喪失するリスクがあるのです。
研修中の登録販売者は一人で薬を取り扱えないため、小売店での需要が低いです。そのため、病院勤務によって登録販売者資格が研修中へ格下げとなると、小売店へ転職することが難しくなります。
もちろん医療事務としての経験や知識などは、医療事務員として転職する際に有利に働きます。医療事務を続けるつもりなのであれば、登録販売者資格を喪失しても問題ないでしょう。ただ、ドラッグストアに戻る可能性があるなら病院・クリニックへの転職は微妙です。
ドラッグストアよりキャリアアップしにくく、給料が安くなる
またキャリアや年収などにこだわりがあるのであれば、登録販売者資格の喪失はデメリットとなります。一般的に医療事務はキャリアアップしづらいといわれているためです。
ドラッグストアなどの小売店は、地域に店舗をチェーン展開している企業が多いです。中には、全国に店舗を展開している会社もあります。
このような環境では、店長やエリアマネージャーなどの役職ポストが多くなります。そのため、小売店での勤務は出世しやすい傾向にあります。当然ながら、出世するとその分だけ給料が向上していきます。
これに対して、医療事務としてキャリアアップするためには事務員をまとめるマネジメント職に就く必要があります。
ただマネージャーが必要なほど事務員の数が多いのは、大学病院などの大規模な施設のみです。そのため、個人経営のクリニックなどでは医療事務の役職が存在しないケースが圧倒的に多いです。
また、マネジメント職を目指すためには役職ポストに空きが生じる必要性があります。ただ医療機関は小売店に比べて、複数の病院・クリニックを経営している団体が少ないです。そのため、病院は小売店よりも役職ポストが空きにくく、出世しにくい傾向にあります。
出世できなければ給与が向上することは期待できません。つまり医療事務に就くと、小売店勤務よりも給料が低くなる可能性が高いのです。
実際に以下は、愛知や岐阜、静岡などに店舗を展開するドラッグストアの求人です。
ここには、月給19～31万円スタートであることが記されています。また24歳・店長で年収500万円、28歳・係長職で580万円などの役職別年収例も記載されています。このような表記があり、早期のキャリアアップも可能です。
これに対して、以下は愛知にあるクリニックの医療事務求人です。
ここには、月給15～17万円スタートであることが記されており、キャリア別の年収などは記載されていません。医療事務を選択すると、年収が低くなったりキャリアアップに時間がかかったりするようになるのです。
そのためプライベートの時間よりも給料を重視したい場合は、医療事務ではなく登録販売者資格を活かせる職に就くべきだといえます。
病院で働きたい登録販売者が医療事務求人を探すコツ
病院などでの事務職はプライベートの時間を確保しやすいという大きなメリットがあります。そのため家族との時間の確保などの都合がある人は、登録販売者としての知識を活かして医療事務に就くという選択肢があります。
このとき同じ医療系の事務職には、調剤薬局で働く調剤事務もあります。
調剤事務の働き方や年収、キャリアアップ先などは医療事務とかなり似ています。そのため調剤事務にも「小売店勤務よりも年収が低くりやすいものの、プライベートの時間が確保しやすい」というメリットがあります。
また調剤薬局だと、前述の通り市販薬を取り扱っている施設がほとんどです。そのため登録販売者としての実務経験を積みながら事務職に就くことができ、「研修中に格下げ」となるリスクがありません。
登録販売者が事務職に就きたいのであれば医療事務だけではなく、調剤事務も視野に入れるといいです。
求人サイトを利用し、登録販売者が働ける病院求人を探す
ただ医療事務や調剤事務などの求人は、いくつもあります。また登録販売者が事務職へ転職する場合、未経験可の求人を探す必要があります。膨大な数の求人から応募可能な案件を自力で探すことは大変です。
そのため登録販売者が事務職へ転職するのであれば、転職サイトを利用して求人を探しましょう。
転職サイトを利用すると、担当コンサルタントがあなたに合った求人を紹介してくれます。求人探しへの時間を転職のために割く必要がなくなります。
さらに担当コンサルタントは、就業先と年収などの交渉もしてくれます。「ただの医療事務未経験者」ではなく、「登録販売者（=医療に関する基礎知識の保有者）」ということをアピールしてもらえるのです。そのため転職サイトを利用すると、通常よりも有利な条件で転職を成功させやすくなります。
ただ、担当者の力量には個人差があります。そのため転職サイトは最低でも3社以上登録しましょう。そうすることで、より好条件で転職を成功させやすくなります。
まとめ
一般的に、登録販売者はドラッグストアなどの小売店でしか働けないと思われがちです。ただ実際には、登録販売者としての知識を活かして病院で医療事務職に就くことも可能です。
病院は日祝が休診日であることがほとんどであるため、医療事務になるとカレンダー通りの休日を実現できます。またドラッグストアでは不可能な日勤固定の働きも可能です。
ただ病院で働くとき、研修中の登録販売者へと格下げとなるリスクを伴います。そのため、登録販売者は医療事務だけではなく薬局事務も視野に入れて求人を探しましょう。
また医療事務などの案件はかなり多いため、自力で求人を探すにしても応募求人に迷ってしまいます。そのため、病院で働きたい登録販売者は転職サイトを利用しましょう。そうすることで、あなたに合った医療機関へ好条件で転職できるようになります。
登録販売者が転職を行い、求人を探すにしても自分一人で行うのは現実的ではありません。そこで、ほとんどの人が転職エージェントを活用します。
転職サイトを利用すれば、「年収の交渉」「希望の勤務地」「労働時間の調節」を含めてすべて代行してくれるようになります。
しかし、転職サイトによって「地方在住者でも事前面談に対応している」「40代以上でも利用可能」など特徴に違いがあります。人気の転職エージェントの中でも、これらの特徴を理解したうえで、どの転職サイトを利用すればいいのか検討しなければいけません。
そこで当サイトでは、転職サイトごとの特徴について解説しています。転職では2～3社以上に登録して活動するのが基本になるものの、どの転職エージェントを利用すればいいのか理解したうえで以下のページから比較検討し、転職サイトへ登録するようにしましょう。
