現在では平均寿命が延びており、定年後の人生が長くなっています。そのため、定年退職後も長く働いて経済的な安定を目指す人もいるでしょう。

ただ、高齢になると体力を要する仕事に就けません。そのため「なるべく長く働き続けたいが、体力が続くか心配である」というミドル・シニア登録販売者は多いです。

それでは、登録販売者業務は高齢になっても続けられる仕事なのでしょうか? また、登録販売者が定年後に働くことは可能なのでしょうか?

ここでは、60代や定年後の登録販売者が働く方法と、定年後に働き続けられる求人選びのコツについて解説していきます。

登録販売者は定年後も続けられる仕事

登録販売者は市販薬を販売できる資格であるため、薬の販売店(=小売店)で需要が高いです。そのため、小売業界は登録販売者の主な就職先なっています。

このとき、一般的に小売業界の仕事は体力を使います。納品作業・品出し作業が毎日発生しますし、定期的に陳列を変更しなければなりません。

このような作業では、多数の商品が入ったコンテナやダンボールなどを持ち運ぶことになります。そのため、年齢を重ねて体力が低下した人は、小売店舗での仕事をつらく感じやすいです。

ただ登録販売者の場合、一般的な小売店スタッフよりも体力を使わない仕事に就くケースが多いです。登録販売者は一般従事者(無資格のスタッフ)と異なり、薬の専門家として役割があるためです。

例えば登録販売者が顧客から健康相談を受けたら、顧客が納得するまで時間をかけて説明しなければなりません。また薬を見ている顧客がいれば、声をかけて適切な薬を勧めることも求められます。そのため、登録販売者は一般従事者よりも品出しなどにかける時間割合が少なくなります。

また、薬は他の商品に比べて重量が軽いです。そのため薬部門の担当となると、納品・品出しに要する体力が少なく済みます。

実際に私が過去に働いていた職場の中には、私が入社するまで「60代以上の資格者のみで運営していた店舗」があります。この店舗は薬の売上が多く、重量のある荷物を扱うこともありませんでした。

登録販売者資格を持っていれば、小売店勤務であっても体力を使わない仕事に就けるのです。

登録販売者であれば60歳以上の定年後でも働ける

なお、登録販売者資格そのものには定年の概念がありません。そのため会社勤めで定年を迎えた後でも、登録販売者の資格者として働くことが可能です。

このとき前述のように、登録販売者業務は体力の要らない仕事が多いです。そのため、登録販売者であれば定年を迎えた後も仕事を続けやすいです。

また会社からしてみれば、登録販売者の資格保有者を雇うだけで取扱商品(=市販薬)を増やすことができます。

特に、市販薬販売業務の経験が豊富なシニア登録販売者であれば、接客に安心感があります。そのため固定客をつけやすくなり、店舗の人気・評価を高くすることを期待できます。登録販売者資格を持っていれば、定年退職後でも現役として働くことができるのです。

実際に、私が勤めていた店舗には70代の登録販売者が働いていました。この登録販売者は元正社員で、再雇用制度を利用してフルタイムで勤務していました。

薬販売に関わっていた期間が長いため知識が豊富であり、固定客が何人もついていました。また、元正社員であるため会社の制度や会社が求めることなどを熟知しており、体力仕事に就かなくても他スタッフから頼りにされていました。

登録販売者としての経験があれば、定年後のシニアであっても活躍することが可能となるのです。

定年を迎えてから登録販売者資格を取得できるか?

このとき、中には定年後の就業のために登録販売者の取得を考えている人もいるでしょう。登録販売者の受験資格には年齢制限がないため、定年後であっても新しく登録販売者資格を取得することは可能です。

ただ、登録販売者資格には「正規」と「研修中」の2種類の状態があります。一般的に「登録販売者」は正規の資格者を指し、自分の責任で一般顧客に薬を販売できます。

一方で研修中の登録販売者は、正規の登録販売者や薬剤師などが勤務している状況下でないと薬を販売できません。

正規の登録販売者となるためには、過去5年以内に2年以上の市販薬販売業務の経験が必要となります。つまり、登録販売者試験に受かるだけでは正規の登録販売者にはなれないのです。

ただ研修中の登録販売者は一人で薬を販売できないため、正規の資格者に比べて需要が低いです。そのため研修中のシニア登録販売者だと、通える範囲内に求人がない可能性があります。

このとき、中にはシニア歓迎のドラッグストア求人もあります。例えば以下は、東京や神奈川、千葉などに店舗を展開するドラッグストアのアルバイト求人です。

この求人は「無資格の人を募集しており、シニア世代も活躍している」となっています。このような求人を選べば、研修中の登録販売者でも働くことができます。

ただ正規の登録販売者であれば、薬の接客にあたったり薬部門の担当者になったりすることが可能です。一方で研修中の登録販売者だと、登録販売者としての業務に従事することができないため、品出しやレジ、清掃などその他の通常業務にあたることが多いです。

研修中の登録販売者の場合、シニアであっても体力を要する仕事に就かざるを得ない状況になりやすいのです。

そのため60代でも登録販売者として働き始めることは可能であるものの、正規の登録販売者のように体力のいらない仕事に就くことは期待できないといえます。

60代の登録販売者が定年後に働く方法

なお、登録販売者が定年後に働く方法には大きく分けて2つあります。それは、継続雇用制度を利用する方法と新しく働き始める方法です。

これら2つには、それぞれ特徴があります。そのためメリット・デメリットを知った上で、あなたに適した就業方法を選びましょう。

ただ、いずれの場合であっても契約社員やシニア社員、アルバイトなどの扱いになるのが基本です。そのため、仕事の内容が簡易になり、給料が下がることを覚悟しなければなりません。

再雇用などの継続雇用制度を利用する

なお有用な経験を買われて外部から声がかかっている場合を除き、基本的には定年前までに働いていた会社での勤務を継続するのが安心です。

当然ながらシニアは若年層よりも求人が少なく、採用されにくいです。そのため定年後に就業先を見つけようとしても、場合によっては見つからないケースがあります。そうなると、収入を得られない期間が生じ経済的に困窮するリスクがあります。

また同じ「登録販売者」という職種であっても、会社が違えば仕事内容や会社から求められる働き方などが変わる可能性が高いです。

例えば薬を扱う小売店の中には、マニュアル化・システム化を追求し、店舗の作業量を極力少なくしている店舗もあれば、現場の裁量権が多い店舗もあります。

基本的に、年齢を重ねるほど新しい環境に慣れることが難しくなります。そのため前に勤めていた会社と性質・風土が違う会社へ転職すると、ストレスが溜まり就業を継続できなくなりやすいです。

したがって定年後に働きたい登録販売者は、まず継続雇用制度を利用して、慣れた環境で働き続けることを検討しましょう。また、定年以降も働ける企業への転職を考えているのであれば、再雇用制度の上限年齢が高い求人を選ぶことが大切です。

このとき60歳が定年である企業であっても、希望すれば65~70歳まで働けるのが基本です。これは法律によって定められているためであり、事業者は申し出があれば65歳または70歳まで雇用する義務があります。

ただ、中には独自の再雇用制度を設けて70歳を超えても働き続けられる求人があります。例えば以下は、東京や愛知、大阪など全国に店舗を展開するドラッグストアの再雇用制度に関する案内です。

ここには65歳を定年年齢と定めているものの、「本人の希望した場合は75歳まで再雇用している」となっています。このような制度を利用すれば、定年後でも慣れた環境で長期間働き続けることができます。

シニア求人で定年退職後に新しく働き始める

ただ再雇用制度を利用した場合、定年前と同じ環境下で難易度の低い仕事を任されることになります。

例えば定年前に責任・やりがいのある仕事に就いていたとしても、再雇用後には役職なしで働くケースが多いです。そうなると、今まで部下だった従業員が上司となることがあります。

ただ中には、「今までの部下に従って働く」ことに耐えられない人もいるでしょう。このような場合、定年を機に新しい職場へ転職した方がストレスなく就業しやすいです。

また定年前での会社の人間関係や職場環境などが悪い場合、再雇用制度を利用するとストレスを感じやすい環境で働き続けなければなりません。そうしたとき、定年前の環境があなたに合わないのであれば、定年を機に新しい職場を探した方がストレスなく定年後の人生を過ごすことができるでしょう。

定年前の環境が合わない人や人間関係などをリセットしたい人は、定年を機に新しい会社で働くことを視野に入れるといいです。シニアであっても、登録販売者であれば就業先を見つけることができます。

例えば以下は、兵庫にある総合スーパーの登録販売者求人です。

この求人はシニアを歓迎しています。このような求人を選べば、シニア登録販売者であっても新しい就業先を見つけることができます。

60歳以上の登録販売者が働くコツ

なお登録販売者が定年後も長く働き続けるためには、横柄な態度を取らないことが大切です。

定年退職を迎えるまで働き続けてきた人は、努力を重ねて知識・経験を積み上げてきたことでしょう。その事実は、定年を迎えて簡易な仕事に就いたからと言って変わりません。

ただ、ビジネス手法は年代・世代によって変化します。特に登録販売者が扱う医薬品業界は、常識が覆り続ける業界です。そのため、現役世代のときに常識だった知識・手段は、現役世代にとっては古いケースがあります。

このような状況で、あなたの経験を若い世代に押し付けることは、組織の成長を妨げる要因となります。また若い世代からは「老害」という扱いを受け、あなた自身も働きにくい環境になってしまいます。

そのため、あなたが過去にどれだけ多くの業績を残したとしても、それを若い世代に押し付けることは避けるべきです。

一方で、あなたの経験によって若い世代の活躍をフォローできると、会社にとって有用な存在となることができます。そのため定年後にも長く働き続けたいのであれば、現役世代を支える意識で接することが大切です。

資格を格下げさせないようにブランクに注意する

また定年後に働く登録販売者には、もっとも気を付けなければいけないポイントがあります。それは、登録販売者資格を研修中へ格下げさせないことです。

前述のように、登録販売者資格は過去5年以内に2年以上の業務・実務経験がなければ研修中へ格下げとなります。つまり、ブランクが3年以上生じると、資格が研修中扱いになってしまいます。

研修中の登録販売者となると、応募できる求人がかなり少なくなります。そのためシニア登録販売者が研修中となると、働き先が見つからない事態に陥りやすいです。シニア登録販売者は、資格が格下げとならないようにブランクを空けないことが大切です。

このとき注意が必要なのは、ブランクを3年未満に抑えても資格が格下げするケースがあることです。具体的にいうと、過去5年以内に「月80時間以上の業務・実務経験」が24ヶ月以上なければ研修中の登録販売者へ格下げとなります。

そのため過去5年以内に2年以上登録販売者として働いていても、月の勤務時間が80時間に満たなければ研修中の登録販売者となってしまうのです。

そのためシニア登録販売者は、短時間労働の契約であっても月80時間以上は働くようにしましょう。

このとき、シフトを80時間ぎりぎりで組んでしまうと、遅刻や早退、欠勤などによって管理者要件を満たせない月が発生してしまいます。例えば以下は、1日4時間・週5勤務のシフト例です。

このシフトだと1ヶ月の予定労働時間が「4時間×23日=92時間」となります。ただ、体調不良や家庭の事情などによって4回欠勤すると、実労働時間が「4時間×19日=76時間」となります。これでは管理者要件を満たすことができません。

特に曜日固定でシフトを入れる場合、月によって予定労働時間が少なくなるケースがあります。このような月に欠勤や遅刻、早退などが発生すると業務・実務経験が足りなくなりやすいです。

そのためシニア登録販売者は再就職に当たり、予定労働時間を月80時間より多くすることが大切です。具体的には、予定労働時間が月100時間ほどになれば欠勤などによって業務・実務経験を満たせなくなるリスクが少なくなります。

郊外店やドラッグストア以外のシニア募集で負担を軽くする

また「登録販売者職であれば、シニアであっても体力を要しない仕事に就きやすい」のは基本的に事実であるものの、中には仕事量が多い店舗もあります。

例えば駅の近くにあるドラッグストアは、顧客の来店が途切れません。また売上点数が多いため、納品・品出し量もかなり多いです。そのため、シニア登録販売者が働くと体力的にきつい思いをするでしょう。

これに対して郊外にあるドラッグストアであれば、来客数・売上点数が少ないため、体力を使わずに仕事を進めることができます。

実際に以下は、郊外型のドラッグストアの店内です。

この写真を撮ったのは夜7時でしたが、私以外に客はいませんでした。また、この店舗を日中に利用することもありますが、どのタイミングで来店しても店内が混んでいることはありません。郊外のドラッグストアだと、来客数が少ないため体力を使わずに仕事ができるのです。

またシニア登録販売者には、ドラッグストア以外の小売店もおすすめです。薬の売上が低く、納品・品出しの量が少ないからです。また、コンテナ・ダンボールに入っている商品数が少ないため体への負担も軽いです。

実際に、私は大手スーパーの薬売り場で働いていた経験があります。納品は多くても荷台2つ程度であり、商品がほとんど入っていないコンテナも多数ありました。

また、この職場は私が入社するまで60代以上の資格者のみで運営していました。ドラッグストア以外の薬売り場は、高齢のスタッフだけで運営できるほど仕事量が少ないのです。

そのため転職を希望するシニア登録販売者は、郊外のドラッグストアやスーパーの薬売り場などの求人を選びましょう。

なお、ドラッグストア以外の小売店であっても家電量販店とディスカウントストアは避けるといいです。これらの「価格競争が激しい業態」は、人件費を削って商品価格を下げています。そのため少ない人数で店舗を運営しており、一人当たりの業務量が多めです。

また薬を扱う家電量販店やディスカウントストアなどは外国人観光客需要がある店舗がほとんどです。観光客は団体で訪れることが多いため、観光客の来店があると仕事量が急激に増えます。そのためシニア登録販売者は、これら業態を避けて求人を探しましょう。

転職サイトを利用して求人を探す

ただ、登録販売者が定年後も長く働き続けられる職場を自力で探すことは難しいです。

求人案内には会社の制度のすべてが記載されているわけではありません。そのため、求人案内を見るだけでは再雇用制度などの詳細を知ることができません。

また求人に「シニア歓迎」となっていても、実際にシニア登録販売者が働きやすい環境かどうかはわかりません。中には仕事量が多く、シニアが勤務するには厳しい状況であるケースもあります。

そこで定年後にも働き続けたい登録販売者は、転職サイトを利用して求人を探しましょう。

転職サイトの担当者は会社の制度や内情などを踏まえ、あなたに合った求人を紹介してくれます。そのため転職サイトを利用すると、定年後も働き続けやすい求人を見つけやすくなります。

ただ、担当者の力量には個人差があります。そのため転職サイトは最低でも3社以上登録しましょう。そうすることで、定年後であっても心身への負担が少ない環境で働くことができます。

まとめ

登録販売者は市販薬を扱える資格です。会社からしてみれば、登録販売者を雇うだけで販売できる商品(=薬)が増えます。そのため登録販売者の資格保有者は、定年後のシニア世代であっても需要があります。

また、登録販売者は顧客の健康相談が最優先の職種です。さらに、薬などは商品の重量が軽いため体への負担が少ないです。登録販売者だと、一般的な小売業の従業員よりも「体力を必要としない仕事」に就きやすいのです。

ただ中には、従業員一人当たりの業務量が多い職場もあります。そのため登録販売者が長く働き続けるためには、シニアが働きやすい求人を精査しなければなりません。

そこで定年後にも働き続けたい登録販売者は、転職サイトを利用して求人を探しましょう。そうすることで体力の続く限り現役で働き、心身の健康を保ちながら経済的安定を手にすることができます。


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