世の中の仕事のほとんどは、顧客対応をする必要性のある業種です。顧客(=お金を払ってくれる人)がいなければ仕事が成り立たないためです。

特に登録販売者は市販薬を販売する資格であるため、資格保有者のほとんどは接客業に従事しています。

ただ一般的に、接客はストレスの溜まりやすい仕事です。顧客から失礼な態度を取られることがありますし、理不尽なクレームを受けることもあります。そのため、現役の登録販売者の中には「小売業界を辞めたい」と思っている人もいます。

このような人におすすめなのが、物流業界の登録販売者求人です。登録販売者は一般的に小売業で働く資格であるものの、取扱商品の種類によっては倉庫などでも働くことができるのです。

そこで、登録販売者が倉庫などの物流業界で働く際の働き方と求人選びのコツについて解説していきます。

登録販売者の倉庫での働き方

ドラッグストアなどの接客業では顧客対応力が求められます。特に登録販売者は、医薬品を一般顧客に販売する資格です。そのため、登録販売者には「専門知識のない顧客にわかりやすく説明するための技術(=コミュニケーション能力)」が必要となります。

また小売店では、顧客に商品を買ってもらわなければ利益が出ません。そのため小売店で働く場合、どれだけ作業が溜まっていても顧客対応を最優先にしなければなりません。小売業界では優先順位を柔軟に変更できる対応力が必要です。

これに対して倉庫での仕事は、伝票に書かれた商品を集めたり(ピッキング)、工場から届く商品を倉庫へ納品したりなどの作業が多いです。そのため、倉庫勤務にコミュニケーション能力や柔軟な顧客対応力などが求められることはありません。

一方で倉庫では短い時間で多くの作業をこなす必要があります。そのため倉庫での勤務には、効率よく作業ができる段取り力が求められます。

未経験の登録販売者は倉庫で働くことができない

登録販売者として市販薬を販売するためには、過去5年以内に2年以上の実務・業務経験が必要となります。この条件を満たせなければ、研修中の扱いとなって自分一人では薬を販売することができません。

このとき倉庫などの物流業界では、薬を顧客に販売する機会がありません。そのため「物流業界の求人は正規の登録販売者である必要がない」と思われがちです。

ただ倉庫の仕事であっても、研修中の登録販売者は応募できないことが多いです。例えば、以下は福岡の医薬品販売会社の求人です。

ここには、「店舗責任者となれる(=管理者要件を満たしている)倉庫勤務の登録販売者を募集している」と記載されています。これは、医薬品を販売する店舗での倉庫勤務であるためです。

倉庫での勤務であっても、店舗販売業の許可を持っている範囲で働いていれば薬の取扱が可能となります。そのため、この企業では薬を販売できる正規の登録販売者を募集しているのです。

また求人に管理者要件に関する記述がない場合であっても、業務未経験の登録販売者を採用するケースは少ないです。倉庫で登録販売者を募集している場合、「ドラッグストアなどで扱っている商品の基礎知識を持っている人」を求めているケースが多いためです。

例えば以下は、茨城の物流倉庫の求人です。

ここには、物流センターで働ける登録販売者の資格保有者を募集していることが記されています。

物流倉庫では医薬品を販売していないため、登録販売者の「薬を販売できる資格」は必要ありません。そのため物流倉庫で働く場合、管理者要件を満たしている必要はありません。

ただ薬を販売していないのに登録販売者を募集しているということは、登録販売者としての業務経験(=商品知識や顧客対応の経験)がある人を求めていることを意味します。

そのため物流倉庫では管理者要件を満たしている必要はないものの、店舗での勤務を経験したことのない登録販売者がこのような求人に受かることは難しいといえます。

登録販売者は工場で働くことはできるのか?

市場に流通している薬は工場で作られています。薬は一般的な商品に比べて、品質基準が厳格に定められています。そのため薬を作っている工場では、薬剤師などの専門知識が豊富なスタッフが品質チェックを行っています。

このとき、登録販売者は薬剤師に次ぐ薬の専門家です。そのため登録販売者の中には、工場で品質チェックの仕事に就きたいと思っている人もいます。

ただ、薬の品質チェックの登録販売者求人はまずありません。「市販薬を販売するための知識」と「薬の品質を管理するための知識」は大きく異なります。

つまり、登録販売者としての知識は薬の品質チェック業務にほとんど活かすことができません。そのため、薬の品質チェックの募集は品質チェック業務経験者か薬剤師のどちらかであることがほとんどです。

一方で工場の生産ラインで働く場合、特別な資格などは必要ありません。そのため生産ラインであれば、登録販売者でも工場で働くことができます。

ただ特別な資格が必要ないということは、登録販売者の資格を活かせないことを意味します。実際に工場の生産ラインで必要なスキルは、薬の知識ではなく機械の扱い方法です。そのため基本的には、登録販売者の資格を工場で活かすことは難しいです。

なおアルバイト求人であれば、工場の案内スタッフとして登録販売者資格を活かせるものがあります。例えば以下は、長野の薬品製造工場の求人です。

ここには、薬品製造工場が工場見学の案内スタッフとして登録販売者資格の保有者を優遇採用していることが記されています。このような求人を選べば、登録販売者資格を活かしながら工場勤務することが可能となります。

ただ工場見学の案内スタッフであるため、通常の工場勤務と異なりコミュニケーション能力が必要となります。そのため、接客が苦手で工場勤務を希望している人には向かないので注意が必要です。

登録販売者が倉庫に就職するメリット

倉庫での勤務と小売店での勤務は、性質が大きく異なります。例えば倉庫勤務では、小売店のように日常的に発生する接客業務がありません。そのため、顧客から無理難題を突きつけられたり悪質なクレームを言われたりすることがありません。

このような点は、接客で苦しんでいる現役の登録販売者には大きな魅力に感じられます。他にも、倉庫勤務にはドラッグストアなどの小売業にはない魅力がいくつもあります。

ノルマに追われることがなくなる

小売業は顧客に商品を販売するのが仕事です。利益を上げることができなければ、経営を続けていくことはできません。そのため、小売業では売上の達成目標が予算として設定されます。

特にドラッグストアなどでは、自社開発や製薬会社との交渉などを有利にするため、まとまった販売個数が必要となります。そのため、ドラッグストアでは定期的に販売ノルマが課せられることが多いです。

これに対して倉庫での業務は売上目標が課せられません。また販売ノルマが課せられることもありません。そのため物流業では、ノルマに追われることなく仕事に従事することができます。

土日祝日が定休となり、希望休も叶えやすくなる

ドラッグストアなどの小売店は土日も営業しています。また土日祝日は来客数が多いため、小売業に就くと土日を定休にすることができません。

特に、店舗に登録販売者などの資格者が不在となる時間が生じると、薬の販売を一時中止しなければなりません。そのため登録販売者の数が少ない場合、土日の希望休を取ることも難しいです。

これに対して基本的に倉庫は土日祝日が休みです。実際に以下は、物流倉庫の登録販売者求人です。

ここには土日祝日が完全に休みであることが記されています。登録販売者が物流業に就くと、小売業では不可能なカレンダー通りの休みを実現することができるのです。

また物流倉庫は薬を販売していないため、「登録販売者が必ず店舗にいなければならない状況」は発生しません。そのため物流倉庫で働く場合、希望休も取りやすい環境となります。

ドラッグストアと違い転勤がない

基本的に小売業には転勤がつきものです。そのためドラッグストアなどの薬の取扱店で働くと、転勤を経験することが多いです。

一方で倉庫勤務には、転勤がほとんどありません。実際に以下は、大阪にあるペット用食品の倉庫の求人です。

ここには、登録販売者の資格が活かせることや転勤がないことが記されています。登録販売者が倉庫で働くと、小売業では困難な転勤なしを実現することができるのです。

そのため何らかの事情で転勤できない人は、倉庫勤務を候補に入れることをおすすめします。

髪型・装飾品が自由

ドラッグストアなどの小売業では顧客がいる店舗内で仕事をします。そのため小売業で働くためには、顧客に悪い印象を与えない姿で勤務する必要があります。

例えば、金髪や入れ墨などを不快に感じる人は多いです。そのため基本的に接客業では、髪色が明るかったり入れ墨が見えたりする人を採用しません。短髪の女性や長髪の男性など「一般的ではない髪型の人」を採用しない店舗も多いです。

また爪が長かったりカラフルであったりすると、顧客に不快な印象を与えます。そのため爪は短めに切り、派手な色のマニキュアやネイルアートは不可としている企業がほとんどです。

他にも、接客業ではピアスなど過度な装飾をしないように指示されます。店舗によっては、結婚指輪の装着も許可されないことがあります。

これに対して、倉庫勤務は顧客対応がありません。そのため、髪型や装飾品などの規則がゆるいです。具体的には、髪色やネイル、ピアスの装着などが自由であることが多いのです。

実際に以下は、福岡の医薬品倉庫の登録販売者求人です。

ここには、髪型や服装、ネイル・ピアスなどの装飾が自由であることが記されています。倉庫で働くと、髪色を薄くしたり爪などを装飾したりすることが可能となるのです。そのため、倉庫での業務はファッションにこだわりがある人にも向いています。

登録販売者が倉庫で働くデメリット

どのような業態であっても、働いていれば不満を覚えることがあります。そのため、転職を考えている登録販売者は現在の職種に多くの不満を抱えていることでしょう。

ただ一方で、現状の優れている点を自覚できているケースは少ないです。特に同じ業種に長い間就いている場合、第三者の目から見ると良いところであっても本人にとっては「それが当たり前」の状態となっています。

このような事実に気づかず転職先のメリットだけ見て転職すると、「こんなはずではなかった」と後悔することになりかねません。そのため物流業へ転職したいのであれば、登録販売者が倉庫で働くデメリットについても知っておくことが大切です。

作業が単調で飽きやすい

ドラッグストアなどで登録販売者が働く場合、顧客の健康相談を受けることになります。顧客の悩みは人それぞれ異なるため、接客のたびにその人に合わせた対応をすることになります。

また、ドラッグストアなどで扱われている商品は入れ替わりが激しいです。新商品が発売されると、そのたび陳列を変えたり売り出し方を考えたりします。そのため、小売業での仕事は変化に富んでいて飽きにくいです。

これに対して倉庫の仕事は、商品の納品・整頓やピッキング、検品などを効率良く進めることが求められます。また倉庫で扱う商品はそれほど入れ替わりがありません。そのため倉庫での仕事は、同じような作業の繰り返しになります。

このような単調な仕事は、簡単で習得しやすい一方で飽きやすいというデメリットもあります。作業に飽きるとモチベーションを維持しにくくなるとともにミスが起こりやすくなります。そのため単調作業の繰り返しが苦手なタイプの人は、長期的に倉庫での仕事をこなすことには向いていません。

肉体労働なので、体力がないとつらく感じやすい

ドラッグストアなどでは納品や品出し、陳列などで店内を歩き回ります。そのため、小売業はオフィスワークに比べて運動量が多い職種です。

ただ小売業では、レジやデスクワークなども発生します。デスクワークは座って行いますし、レジ中は立ったままとなります。また来客数の少ない店舗では、品出しなどの作業が一段落したらあまり動かなくなります。

これに対して、倉庫での仕事は基本的に肉体労働です。ピッキングや納品などの際には倉庫内を歩き回って荷物を運びます。データ入力などのデスクワークもあるものの、それほど長い時間がかかりません。

そのため倉庫での仕事は小売店で働く場合よりも、運動量が多くなりやすいです。特に仕事量の少ない小売店店舗で従事していた場合、倉庫での仕事をつらく感じる可能性が高いです。

物流倉庫を選ぶと研修中となるリスクがある

登録販売者の資格は過去5年以内に2年以上の実務経験がなければ研修中に格下げとなります。

管理者要件における実務経験は、薬剤師または登録販売者のいる店舗(店舗販売業を営んでいる店舗)でしか積むことができません。つまり薬の販売店でしか実務経験を積むことができないのです。

したがって、薬を販売していない物流倉庫での勤務は「管理者要件における実務経験」とは認められません。そのため物流倉庫へ転職した場合、実務経験不足で研修中となるリスクがあります。

このとき物流倉庫で働いた経験は、他の物流倉庫へ転職する際に有利に働きます。そのため物流で働き続けるつもりなのであれば、資格が格下げとなることは気にしなくても良いでしょう。

ただ研修中の登録販売者となると、小売店への転職は不利になります。そのため小売店勤務へ戻る可能性があるのであれば、物流倉庫での勤務を避ける必要があります。

登録販売者が倉庫勤務の求人を選ぶコツ

一方で中には、管理者要件を満たせる倉庫勤務もあります。例えば医薬品の通販会社は、登録販売者として実務経験を積みながら倉庫勤務しやすい業態です。

医薬品を通信販売するためには、実際の店舗を構えることが義務付けられています。薬の通販会社は店舗販売業の許可を得ており、登録販売者が実務経験を積める環境なのです。

このとき通信販売会社は店舗も構えているものの、売上の多くは通信販売によるものです。そのため、この業態では登録販売者が倉庫スタッフとして働くことが可能です。

例えば以下は、福岡の市販薬通販会社の求人です。

ここには、店舗責任者ができる登録販売者を倉庫・検品要員として募集していることが記されています。このような求人を選ぶと、資格を維持しながら倉庫で働くことができます。

転職サイトを活用して、物流の登録販売者求人を探す

倉庫での勤務は小売業とは大きく異なり、接客がなかったり土日休みを実現できたりなどの、さまざまなメリットがあります。そのため接客が苦手だったり休みが取れなかったりなどの理由で、小売店での勤務をつらく感じている登録販売者は、倉庫勤務を選ぶという手段もあります。

ただ登録販売者の物流求人はかなり少ないです。そのため自力で倉庫の求人を探すことは困難です。したがって登録販売者の資格を活かして倉庫勤務したいのであれば、転職サイトを利用しましょう。

転職サイトを活用すると、担当コンサルタントがあなたに合った求人を探してくれます。コンサルタントは非公開の求人案件を抱えていることもあるため、転職サイトを活用すると登録販売者の倉庫求人を見つけ出しやすくなります。

ただ担当コンサルタントの力量や抱えている案件などには、転職サイトの間で差があります。そのため、転職サイトは同時に3社以上登録することが大切です。そうすることで、少ない求人の中から理想の条件の中途採用募集を見つけ出しやすくなります。

まとめ

登録販売者は市販薬を取り扱える資格であるため、小売店にしか需要がないと思われがちです。ただ実際には、登録販売者資格を物流業界で活かすこともできます。

倉庫勤務には接客業務や販売ノルマなどがありません。また土日祝日が定休であるため、カレンダー通りの生活を送ることが可能となります。このような点は、小売業では得られないメリットです。

ただ登録販売者の倉庫求人は少ないです。また選ぶ求人によっては、管理者要件を満たせなくなって研修中へ格下げになることもあります。

そのため倉庫で働きたいのであれば、転職サイトを利用して求人を探しましょう。そうすることで、あなたに合った条件の求人が見つかりやすくなります。


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