登録販売者の主な就職先である小売業界は、一般的に産休・育休を取りづらいといわれています。特に、登録販売者は市販薬販売の時間帯責任者になっているケースが多いです。

そのため、登録販売者が育休などによって長期間休職すると、店舗に大きな影響を及ぼします。このようなことから「登録販売者は産休・育休を取得できない」と思われがちです。

また、登録販売者は有効期限のある資格です。そのため中には、資格への影響を考えて産休・育休の取得をためらう女性登録販売者もいます。

それでは、登録販売者が産前・産後休暇や育児休暇を取ることは不可能なのでしょうか? また妊娠・出産を考えている女性登録販売者は、どのような求人を選べばいいのでしょうか?

ここでは、登録販売者が産休・育休を取得しやすい求人選びについて解説していきます。

登録販売者でも産休・育休を取得可能

冒頭で述べたように、小売業界は産休・育休を取得しづらい業界だといわれています。

実際に厚生労働省による女性の育休取得率の調査では、小売業界が取得率ワースト3位となっています。このようなことから、小売業界で働くことになる登録販売者は産休・育休を取得しづらいと思われがちです。

ただ小売業界であっても、育休を取得している人は多くいます。実際に私が過去に勤めていた会社には、9年の合計で3人の子供を産み、産休・育休を3度取得した女性がいました。小売業界で働く人が産休・育休を取得することは可能なのです。

登録販売者が産休・育休を取ったら資格が失効するのか?

ただ、登録販売者は一般的な小売業従業員とは異なり、国家資格の保有者です。資格の中には有効期限があるものがあり、更新期間に所定の手続きを取らなければ資格が失効するケースがあります。

中には、資格有効期間内に業務経験がなければ自動的に失効となる資格もあります。そのため産休・育休を取る可能性のある登録販売者の中には、育児による長期間の休暇取得による資格の失効を心配している人がいます。

ただ登録販売者資格が失効となるのは、資格者本人が重篤な違反を犯したり本人が失効を希望したりした場合のみです。業務経験不足によって登録販売者資格が失効することはないのです。

そのため、産休・育休によって資格を失うことを心配する必要はありません。

産休中・育休中に外部研修を受ける必要はあるのか?

また「休暇中であっても、外部研修を受けなければ資格を剥奪されたりペナルティを受けたりする」と思っている登録販売者もかなり多いです。そのため中には、産休・育休中に無理して外部研修を受けようとする人がいます。

確かに、現役の登録販売者は年に1~2回ほど外部研修を受けなければなりません。ただ、登録販売者の外部研修の受講は「資格保有者本人」ではなく「登録販売者を雇用する事業者」に義務づけられています。

つまり外部研修は「登録販売者が受講しなければならない研修」ではなく、「ドラッグストアなどの事業者(会社)が、雇用している登録販売者に受けさせなければいけない研修」なのです。そのため外部研修を受けなくても、登録販売者の資格者本人に国からのペナルティ(資格の剥奪など)はありません。

また、会社が外部研修を受けさせなければならないのは「業務・実務にあたっている登録販売者」です。登録販売者としての業務に就いていない(=産休・育休中)の資格保有者に外部研修を受けさせる義務はありません。

そのため産休・育休によって登録販売者業務に就いていない期間は、外部研修を受ける必要がないのです。そのため産休・育休を取得している人は、無理に外部研修へ参加しなくていいです。

ただ、休職中も登録販売者としての知識・情報レベルを保ちたいのであれば、その旨を会社へ伝えて外部研修への参加を相談しましょう。産休・育休中であっても、希望があれば外部研修を受講することは可能です。

また、外部研修は個人で参加することもできます。費用は資格者本人が負担することにはなりますが、受講日や受講会場などを自分で選んだり受講回数を減らしたりすることが可能となります。

そのため産休・育休中でも登録販売者としての知識レベルを最新に保ちたいのであれば、外部研修の受講を検討してもいいでしょう。

休職期間が3年を超えると資格が格下げになる

なお産休・育休によって登録販売者資格を失うことはないものの、一人で薬を販売できなくなる可能性はあります。産休・育休によってブランクが3年以上空くと、登録販売者資格が「研修中」へ格下げとなるためです。

研修中の登録販売者は、自分一人で薬を販売できません。そのため研修中の登録販売者は、資格者としての需要が低く待遇も悪いです。

実際に以下は、北海道・札幌にあるコンビニエンスストアの登録販売者求人です。

この求人は管理者要件を満たす登録販売者しか応募できません。つまり、研修中の登録販売者は働けないのです。

また以下は、東京や神奈川、千葉などに店舗を展開するドラッグストアの求人です。

この求人は登録販売者の資格保有者に月1万円の資格手当が支給されますが、法定研修中は月5,000円へ減額されます。登録販売者資格が研修中へ格下げとなると、転職可能な求人が少なくなるだけでなく資格者手当が減額されるのです。

そのため登録販売者資格を正規の状態に保ちたいのであれば、産休・育休の取得期間が3年を超えないように注意する必要があります。

登録販売者が産休・育休を取りづらい業態

ただ、正規の登録販売者資格を保ちながら産休・育休を取得するのは簡単ではありません。

登録販売者資格を格下げさせない(=産休・育休の取得期間を3年未満に抑える)ためには、子供が満3歳になる前に復職しなければなりません。

ただ子供の健康状態などによっては、このタイミングで復職できない可能性があります。また3歳未満だと幼稚園を利用できないことも多く、保育園へ入園できなければ本格的な職場復帰は不可能です。

さらに子供が小さいうちに二人目の子供を妊娠すると、再び産休・育休を取得することになります。そうなると再びブランクが空き、「5年以内に2年以上の業務・実務経験」という管理者要件を満たせなくなる可能性が非常に高いです。

そのため産休・育休を取得する登録販売者は、資格が格下げとなる可能性があることを覚悟しなければなりません。

ドラッグストア以外の小売業は産休・育休を取りづらい

ただ前述のように、ドラッグストア以外の小売店だと研修中の登録販売者が働けません。これはドラッグストア以外の小売店は薬の売上比率が低く、資格者の在籍数をぎりぎりに絞る必要があるためです。中には、時間あたりの資格者数が1人となる店舗もあります。

このような状況では、一人で薬を販売できない研修中の登録販売者は働けません。そのためドラッグストア以外の小売店だと、産休・育休によって研修中の登録販売者になると復職が難しくなるのです。

このとき産休・育休は労働者の権利であり、育休の取得などを理由に退職を迫ったり一方的に配置転換を行ったりすることは法律で禁止されています。そのため、産休・育休によって研修中扱いになった登録販売者に退職・配置転換を求めることは違法です。

ただ、薬の売上比率が低いドラッグストア以外の小売店からしてみれば、一人で薬を売れない登録販売者を雇い続けるメリットがほとんどありません。特に「売上数値の向上が得意」「固定客が多数ついている」などの人材でなければ、新しく正規の登録販売者を雇った方がお得です。

そのため、「産休・育休によって研修中の登録販売者」となってしまうと、ドラッグストア以外の小売店では暗に退職を勧められたり居場所がなくなったりする可能性が非常に高いです。

したがって産休・育休を取得する可能性がある登録販売者は、ドラッグストア以外の小売店を避けることが大切です。

調剤薬局も産休・育休を取得しづらい

また登録販売者は、調剤薬局などの小売業界以外でも働くことができます。調剤事務は資格が必要な職種と思われがちですが、実際には無資格でも就くことができます。そのため薬の基礎知識がある登録販売者は、資格を活かして調剤事務スタッフとなることも可能です。

このとき、調剤事務は「夕方退勤」「日祝休み」など子育てと両立しやすい求人がほとんどです。そのため、調剤事務は子育てママに人気がある職種です。

ただ調剤薬局であっても、事務職は産休・育休を取得しづらい傾向にあります。育休を取得しやすいのは薬剤師であり、事務員は関係ないのです。

特に調剤事務は、少数のスタッフで運営しているケースがほとんどです。事実、事務員数を1名体制で運営している薬局がほとんどです。

このような環境で調剤事務員が産休・育休を取得すると、調剤薬局は新たなスタッフを雇用しなければ運営できなくなります。

このような理由から産休・育休を取得したいのであれば、調剤薬局も避けることをおすすめします。

産休・育休を取りたい登録販売者の求人選び

これに対してドラッグストアであれば、薬が主力商品であるため複数名の資格者が在籍しています。そのため研修中の登録販売者でも問題なく働くことができます。ドラッグストアであれば、産休・育休によって資格が研修中へ格下げとなっても働くことができるのです。

またドラッグストア業界は、店舗をチェーン展開している会社がほとんどです。そのため産休・育休で人員不足が発生しても、他店から従業員を異動させることで補いやすくなります。

さらに店舗を複数展開している企業は経営規模が大きく、スタッフが産休・育休を取っても経営に強い負荷がかかりづらいです。そのため産休・育休を取る可能性のある登録販売者はドラッグストアを選びましょう。

育休取得率の記載がある求人を選ぶ

ただ当然ながら「ドラッグストア業態であれば、どの企業であっても産休・育休を取得できる」わけではありません。中には、産休・育休を取得しづらいドラッグストア企業もあります。

そのため産休・育休を取りやすい会社を選びたいのであれば、育休取得率や育休復帰率などを記載している求人を選ぶことが大切です。

育休取得率を記載している場合、「育休を取得しやすい会社である」とアピールしていることを意味します。そのため、「育休取得率の記載がある求人は、育休を取得しやすい制度・雰囲気を有している」といえます。

特に育休復帰率が記載されている場合、復職しやすい会社であることが推測できます。例えば以下は、東京や神奈川(横浜)などに店舗を展開するドラッグストアの求人です。

この求人は直近3年間の産休・育休復帰率が100%となっています。このような求人を選べば、産休・育休を取得しても問題なく復職することが可能となります。

産休・育休期間を延長できる求人

また基本的に、育児休暇は子どもが1歳になるまで取得可能です。保育園に入れないなどの特別な理由があれば、2歳になるまで育児休暇を延長することができます。これは国が定めている基準であるため、原則的にはどの会社に入ってもこの条件が当てはまります。

ただ、どの会社でも1歳になるまでは育休を取得できるということは「子供が1歳になると復職する人が多い」ことを意味します。このとき、子供を1歳から保育園へ入園させようとしても、1歳児の枠に空きがないケースが非常に多いです。

また1歳で入園できなかった子供は、待機児童として保育園の空きが出るのを待ちます。そのため地域によっては、国が定める育休の限度年齢である2歳になっても保育園に入園できない可能性があります。

実際に私は保育園激戦区ではない地域に住んでいるにもかかわらず、1歳での入園が叶いませんでした。また、申し込みの段階で「枠がほとんどないので1歳での入園は厳しい」と言われました。

その結果、1年以上待機児童となり保育園への入園が実現したのは2歳半になる頃です。保育園激戦区ではない地域であっても、1~2歳での入園は難しいのです。

このような状況で国が定めた基準の育休しか利用できない場合、保育料の高い認可外保育園を利用したり退職したりせざるをえなくなります。最低限度の育休制度しかない会社だと、育休から復職できないリスクが高いのです。

このとき、中には会社独自の制度で育休を2歳以降も取得できる求人があります。例えば以下は、埼玉や千葉、愛知などに店舗を展開するドラッグストアの求人です。

この求人は、子どもが3歳になる前日まで育休を取得できます。このような求人を選べば、定員数の多い3歳児枠で保育園へ入園させたり幼稚園の延長保育を利用したりすることで復職しやすくなります。

登録販売者が産休・育休取得を取るコツ

なお、産休・育休の取得は労働者の権利です。また出産・育児のための休暇は一般的な私用の休暇と異なり、体力・精神力を削って「未来の社会を支える人材」を育みます。そのため、産休・育休は後ろめたい気持ちなどを感じずに取得していいものです。

ただ一方で、産休・育休を取得することによって他のスタッフに影響があるのは事実です。あなたが担っていた仕事は他の従業員に割り振られるため、一人当たりの業務量は増えます。

特に登録販売者は資格者しか担えない仕事があるため、他の資格者への負担が大きくなります。場合によっては、あなたが産休・育休を取得することによって他の登録販売者の残業が増える可能性もあります。

このとき、もしあなたが「当然の権利を利用しているだけである」という態度を取ると、同僚は業務負担の増加を許すことができなくなるでしょう。その結果、「あなたが育休を取ったから自分の仕事が増えた」と恨まれ、職場復帰しづらくなります。

そのため、育休は子どもを産んだ人が利用できる当然の権利であるものの、その権利を声高に主張して育休を取得するのはやめましょう。他の資格者があなたの業務負担を担ってくれるから育休を取れることを忘れず、感謝の気持ちを十分に伝えることが大切です。

時短勤務にも着目する

また育休の取得を考えている登録販売者は、育休の取りやすさだけでなく時短勤務にも着目することが大切です。

時短勤務を利用すると、子供との時間を増やせるため、保育園などに通う子供の情緒を安定させやすくなります。また認可保育園を利用できないケースであっても、時短勤務であれば一時保育で就業が可能となります。

このとき時短勤務は、3歳未満の子供を育てる人が利用できます。これは国によって定められているため、被雇用者であれば誰でも子供が3歳になるまで時短勤務することが可能です。

ただ、子供が3歳になったからといって急に親の手を離れるわけではありません。また、満3歳のタイミングで認可保育園に入れる保証もありません。

さらに認可保育園に入園できて復職したとしても、子供が小学校に入ると子供の帰宅時間が早くなります。夕方まで子供を保育してくれる学童保育も、小学校2~3年生までしか利用できないケースが多いです。国が定める時短勤務期間では、育児しながらの就業が難しいのです。

このような中、女性支援に力を入れている企業の中には時短勤務を延長して利用できる求人があります。

例えば以下は、東京や愛知、大阪などに店舗を展開するドラッグストアの求人です。

この求人は、育児短時間勤務制度(時短勤務)を小学校6年生の終了時まで利用できます。このような求人を選べば、小さな子供を一人で留守番させることなく働き続けることが可能となります。

そのため育休を取得して子育てしながら働くことを考えている登録販売者は、時短勤務制度にも着目して求人を探しましょう。

転職サイトを利用して求人を探す

ただ、子育てと仕事を両立しやすい求人を自力で探すことは困難です。求人案内には、会社の制度のすべてが記載されているわけではありません。そのため求人案内を見るだけでは、子育てしやすい制度が整っている会社を見つけることは難しいです。

また育休制度などが整っていたとしても、実際に産休・育休を取得しやすい雰囲気かどうかはわかりません。実際に利用できる雰囲気かどうかは働いている従業員に直接聞かなければわからないのです。ただ転職活動では、このような企業研究に長い時間は割けません。

そこで育休の取得を考えている登録販売者は、転職サイトを利用して求人を探しましょう。

転職サイトの担当者は、会社の制度や内情などを熟知しています。そのため転職サイトを利用すると、自力で探すよりも産休・育休を取得しやすい求人を見つけやすくなります。

ただ、担当者の力量には個人差があります。そのため転職サイトは最低でも3社以上登録しましょう。そうすることで、実際に産休・育休を取得して育児と仕事を両立しやすい求人への転職を実現することができます。

まとめ

産休・育休の取得や、それに伴う外部研修の未受講などによって資格を失う心配をしている登録販売者は多いです。ただ、登録販売者資格が産休・育休などによって失効することはありません。

しかし、産休・育休によって業務・実務経験が足りなくなると登録販売者資格が研修中へ格下げとなります。研修中の登録販売者は一人で薬を販売できないため、一般的にドラッグストア以外の小売店では働くことができません。

一方でドラッグストアであれば、産休・育休によって資格が研修中となっても働き続けることができます。ただ中には、産休・育休を取得しづらいドラッグストアもあります。

そこで将来子供を持つことを考えている女性登録販売者は、転職サイトを利用して求人を探しましょう。そうすることで、妊娠・出産を経ても継続して勤務できる求人への転職が可能となります。


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