登録販売者は薬剤師に次ぐ薬の専門家です。そのため登録販売者は、薬の専門家として活躍するために取得する人が多い資格です。
ただ登録販売者の主な就職先であるドラッグストアでは、医薬品以外の商品も取り扱っています。そのためドラッグストアに就職すると、医薬品に関わる仕事ができないケースが多いです。
市販薬のスペシャリストとして働きたくて登録販売者になった人の中には、このような環境を退屈に感じることもあるでしょう。「こんなはずではなかった」と思い、登録販売者資格を取得したことを後悔してしまうことになりかねません。
ただ登録販売者はドラッグストア以外に、漢方薬局で働く選択肢もあります。漢方薬局はドラッグストアよりも接客頻度が多く、より専門的な応対をする必要があります。そのため登録販売者が漢方薬局で働くと、薬の専門家として顧客の役に立つことができます。
そこで、「登録販売者が漢方薬局で働く際の仕事内容、と楽しく仕事を続けるための求人選び」について解説していきます。
もくじ
登録販売者の漢方薬局での働き方
現在の日本では、西洋薬が主流となっています。そのためドラッグストアなどの薬の取扱店では、薬のほとんどが西洋薬となっています。当然、ドラッグストアでの薬の接客は西洋薬に関することが多いです。
西洋薬では、起こっている症状に効く薬を選びます。例えば頭痛がある人には、鎮痛剤を案内するでしょう。一方で風邪によって頭痛だけではなく鼻の症状も出ている場合、鎮痛成分と抗ヒスタミン剤などが配合されている総合感冒薬を選ぶことになります。
このような薬の案内は、症状と成分の作用を理解していれば問題なく対応することができます。そのため登録販売者試験に受かっている人であれば、容易に接客できるはずです。
これに対して漢方薬は、症状だけではなく体質に適した薬を選ぶ必要があります。
当然のことながら顧客は、「自分が漢方医学におけるどのタイプの体質なのか」を知りません。そのため漢方薬の接客をするためには、顧客の見た目や質問などを通して顧客の体質を見極める必要があります。
このとき体質に合わない漢方薬を使用すると、効かなかったり副作用を生じたりしやすくなります。そのため場合によっては、顧客が求める薬とは別の漢方薬を勧める必要性も生じます。
漢方薬の接客は、西洋薬よりも難易度が高いです。そのため漢方薬が主力商品である漢方薬局では、ドラッグストアよりも高度な知識と接客力が求められます。
薬日本堂など、登録販売者は漢方の調合に携われるのか?
漢方薬局には大きく分けて、「既存の漢方薬を販売している店舗」と「生薬を配合して漢方薬を作り、顧客に薬を販売する店舗」の2種類があります。
これらはどちらも、漢方薬を市販しています。そのため既存の漢方薬の販売だけではなく、漢方薬の調合も登録販売者が行えると思われがちです。
ただ登録販売者が許可されているのは、一般用医薬品を顧客に販売することだけです。具体的にいうと登録販売者が販売できるのは「第二類医薬品」「第三類医薬品」とパッケージに記載のある薬のみです。登録販売者は、漢方薬の調合はできません。
しかしながら、どちらの業態でも漢方相談員として働くことはできます。例えば以下は、漢方調合を行う漢方薬局を展開している薬日本堂の求人です。
ここには、登録販売者資格を漢方の相談員として活かせることが記されています。登録販売者は漢方の調合はできないものの、漢方薬局で相談員として働くことができるのです。
漢方の調合そのものが行えなくても、調合のための接客に携わることができます。そのため漢方を調合している漢方薬局で働くと、より専門的な知識が身につきます。
登録販売者が漢方薬局で働くメリットとデメリット
ドラッグストアでの薬の接客は、数分程度で終わることがほとんどです。西洋薬は症状に対して使用する薬であるため、顧客の症状を聞けば薬が案内できるためです。
またドラッグストアは、商品の品出しにかかる時間が長いです。そのためドラッグストアでは、薬の接客にそれほど時間を割けないところが多いです。
これに対して漢方薬局では、接客時間が長くなりやすいです。適切な漢方薬を販売するためには、さまざまな基準を用いて顧客の体質・症状を見極める必要があるためです。
実際に以下は、東京や大阪などの全国に店舗を展開する漢方薬局の登録販売者求人です。
ここには一人の顧客に対して、短くても1時間は接客することが記されています。そのため漢方薬局で働くと、薬の専門家としてのやりがいがある仕事に就くことができます。
また漢方薬局に訪れる顧客には、「更年期障害に長く悩んでいる」「生理不順が辛い」「イライラが収まらない」「不妊体質を改善したい」など慢性的な症状に悩んでいる人が多いです。
西洋薬は起こっている症状を鎮める効果が高い一方で、慢性症状にはほとんど効果を発揮しません。そのため慢性的な症状のある人は、ドラッグストアの西洋薬では改善せず悩んでいることが多いです。このような人が救いの手を求めて漢方薬局に訪れるのです。
漢方薬は西洋薬とは反対に、慢性症状の改善が得意分野です。そのため顧客に適切な漢方薬を勧めると、長年の悩みを解決することができます。
「何をしても良くならない」と思っていた症状が改善すると、強い感動を覚えます。漢方薬や相談を受けてくれた人を信頼し、「次もこの人に相談しよう」と思います。そのため勧めた漢方薬が効くと、顧客から感謝されるだけではなくあなたに固定客がつくのです。
このような環境は、薬の専門家として働きたい人には大きなやりがいとなります。そのため接客や人に感謝されることが好きな人は、漢方薬局が向いているといえます。
専門的な知識を得てスキルアップできる
さらに漢方薬局では、自分の知識を高めることもできます。
ドラッグストアで扱っている漢方薬は、認知度が高いものばかりです。中には、葛根湯や防風通聖散などのテレビCMが放映されているような商品しか販売していない店舗もあります。
これに対して漢方薬局では、ドラッグストアでは取り扱っていないような漢方薬も販売することになります。また漢方を調合する漢方薬局で働くためには、生薬の効能・効果に関する深い知識が必要です。
中には、煮出して服用してもらう薬を販売している漢方薬局もあります。このような店舗で働くためには、漢方薬の取扱方法を熟知している必要があります。そのため漢方薬局で働くと、ドラッグストアでは得られない専門的な知識を得ることができます。
また適切な漢方薬を勧めるためには、顧客の身体の状態をうまく聞き出して体質・症状を見極める必要があります。そのため漢方薬局で働くと、接客スキルも向上します。
このように漢方薬局では、ドラッグストアでは得られない知識・スキルを得ることができます。そのため登録販売者が漢方薬局で働くと、「薬の専門家」としてのスキルを向上させやすくなります。
ドラッグストアでは不可能な日曜日定休を実現できる
ドラッグストアは基本的に、土日祝日も営業しています。また休日は来客数の多い店舗がほとんどです。そのためドラッグストアで働くと、土日祝日を定休とすることはできません。
これに対して漢方薬局は、定休日が日曜の店舗が多いです。例えば以下は、奈良の漢方薬局の求人です。
ここには、日曜祝日が定休であることが記されています。漢方薬局で働くと、ドラッグストアでは不可能な日祝休みを実現できるのです。そのため漢方薬局は、家庭の事情などで日曜日に休みが欲しい人に向いています。
なお大手の漢方薬局では、ドラッグストアと同様に日祝を営業しています。例えば以下は、東京や大阪などの全国に店舗を展開する漢方販売会社の求人です。
ここには、休日はシフト制であることが記されています。つまり日曜日・祝日にも出勤となる可能性があるのです。そのため日・祝に休みが欲しい場合は、個人や中小企業などが経営する漢方薬局を選びましょう。
漢方薬局での勤務に向かない人とは?
登録販売者が漢方薬局を選ぶと、薬の専門家としてやりがいのある職場で働くことができます。ただ漢方薬局にはその性質上、向かない人もいます。具体的には、以下のような人は漢方薬局に向かないので注意が必要です。
・営業に抵抗を感じる人
漢方薬局の相談員だと、顧客の身体の状態をヒアリングするのが仕事です。ただ病院などと異なり、漢方薬局ではカウンセリングでは報酬が発生しません。顧客の相談を受けるだけでは、店舗に利益が出ないのです。
店舗が儲けられなければ、従業員が働くことはできません。そのため漢方薬局では顧客の相談を受けるだけではなく、ヒアリングの結果を商品販売につなげる必要があります。中には、販売目標・ノルマが課せられるケースもあります。
ただ「薬」という商品の性質上、「頼み込み」などの強引な押し売りをすることはできません。体質に合わない薬を販売してしまうと副作用のリスクが高くなるためです。そのため漢方薬局で課せられるノルマは、簡単に達成することはできません。
また漢方薬局の顧客は、店舗ではなく相談員につきます。漢方薬はカウンセリングの後に販売される性質のものであるためです。そのためカウンセリングの質が良いと、あなたに顧客がついて安定した売上を確保できます。
一方でカウンセリングの質が悪いと、売上にはつながりません。漢方薬局の相談員は、営業としての面も持ち合わせているのです。
そのため顧客に商品を勧めて販売することに罪悪感を覚えるタイプの人は、漢方薬局の相談員に向かないといえます。
・早期にキャリアアップしたい人
漢方薬局の多くは、少人数で運営しています。実際に以下は、富山県の漢方薬局の求人です。
ここには、従業員数が全体で3人であることが記されています。このような企業では、経営を拡大させたり店舗を運営・管理している人が退職したりしなければ、役職ポストが空きません。そのためいくら経験を積んでスキルアップしても、簡単に昇進することはできません。
また漢方薬局は、ドラッグストアなどに比べて求人がかなり少ないです。実際に、あなたが住んでいる地域にある漢方薬局は数える程度でしょう。漢方薬局は店舗数そのものが少ないため、求人も少ないのです。
このような環境下では、転職によるキャリアアップも難しいです。したがって漢方薬局で働く場合、早期のキャリアアップを狙うことは諦めるのが無難です。
登録販売者が漢方相談員となる求人選びのコツ
漢方薬局は登録販売者が薬の専門家として活躍できる業態です。そのため接客が好きな人や専門知識を向上させたい人などは、漢方薬局での勤務をおすすめします。
ただ一言に「漢方薬局」といっても、店舗の性質はさまざまです。中には、漢方薬の接客がほとんどできないところもあります。そのため漢方薬局で働く場合は、自分に合った求人を探すことが大切です。
下見をして店舗の雰囲気を確認する
大手漢方薬局では、従業員数が多く人の入れ替わりもあります。そのため人間関係の問題を生じても、時間の経過とともに解決しやすくなります。
一方で小規模の漢方薬局では、従業員数が少なく人の入れ替わりもほとんどありません。そのため従業員同士のトラブルが起こった場合、問題が長期化しやすいです。
特に相性の悪い従業員がいると、人間関係の問題に長期間悩まされることになります。したがって小規模の漢方薬局で働きたい場合は、求人が出ている店舗を必ず下見して従業員の質などを確かめることが大切です。
また「漢方薬局」と銘打っていても、ほとんど漢方の販売に携われないケースもあります。「街の小さな薬局」となっている場合です。
例えば以下は、北海道の町中にある漢方薬局の画像です。
この店舗では、店舗の半分以上が化粧品や日用品などで占められています。また漢方薬は、カウンターの後ろに2棚分陳列されているのみでした。以下が実際の写真です。
このような店舗で働くと、思うように接客ができず物足りなく感じます。そのため小規模の漢方薬局で働く場合は、必ず下見をしましょう。
転職サイトを活用して好条件の求人を選ぶ
これまでに述べたように、薬の知識を仕事に活かしたい登録販売者は、漢方薬局の相談員が向いています。
ただ、漢方薬局の求人は少ないです。中には、求人が一般公開されていないケースもあります。このような状況の中、自分に適切な漢方薬局の求人を探すことは困難です。
そのため漢方薬局への転職を考えているのであれば、転職サイトの活用をおすすめします。
転職サイトを活用すると、担当コンサルタントがあなたに適した求人を探してくれます。中には、非公開の求人を紹介してくれることもあります。
このとき担当によって力量は異なり、紹介できる案件が違ってきます。そのため転職サイトは、3社以上登録して求人を探しましょう。そうすることで、より条件の良い求人が見つかりやすくなります。
まとめ
漢方薬局で働けば、ドラッグストアよりもじっくり接客して薬を販売できます。そのため薬の知識を活かして顧客の役に立ちたい人は、漢方薬局での仕事を楽しく感じられます。
また漢方薬局では、高い接客スキルと専門知識が必要とされます。そのため登録販売者が漢方薬局で働くと、薬の専門家としてスキルアップすることもできます。
ただ漢方薬局の多くは少人数で運営しており、店舗数も少ないです。そのため漢方薬局の求人は、ドラッグストアに比べてかなり少ないです。
そこで漢方薬局で働きたいのであれば、転職サイトを利用して求人を探しましょう。そうすることで漢方薬局の求人を見つけやすくなり、漢方薬の専門家として活躍できるようになります。
登録販売者が転職を行い、求人を探すにしても自分一人で行うのは現実的ではありません。そこで、ほとんどの人が転職エージェントを活用します。
転職サイトを利用すれば、「年収の交渉」「希望の勤務地」「労働時間の調節」を含めてすべて代行してくれるようになります。
しかし、転職サイトによって「地方在住者でも事前面談に対応している」「40代以上でも利用可能」など特徴に違いがあります。人気の転職エージェントの中でも、これらの特徴を理解したうえで、どの転職サイトを利用すればいいのか検討しなければいけません。
そこで当サイトでは、転職サイトごとの特徴について解説しています。転職では2~3社以上に登録して活動するのが基本になるものの、どの転職エージェントを利用すればいいのか理解したうえで以下のページから比較検討し、転職サイトへ登録するようにしましょう。