一般的に「薬」というと、人用の薬のことを指します。そのため市販薬を販売できる資格である登録販売者は、人用の薬のみを扱う資格だと思われがちです。

ただ実際には、登録販売者は動物用医薬品も取り扱うことができます。登録販売者の資格は、ペット業界でも活かすことができるのです。

ただペット業界での勤務は、人用の市販薬販売とは大きく異なります。そのため登録販売者資格をペット業界で活かしたい場合は、仕事内容などを十分に理解しておく必要があります。

そこで、登録販売者が動物用医薬品を取り扱うメリットやデメリット、仕事内容などについて解説していきます。

登録販売者(人体)が登録販売者(動物)になるために必要な申請・登録

登録販売者は人用の市販薬だけではなく、動物用の市販薬も販売することができます。ただ現在人用の登録販売者として働いている人が、そのまま動物用の薬を売れるわけではありません。動物用医薬品登録販売者は、一般的な登録販売者と区別されているためです。

ドラッグストアなどで働いている登録販売者は、例外なく登録販売者(人体)の従事登録を済ませています。登録販売者試験に受かったり実務経験を満たしていたりしても、従事登録をしなければ市販薬を販売することはできないためです。

ただ通常の従事登録で得られる資格は、「人用の薬の販売」です。そのため通常の従事登録を済ませた登録販売者は、動物用の医薬品を販売する資格がありません。動物用医薬品を販売できるようになるためには、動物用の従事登録を行う必要があります。

しかし、後でも説明していますが「人用の薬を販売できる登録販売者」については、ペットショップなどで勤務し始めた直後に動物用の従事登録を済ませることで、動物用医薬品登録販売者となることができます。

従事登録を申請するためには、薬を販売している店舗に従事している証明(雇用証明書など)が必要です。そのため動物用の医薬品を扱っている店舗に勤務し始めてからではないと、動物用医薬品の従事登録の申請ができないことを覚えておきましょう。

なお、動物用医薬品登録販売者の従事登録先は人用と異なります。例えば東京では、人用の登録販売者従事登録は福祉保健局(薬務課)に申請します。一方で動物用医薬品登録販売者は、産業労働局(食料安全課)に申請することになります。

具体的な申請先は自治体によって異なるため、動物用医薬品登録販売者を目指す際はあらかじめ申請先を調べておくことをおすすめします。

動物用医薬品登録販売者の試験に合格する必要はないのか?

同じ市販薬とはいっても、人用と動物用では大きく異なるように思えます。また登録販売者試験には、動物用医薬品についての項目がほとんどありません。

そのため「動物用医薬品登録販売者になるためには、通常の登録販売者試験とは別に試験を受ける必要がある」と思っている人が多いです。実際、過去には動物用医薬品登録販売者の試験が別途実施されていたこともありました。

ただ現在では、動物用医薬品登録販売者の試験は行われていません。登録販売者試験は、人用と動物用で一本化されています。そのため通常の登録販売者試験に合格している人であれば、誰でも動物用医薬品登録販売者の従事登録申請を行うことが可能です。

ペット業界で求められるのは正規の登録販売者

人用・動物用にかかわらず、登録販売者が薬を販売するためには管理者要件を満たしている必要があります。この条件を満たせなければ、研修中の扱いとなり薬を販売することができなくなります。

管理者要件を満たすためには、「人用の医薬品販売への従事」または「動物用医薬品販売への従事」した期間が過去5年以内に2年以上ある必要があります。

実際に以下は、東京の産業労働局(動物用医薬品登録販売者を管轄している機関)が掲示している登録販売者の管理者要件についての資料です。

登録販売者が管理者となるためには、「動物用医薬品の販売、または人用医薬品の販売に従事した期間が過去5年以内に2年以上は必要である」ことが記されています。そのため人用の医薬品販売において管理者要件を満たしている人は、動物用医薬品登録販売者としても管理者要件を満たすことになります。

一方で、人用の薬の販売経験が足りずに管理者要件を満たしていない登録販売者は、動物用医薬品も販売することができません。

ただ動物用医薬品は、それほど需要が高くありません。そのためペットショップなどでの動物用医薬品の売上は、他の商品に比べてかなり低いです。

このような環境でコストのかかる登録販売者を複数在籍させると、企業の経済的負担が大きくなります。そのためペット業界は、研修中の登録販売者を募集していないケースがほとんどです。

例えば以下は、愛知にある動物病院の登録販売者求人です。

ここには、応募資格の欄に「登録販売者」とだけ記載されており、「研修中可」とは記されていません。つまり、正規の登録販売者しか応募できないのです。そのため、現在研修中の登録販売者はペット業界の登録販売者求人には応募できないことを覚えておきましょう。

ペットショップで実務経験を積むことはできるのか?

ペット業界から出ている登録販売者求人は正規の登録販売者しか応募できないものの、ペット業界で登録販売者が管理者を目指すことはできます。

研修中の登録販売者が管理者要件を満たすためには、過去5年以内に2年以上、登録販売者・薬剤師の元で医薬品関連の仕事に従事する必要があります。

このとき動物用の市販薬を取り扱っている店舗には、必ず登録販売者または薬剤師が在籍しています。つまり薬を扱っているペットショップで働けば、実務経験を積むことができるのです。

そのため研修中の登録販売者が資格を活かしてペット業界で働きたい場合、動物用医薬品を扱っているペットショップなどに一般スタッフとして入社することをおすすめします。そうすることで、管理者要件における実務経験を積んだあと、正規の登録販売者としてペット業界で従事することが可能となります。

動物薬を扱う登録販売者の仕事内容

動物用医薬品はペットショップだけではなく、ホームセンターなどにも取扱があります。特にペットショップが併設されている店舗では、動物用医薬品を販売していることが多いです。例えば以下は、北海道のホームセンターの動物用医薬品売り場です。

ここには、ペット用品のコーナーに動物用医薬品が陳列されています。そのためホームセンターなどの業態では、人用の登録販売者としてだけではなく、動物用医薬品登録販売者としても働くことがあります。

ただ基本的に、動物用医薬品よりも人用医薬品の方が、圧倒的に売上が多いです。そのため人用と動物用の両方を扱う場合、人用医薬品の仕事が主な仕事となります。むしろ、動物用医薬品に関わる仕事はほとんどありません。

一方でペットショップなどでは、動物用の医薬品のみを取り扱うことになります。そのため動物用医薬品登録販売者として働きたいのであれば、ホームセンターなどではなくペットショップなどを選ぶといいです。

ペットショップで医薬品販売を行うメリット・デメリット

ペットショップの中には、動物用医薬品の取扱がある店舗があります。このような店舗では、登録販売者が動物用医薬品の責任者として働くことができます。

ただ動物用の医薬品はそれほど需要が高くないため、このような業態でも薬の販売に専念できるケースはほとんどありません。

またペットショップで薬を買う人のほとんどは、店頭で薬の効果についての相談をしません。動物は飼い主に症状を説明できないため、ペットに異常を生じたら動物病院へ連れて行く人がほとんどであるためです。店頭で市販薬を買うのは、症状や薬の効果などが分かっている場合のみです。

そのため登録販売者がペットショップで働く場合、薬の資格者としてではなく一般スタッフとしての業務が主な仕事になります。具体的な仕事内容としては、ペット用品の陳列・販売などを行います。生体を扱っている店舗であれば動物の世話や生体販売なども担うことになります。

・ペットショップで働くメリット

一般的にペットショップは、需要の高い子犬・子猫や小動物などの取扱が多いです。そのためペットショップで働くと小さな動物と触れ合うことになり、仕事を楽しく感じやすいです。実際にペットショップで働いている人の口コミには、「動物の世話が楽しい」「働きながら癒やされる」などの声があります。

またペットショップは、ペットと飼い主の出会いを提供する場です。良い出会いを提供できると、やりがいを感じることができます。

特に動物を購入した顧客の多くは、トリミングやペット用品の購入などのためにペットを購入した店へ再訪します。このとき売れた動物が大事にされていることが分かると、達成感や満足感を得ることができます。

さらにペットホテル事業も行っている店舗であれば、売れたペットのお世話を再びする機会もあります。ペットショップの仕事は、生体を販売して終了ではなく、動物や飼い主との関係が長く続くのです。このような点は、ペットが好きな人がやりがいを感じられるポイントです。

・ペットショップで働くデメリット

ただ、動物の世話は楽しいことだけではありません。糞尿の処理をしなければなりませんし、動物が死ぬリスクもあります。毎日世話をしている生体が死ぬと、ペットを亡くしたときのような強い喪失感を覚えます。

またペットショップの生体は、すべてが売れるわけではありません。人気のない種や成長した生体などは、売れ残ることもあります。動物好きであれば、選ばれない個体に感情移入して悲しみを覚えることでしょう。

さらにペットショップには、ノルマがあることが多いです。ペットショップが生体の販売を続けるためには、一定の利益を確保する必要があるためです。

ただ一般的な商品と違い、生体は営業的アプローチで販売することが難しいです。無理に購入を勧めて不適切な顧客に動物を販売してしまうと、ペットがつらい思いをすることになります。場合によっては、捨てられたり命を落としたりすることにもつながります。そのためペットショップのノルマは、達成するのが困難であるのが実情です。

動物病院での医薬品販売を行うメリット・デメリット

登録販売者が動物用医薬品を販売できるのは、ペットショップだけではありません。動物病院の中にも、動物用の市販薬を販売しているところがあります。

・動物病院で働くメリット

動物病院で働く場合もペットショップと同様に、薬の接客はほとんどありません。動物病院に訪れる人は、獣医師の診断を受けているためです。したがって動物病院で働く場合も、「薬の専門家」として活躍することは難しいでしょう。

ただ動物病院では、ペットショップのような販売ノルマがありません。また特定の動物の世話をし続けるわけではないため、生体の死に直接的に関わることもありません。

また、動物病院は日中営業・土日祝日が定休日であることが多いです。そのため動物病院で働くと、小売店ではほぼ不可能な土日休みを実現することができます。

実際に以下は、動物病院の登録販売者求人です。

ここには勤務時間が9~18時であり、土日祝が休みであることが記されています。動物病院で働くと、オフィスワークのような働き方を実現できます。

・動物病院で働くデメリット

ペットショップでは、生体のお世話をするため動物と触れ合う機会が多いです。一方で動物病院は、医師や看護師などの手伝いで動物と触れ合うことはあるものの、直接的なお世話をすることはありません。

このような点は、ペットショップ勤務を経験した人には物足りなく感じることがあるようです。そのためペットのお世話をしたいのであれば、ペットショップ勤務の方が向いているといえます。

動物用医薬品登録販売者のキャリアアップ方法

登録販売者がドラッグストアで働く場合、スタッフとしてスキルを積むことによって店長などに昇格できるチャンスがあります。ドラッグストアでは登録販売者が店舗業務全般に関わるためです。

一方でペットショップなどでは、薬が主な商品ではありません。そのためペット業界では、登録販売者資格のみで店舗の責任者になることは難しいです。

ただ登録販売者資格を入り口として、経験を積んだりペットショップの運営に必要な資格などを取得したりすれば「薬も扱えるペットショップの責任者」として活躍することが可能となります。

実務経験を積んで動物取扱責任者を目指す

ペット用品は、特別な許可がなくても販売することができます。一方で、生体を扱うためには、動物取扱責任者の要件を満たす必要があります。

動物取扱責任者は、生体取り扱いの実務経験を一定期間経験することによって要件を満たすことができます。ただ、ペット業界は以下のような業種に分かれています。

  • ペットショップ:動物の販売
  • ペットホテル:動物の保管
  • ペットしつけ教室:動物の訓練

このとき、実務経験を積んだ業種のみ責任者になることができます。例えばペットショップの責任者となるためには、ペットショップでの実務経験が必要です。ペットホテルの業務経験をいくら積んだとしても、ペットホテルで責任者となることはできても、ペットショップの責任者となるための実務経験とは認められません。

実際に以下は、東京都の福祉保健局が掲示している動物取扱責任者の要件です。

ここには、「動物取扱責任者になるためには、責任者となる業態と同一種別の実務経験が半年以上ある必要があること」が記されています。そのため登録販売者がペット業界でキャリアアップしたいのであれば、希望する業種の経験を積む必要があります。

資格を取得してキャリアアップを目指す

また、以下のような環境省の認める資格を取得することによっても動物取扱責任者になることができます。

ここに記載されているような資格を取得すると、実務経験期間が足りなくても動物取扱責任者となることが可能です。

動物関係の資格を持っているということは、専門知識を保有していることを意味します。そのため動物関係の資格を取得すると、経験を積んで動物取扱責任者になる場合よりもペット業界での転職・キャリアアップが有利になります。

実際に以下は、大阪のペットショップの求人です。

ここには、動物関係の資格を保持している人を優遇していることが記されています。そのため登録販売者がペット業界で活躍したいのであれば、動物取扱責任者となれる資格を取得することをおすすめします。

経験を積んで独立する

一般的に、ペットショップスタッフは給料が低いです。例えば以下は、神奈川・横浜のペットショップの求人です。

ここには正社員の給与が月給183,000円~であると記載されています。賞与を2ヶ月分の2回支給(合計4ヶ月分)と仮定すると、年収は「183,000円×12ヶ月+183,000円×4ヶ月分=292万8000円」となります。

これに対して神奈川県の平均年収は約530万円、年収中央値は約470万円です。このことからペットショップの年収は、年収の平均・中央値よりも100万円以上安い賃金であることがわかります。ペットショップ勤務では、高収入を得ることは難しいのです。

そのためペット業界で収入を上げるためには、独立するのが効率的だといわれています。

登録販売者がペットショップを開業すれば、他の店よりも扱う薬の多いペットショップを営むことができます。薬を扱っているペットショップは少ないため、他のペットショップと差別化を図ることが可能となるのです。

そのため登録販売者がペット業界でキャリアアップしたいのであれば、独立を視野に入れて経験・知識を積むことをおすすめします。

転職サイトを利用してペットショップの登録販売者求人を探す

登録販売者は人用の医薬品だけではなく、動物用の医薬品も取り扱うことができます。そのため登録販売者の資格は、ペット業界で活かすことも可能です。

ただ動物用の市販薬は、人用のものに比べて種類が少なく需要が低いです。そのため動物用の市販薬を取り扱っているペットショップは少ないです。つまり、ペット業界の登録販売者の募集は希少なのです。

このような状況では、適切な求人を自力で探すことは困難です。そのため登録販売者資格をペット業界で活かしたいのであれば、転職サイトを利用しましょう。

転職サイトを活用すると、担当コンサルタントがあなたに合った求人を探してくれます。また「登録販売者保有者」という価値を会社側にアピールしてもらうこともできるため、通常よりも好条件で転職できる可能性が高くなります。

このとき転職サイトは、担当者によって力量や紹介できる案件などが異なります。そのため転職サイトは、3社以上を同時に利用するようにしましょう。そうすることで、あなたに合った求人を見つけ出しやすくなります。

まとめ

一般的に登録販売者は、人用の薬しか扱えないと思われがちです。ただ実際には、登録販売者は動物用医薬品を販売することもできます。登録販売者資格は、ペット業界で活かすこともできるのです。

ペット業界で働くと、日常的に動物と触れ合うことができます。そのため動物が好きな人は、やりがいのある充実した業務に就くことができます。

ただペット業界で薬を扱っている店舗はそれほど多くありません。ペット業界の登録販売者求人はかなり少ないのです。

したがって登録販売者がペット業界へ転職したいのであれば、転職サイトを利用しましょう。そうすることで希望の求人を見つけやすくなり、動物に囲まれて楽しく仕事ができるようになります。


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