登録販売者は市販薬の取扱がある店であれば、どこでも働くことができます。

例えば市販薬は、ドラッグストアだけではなくコンビニエンスストアやスーパーなどでも販売されています。そのため登録販売者は、スーパーなどの一般小売店で働くこともできるのです。

このときドラッグストアとスーパーは、同じ小売業です。そのため扱う商品の種類は異なるものの、一般スタッフの仕事内容はほとんど変わりません。

ただ登録販売者として就職した場合、ドラッグストアとスーパーでは働き方が異なります。そのため自分に合った企業で働くためには、ドラッグストアとスーパーの違いを理解しておく必要があります。

そこで、登録販売者がスーパーマーケットで働く際のメリット・デメリットと、適切な求人の選び方について解説していきます。

登録販売者はスーパーでどのような働き方をするのか?

ドラッグストアでは、店舗の総合レジ(中央レジ)で薬を買うことができます。これに対してスーパーでは、薬専用レジでしか医薬品の会計ができない店舗が多いです。これは、医薬品の店舗販売業の許可を薬品コーナーのみで取得しているためです。

店舗販売業の許可を一区画のみで申請している店舗が総合レジ(薬品販売の許可を得ていないエリア)で薬を販売すると、法律違反となります。

場合によっては、店舗販売業の許可が取り下げられるケースもあります。そのためスーパーなどのドラッグストア以外の業態で登録販売者が働く場合、基本的に薬品コーナーでのみ仕事をすることになります。

例えばドラッグストアでは、薬以外の品出しや総合レジの管理、一般スタッフのシフト管理を含め店舗業務すべてを登録販売者は担当します。

これに対してスーパーでは、薬カテゴリの品出しや登録販売者のシフト管理などの「医薬品に関する仕事」のみを行うことになります。そのためスーパーでの登録販売者の業務量は、ドラッグストアに比べて少ないことが多いです。

ただ店舗の来客数が多いピークタイムなどは、総合レジや日用品などの品出しに応援へ行くことがあります。この場合、医薬品レジには呼び出し用のベルなどを設置し、薬品の顧客が来たらすぐ対応できるように準備しておく必要があります。

スーパーで働くためには2年以上の実務経験が必須

研修中の登録販売者が実務経験を積むためには、正規の登録販売者または薬剤師が勤務している時間に働く必要があります。

ただスーパーの薬品コーナーの売上は、それほど多くありません。そのため、仕事量も少ないです。

このような状況で複数名の従業員に薬品コーナーの勤務をさせると、店舗の運営コストが高くなって採算が取れなくなります。そのためスーパーは、研修中の登録販売者を雇っていないことがほとんどです。

実際に以下は、兵庫のスーパーの登録販売者求人です。

ここには、応募資格の欄に「管理者要件を満たしていることが必須である」と記されています。つまり、研修中の登録販売者は応募できないのです。そのため実務経験が足りないのであれば、スーパー以外の業態を選びましょう。

スーパーでは一般スタッフとして実務経験を積むことができない

ドラッグストアは、店舗全体で医薬品の店舗販売業を取得しています。そのため基本的にドラッグストアでの勤務は、実際の業務内容にかかわらず実務経験として認められるケースがほとんどです。このことからドラッグストアは、研修中の登録販売者が一般スタッフとして勤務し、実務経験を積みやすい環境となっています。

これに対してスーパーでは、店舗販売業の許可を取得しているのが店舗の一区画のみです。同じ屋号の店舗であっても、店舗販売業の許可範囲を超えたエリアは「薬の取扱いがある」と認められません。

つまり薬を扱っているスーパーであっても、薬コーナー以外のエリアで働いている人(=一般スタッフ)は、登録販売者としての実務経験を積めないのです。

そのためスーパーでは、研修中の登録販売者が一般スタッフとして入社しても経験を積むことはできません。

登録販売者がスーパーへ転職するメリット

ドラッグストアは薬が主力商品です。そのためドラッグストアは多数の登録販売者を雇用しており、登録販売者の主な就職先の一つとなっています。

ただ薬の仕事に従事したくて登録販売者資格を取得した人は、ドラッグストアでの勤務を物足りなく感じることが多いです。ドラッグストアでは、あまり薬の仕事に携われないためです。

これに対してスーパーでは、「薬の専門家」としての仕事に専念しやすい環境となっています。

医薬品販売に携わる時間が長くなる

基本的にドラッグストアでは、複数の登録販売者または薬剤師が在籍しています。そのため、医薬品を販売できる資格者が複数名同時に勤務していることも多いです。

このような環境では、自分以外にも薬の専門家が存在することになります。そのため医薬品の業務に関わる機会が少なくなります。

特に薬剤師が在籍している場合、薬に関係する仕事のほとんどを薬剤師が担うことになります。このような場合、登録販売者が薬の専門家として活躍する機会はほとんどありません。

これに対してスーパーは、薬剤師を雇用していません。薬剤師は雇用コストが高く、スーパーの薬の売上では採算が取れないためです。そのためスーパーでは、薬の専門家が登録販売者しか在籍しない状態となります。

また薬の売上が高くないことから、登録販売者の雇用数を必要最低限に留めている店舗がほとんどです。中には、時間あたりの資格者数が1人となる店舗もあります。

このような環境では、医薬品に関する業務のすべてをあなたが担うことになります。スーパーや家電量販店で登録販売者として働くと、薬の専門家として活躍しやすくなるのです。

一般スタッフよりも給料が高くなる

登録販売者は市販薬を販売できる専門職です。そのため基本的には、一般従事者よりも給与が高く設定されています。

例えば以下は、大手スーパーの総合職(一般スタッフ)の求人です。

ここには、入社時の職位が社内基準のJ1からスタートすることが記されています。また以下は、総合職の階級別の年収例です。

 

ここには、入社時のスタート年収が275万円であることが記されています。これに対して以下は、同じ企業の登録販売者求人です。

ここには社内資格がJ3からスタートし、年収350万円となることが記されています。またこれに加えて、登録販売者手当が月5,000円給付されることも記載されています。同じ企業であっても、登録販売者は一般スタッフより高めの評価・給料で働くことができるのです。

販売ノルマがないところが多い

ドラッグストアは製薬会社と交渉して仕入額を下げたり、原価の低い自社製品を開発したりして利益を増やしています。そのためドラッグストアでは、製薬会社との交渉を有利にしたり製品開発を促進したりするために販売ノルマが課せられることが多いです。

中には、ノルマ達成が昇格評価の基準となっているところもあります。そのためドラッグストアでは、昇進のために自分でノルマ商品を購入している人が多いです。

これに対してスーパーは、薬が主力商品ではありません。そのため自社製品の開発を行っていないところが多いです。

また薬の売上割合がそれほど高くないため、ドラッグストアで行われるような「大量仕入れによる値引き交渉」も行われにくいです。このようなことから、スーパーは販売ノルマがないことがほとんどです。そのためドラッグストアの販売ノルマをつらく感じる人は、スーパーでの勤務がおすすめです。

登録販売者がスーパーで働くデメリットとその対策

スーパーはドラッグストアよりも、登録販売者が薬の専門家として落ち着いて働きやすい環境です。ただ一方で、スーパーで登録販売者が働くことにはさまざまなデメリットもあります。

デメリット・リスクを知らずに入社すると、「こんなはずではなかった」となりストレスを感じやすくなります。その結果、辞めることにつながり経歴に傷をつけてしまいます。そのためスーパーで働きたい登録販売者は、デメリットやリスクなどについても理解しておくことが大切です。

キャリアアップの道は限られている

登録販売者がドラッグストアに勤めると、薬以外の仕事にも従事することになります。そのため、医薬品に関わる仕事に携わる時間は短いです。

ただその分だけ、店舗運営に関わるさまざまな業務スキルが向上します。その結果、昇進して店長となることができます。店長を経験すると、エリアマネージャーやバイヤーなどを目指すことができるようになります。

これに対してスーパーでは、薬品コーナーの業務が登録販売者の主な仕事です。薬に関わる時間は長い一方で、店舗運営に関する知識・スキルが向上しないのです。そのためスーパーで登録販売者の仕事だけに従事していると、店舗の管理者(=店長)になることができません。

このとき登録販売者であっても、食品類の取扱方法や販売方法などを習得すると店長となることが可能です。ただこのようなスキルを磨くためには、薬の仕事から離れて経験を積む必要があります。

前述のように、薬品コーナー以外での仕事は実務経験にカウントされません。そのため登録販売者がスーパーで店長を目指すと、実務経験不足となって研修中に格下げとなるリスクがあります。

また登録販売者の資格を維持しながらキャリアアップしたいのであれば、薬品カテゴリのバイヤーや薬担当のエリアマネージャーなどを目指すことが可能です。

ただスーパーは薬の売上が低いため、これら役職の数は少ないです。そのため環境や状況などによっては、昇進が叶わないことがあります。スーパーは登録販売者がキャリアアップしづらい業態なのです。

ただ中には、登録販売者でもキャリアアップしやすい求人もあります。例えば以下は、広島にあるスーパーの登録販売者求人です。

ここには、登録販売者が医薬品販売を入り口として店長やスーパーバイザーなどを目指せることが記されています。このような表記のある求人を選ぶと、登録販売者でもキャリアアップに必要なスキルを身につけて昇進・昇格することが可能となります。

店舗の方針によっては実務経験が不足することがある

前述のように管理者要件における実務経験を積むためには、店舗販売業を取得しているエリア(薬品コーナー)で勤務する必要があります。そのため薬品コーナー以外で働いた時間は、実務経験とは認められません。

ただ、薬品の仕事に携わった時間のみを厳密に実務経験として申請することは不可能なのが実態です。

例えば「登録販売者だから薬以外の仕事をしない」ということはできません。このようなスタンスを貫くと、他の従業員や顧客などからの信用を失います。

そのため薬の専門家として就職したとしても、店舗が忙しい場合は一般スタッフの仕事を手伝うことになります。

ただ、このような忙しい状況で「薬品コーナーから離れた時間」を厳密に記録しておくことはできません。そのため他業務のフォローを行った時間も、登録販売者としての勤務として報告している店舗がほとんどです。

多くの場合、薬以外の仕事をフォローすることがあっても、薬品コーナーを主に見ているのであれば実務経験として認められることがほとんどです。保健所が店舗内での勤務状況を細かく把握することはできないためです。

ただこのとき、内部告発や保健所の査察などによって登録販売者の主な仕事が一般スタッフと同様であることが発覚した場合は、注意を受ける可能性が高いです。

場合によっては、過去の勤務が実務経験として認められず研修中になったり、店舗販売業の許可が取り消しとなって薬売り場がなくなったりするリスクがあります。

そのため登録販売者として長く働き続けたいのであれば、薬品売り場で従事させてもらえるかを事前に確認することが大切です。

休み・休憩を取れないときがある

前述のようにスーパーは、登録販売者のシフトをギリギリで回していることが多いです。このような環境でいつもと違う日に休みを取ろうとすると、他の資格者に負担がかかります。スーパーは、ドラッグストアよりもイレギュラーな休みが取りにくいのです。

また登録販売者が一人勤務となっている場合、休憩時間も確保しにくくなります。

基本的に、休憩によって登録販売者が売り場に不在となる時間は、薬コーナーを閉めなければなりません。登録販売者が勤務していない時間に薬品コーナーを開けるのは薬機法違反です。

ただ実際には、休憩によって売り場に資格者がいなくなっても、薬コーナーを開けたままにしている店舗がほとんどです。休憩時間に薬の接客があると呼び出しがかかり、休憩を中断して薬品コーナーに戻ることになります。

実際に私が登録販売者として勤務しているとき、退職者が出たことによって日中勤務の登録販売者が自分一人だけになった時期がありました。休憩の際には薬コーナーを閉めず、接客の呼び出しがかかったら食事中でも駆けつけるようにしていました。これは私の意志ではなく、当時の店長からの要請でした。

このとき、接客によって消費した休憩時間は後で補填することができました。ただ店舗によっては労基法違反であるにもかかわらず、休憩時間の補填を認めていないところもあります。

このような事態を避けるためにも、スーパーで働く際には下見をして十分な数の登録販売者が働いているかどうかを確認することが大切です。

具体的には、薬品レジに掲示されている店舗管理に関する事項を確認しましょう。以下は、実際のスーパーの掲示物の画像です。

 

ここには、2人の登録販売者が資格者として勤務していることが記されています。このような店舗では勤務している登録販売者が少なく、休みや休憩などが取りにくいです。

そのためスーパーで快適に働きたい場合は、転職時の店舗見学で薬品レジの掲示物を確認して、十分な数の登録販売者が在籍しているかどうかを確認しましょう。

登録販売者がスーパーに就職するための求人選びのコツ

スーパーは登録販売者が薬の専門家として働きやすい環境です。販売ノルマもなく、薬の仕事に専念することができます。

ただ求人選びを誤ってしまうと、ストレスの溜まりやすい環境で働くことになり、退職してしまうことにもつながります。そのため登録販売者がスーパーで働く際には、あなたに合った求人を探すことが大切です。

イオングループなど、研修制度が充実している企業はキャリアアップしやすい

前述のようにスーパーは、登録販売者がキャリアアップしにくい業態です。特に地方の小さなスーパーでは、キャリアアップ先のポストが少ないです。そのため、希望通りのキャリアを描くことは難しいです。

ただ店舗数や売上高などが多い大企業では、キャリアアップ先のポストも多くなります。また大企業は、キャリアアップに必要なスキルを磨ける研修制度なども充実していることが多いです。そのためスーパーでキャリアアップしたい場合は、イオングループなどの大手企業を選ぶことが大切です。

実際に以下は、イオングループのスーパーの登録販売者求人です。

ここには研修システムが充実しており、登録販売者がキャリアアップできる道が用意されていると記されています。このような求人を選ぶと、登録販売者でもスーパーでキャリアアップを実現しやすくなります。

転職サイトを利用して条件の良い求人を探す

またスーパーでは、登録販売者のシフトのほとんどをパート・アルバイトで回しています。そのため、正社員の登録販売者求人はかなり少ないです。

このような環境であなたに適した求人を自力で探し出すことは難しいです。そのため登録販売者資格を活かしてスーパーで働きたいのであれば、転職サイトを利用しましょう。

転職サイトを活用すると、担当コンサルタントがあなたに合った求人を探してくれます。また企業との交渉も行ってくれるため、自分だけでは応募できないような求人にも挑戦しやすくなります。

このとき、担当となる転職コンサルタントには力量差があります。そのため転職サイトは3社以上を同時に利用しましょう。そうすることで、よりあなたに適切な求人を見つけやすくなります。

まとめ

スーパーは登録販売者が薬の仕事に専念しやすい業態です。販売ノルマもないため、落ち着いて仕事に従事できます。そのため正規の登録販売者は、ドラッグストアだけではなくスーパーも視野に入れることをおすすめします。

ただスーパーは薬が主力商品ではないため、資格者数をギリギリで回しています。そのため店舗の状況によっては、休みや休憩などを取りにくくなることがあります。

また登録販売者としての仕事だけでは店舗運営に関するスキルを習得できないため、キャリアアップしにくいです。そのため求人選びを誤ると、スキルを磨けず昇進が叶わなくなります。

そのためスーパーで働きたいのであれば、転職サイトを利用して求人を探しましょう。そうすることで条件の良い求人を見つけることができ、キャリアアップの実現が可能となります。


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