一般的な会社に勤めると、勤務時間に加えて通勤時間も拘束されます。片道45分の会社に勤務すれば、1時間半以上もの時間を通勤に費やすことになり、1日の拘束時間が10時間を超えてしまいます。
一方で、在宅で仕事をしていれば、通勤時間が発生しません。また、仕事内容によっては自分の好きなように勤務時間を設定できます。そのため、在宅ワークは多くの人にとって憧れとなっています。
このとき、一般的に専門的な知識があれば在宅ワークに就きやすいです。そのため専門職の一つである登録販売者の資格保有者の中には、資格を活かして在宅勤務を叶えたい人もいるでしょう。
それでは、登録販売者が在宅勤務を実現することは可能なのでしょうか? また登録販売者が在宅ワークを叶えるためには、どのように行動すればいいのでしょうか?
ここでは、登録販売者が在宅勤務を実現するための方法について解説していきます。
もくじ
登録販売者が在宅ワークすることは可能なのか?
登録販売者は市販薬を販売できる資格です。そのため小売業界は登録販売者の主な就職先となっています。
小売企業からしてみれば、登録販売者を小売店舗で勤務させると市販薬を販売できるようになります。ただ、これを言い換えると「登録販売者を雇用しても、店舗で働かせなければ薬を売れない」ことになります。
つまり、会社が登録販売者の資格保有者を店舗外で勤務させるメリットは低いのです。そのため登録販売者の主な就職先である小売業界では、資格を活かした在宅ワークをすることはほぼ不可能だといえます。
薬のネット販売であっても在宅勤務は難しい
それでは、商品を直接受け渡さずに市販薬販売をするネット通販業務はどうなのでしょうか?
結論からいうと、ネット通販事業で登録販売者資格を活かした在宅ワーク求人もほとんどありません。薬のネット通販は、一般的な他のネット販売とは大きく異なるためです。
一般的な商品のネット通販業務では、店舗を持たなくても運営することが可能です。そのため、サイトの運営・管理や問い合わせ対応などの在宅ワーク求人があります。
これに対して市販薬のネット販売には、厳しい規定があります。
例えば、市販薬は薬を売っている実店舗しかネット販売できません。また、形だけの店舗では薬のネット通販の許可が下りないため、実際の店舗での対面販売と通販事業を並行することになります。
実際に以下は、厚生労働省が出している市販薬のネット販売に関する案内です。
ここには、実際に市販薬の販売を行っている有形の店舗しかネット販売できないと記されています。また、「週30時間以上開店している」「店舗で陳列している商品しか販売できない」などの細かな規定もあります。
そのため登録販売者が市販薬のネット販売事業に携わる場合、店舗販売業の許可を得るために実店舗勤務となるケースが多いです。
またネット通販事業と店舗業務を分業している場合であっても、在宅でサイト管理にあたるケースはほとんどありません。つまり登録販売者が医薬品販売業務に就く場合、ネット通販事業であっても在宅勤務することは難しいのです。
また一般的なネット通販では、在宅勤務者が問い合わせ窓口を担当するケースがあります。そのため誰でも応募できる在宅勤務求人の中には、ネット通販の問い合わせ受付業務があります。
ただ市販薬販売のネット通販では、受付窓口の在宅勤務求人はまずありません。医薬品の問い合わせ対応には高いスキルが必要であるため、コールセンターで一括して相談を受け付けているケースがほとんどだからです。
そのためネット販売の問い合わせ窓口であっても、登録販売者が在宅勤務することはかなり難しいといえます。
登録販売者が在宅勤務する方法
ただ登録販売者資格そのものを活かすことはできないものの、登録販売者の知識を活かした職種であれば在宅勤務が可能です。
具体的にいうと、世の中に存在している在宅ワークのほとんどがプログラミングやwebデザイン、データ入力などのパソコン・インターネットを使用する業務の求人です。
このようなパソコン作業を伴う業務のうち、薬・医療の知識を活かした記事執筆には登録販売者の知識・経験を活かせます。そのため登録販売者資格を活かして在宅ワークしたい人は、ライター職を目指しましょう。
メディカルライター求人は在宅ワークが可能
薬の知識を活かせるライター業の代表的な職種の一つがメディカルライターです。メディカルライターは業務のほとんどをパソコンで行います。そのため、在宅勤務可能な求人が多いです。
例えば以下は、東京や大阪に拠点があるメディカルライター求人です。
この求人は「在宅勤務可」となっています。メディカルライター職に就けば、薬などの知識を活かした在宅勤務が可能となります。
このとき、メディカルライターは病院や薬局などで利用される資料の作成や、医療系Webサイト記事の構築などを行います。
このような資料作成のためには、英語で書かれた論文を読み解く必要があります。そのため、メディカルライター職には英語力が求められます。
また、メディカルライターは医師などの医療関係者向けの資料・Webサイトを作ります。そのため医療に関する高度な知識が必要であり、薬剤師などの専門家やライター経験者を募集しているケースが多いです。
ただ中には、ポテンシャル採用で資格・経験がなくても応募できるメディカルライター求人もあります。例えば以下は、東京に本社のあるメディカルライター求人です。
この求人は「メディカルライターに興味があり、英語論文を読解できる人」であれば誰でも応募できます。また薬剤師などに限らず、「医療系の資格を保有している人であれば優遇している」となっています。このような求人であれば、登録販売者でもメディカルライターに挑戦することができます。
クラウドソーシングを利用して在宅勤務のライターとなる
ただ、メディカルライター求人は数が少ないです。また登録販売者試験に受かっただけの基礎知識では務まらないですし、英語の読解力も必要となります。そのため、経験・知識が豊富な登録販売者しか挑戦することはできません。
さらに、メディカルライター求人では薬剤師などの高度な知識を持つ専門家がライバルとなります。そのため、経験・知識が豊富な登録販売者でなければ、このような状況を勝ち抜くことは困難です。
そのため一般的な登録販売者が在宅勤務を望む場合、クラウドソーシングサービスを利用したフリーランスライターを目指すのが現実的です。
クラウドソーシングとは「仕事をしたい人」と「仕事を依頼したい人」をつなぐサービスです。クラウドソーシングサービスを利用すると、在宅可能な仕事依頼を見つけることができます。
実際にクラウドソーシング上には、ヘルスケアに関する記事執筆の依頼が多くあります。例えば以下は、大手クラウドソーシングサービスで扱われている仕事依頼の一部です。
この依頼は健康・病気に関する記事執筆であり、医療業界の経験者を募集しています。このような仕事依頼を受ければ、登録販売者の知識を活かした在宅ワークが可能となります。
登録販売者が在宅ワークするデメリットとリスク
なお、在宅ワークには「通勤の必要がない」「時間を自由に使える」などのさまざまなメリットがあります。疲れたら休むことができますし、人間関係で悩む必要もありません。そのため会社勤めしている人には、在宅勤務が「メリットしかない働き方」のように思えます。
ただ「自由に時間を取れる」ということは、「いつでも休める環境で仕事をしなければならない」ことの裏返しです。自宅は気が散る要素が多いですし、在宅勤務は監視の目もありません。
特にライター業に就くと、長時間パソコンに向かって記事・資料を作成することになります。そのため、接客や他スタッフとの共同作業を楽しく感じる登録販売者には向かない可能性が高いです。
実務経験を積めずに研修中の登録販売者となる
また登録販売者が在宅勤務する場合、もっとも注意しなければならないのは管理者要件を満たせなくなる点です。
登録販売者は過去5年以内に2年以上の業務・実務経験がなければ「研修中」の扱いとなります。研修中の登録販売者は一人で薬を扱えないため、小売業界での需要が低く待遇も悪いです。
管理者要件における業務・実務経験は、市販薬販売業務に関する仕事でしか積めません。そのため、メディカルライターや健康記事の執筆などで登録販売者としての業務・実務経験を積むことは不可能です。
したがって、登録販売者が在宅勤務をメインにして3年以上働くと、資格が研修中へ格下げとなります。そうなると、好条件で小売業界へ復職することがほぼ不可能となります。
クラウドソーシングを利用すると収入が低くなる
このとき、メディカルライターはスキルが付くのでいいものの、クラウドソーシングサービスを利用したフリーランスライターとして働く場合、在宅勤務をメインにすることは避けるのが無難です。クラウドソーシングは報酬単価が低いためです。
一般的にWebサイトの記事執筆の報酬相場は、1文字あたりの報酬が0.2~0.5円です。単価の高い依頼であっても、1文字あたり1円が報酬となります。
例えば5,000文字の記事を執筆した場合、文字単価0.2円では1,000円しか報酬を得られません。文字単価1円の依頼であっても5,000円の報酬です。
実際に以下は、大手クラウドソーシングサービスで取り扱われている案件です。
この依頼は健康に関する専門知識を保有している人を募集しています。ただ報酬が1文字あたり0.5円です。5,000文字の記事を執筆しても、報酬は2,500円しかもらえないのです。
また、通常5,000文字の記事執筆には5~6時間を要します。さらに記事を執筆するためには、細かなリサーチが必要不可欠です。
リサーチ時間を含めると、フルタイムで働いても5,000文字書ききれないケースがあります。このような状況では、文字単価が1円の高単価であっても、日給が5,000円(時給625円)を下回ることになります。
これは、登録販売者として店舗勤務した際の日給に比べてかなり低いです。クラウドソーシングを利用した在宅ワークをメインに働こうとすると、収入が大きく低下するのです。
これに加えて、登録販売者が在宅勤務をメインにすると業務・実務経験が足りずに資格が研修中へと格下げになります。そのため、登録販売者が在宅勤務をメインにすることは経済面・将来面でのリスクが高いといえます。
したがって登録販売者が在宅勤務したいのであれば、在宅ワークは副業にとどめ、管理者要件を満たせる時間だけでも市販薬販売に関わることをおすすめします。
転職サイトを利用して求人を探す
なお、前述のようにメディカルライター求人であれば、経済面・将来面でのリスクはありません。そのため英語を扱えるなど、有用な経験・スキルのある登録販売者はメディカルライターを目指すといいです。
一方で一般的な登録販売者は、クラウドソーシングを利用した在宅ワークを、あくまでも副業とするのが賢明です。そのためにも「自宅から近い」「転勤なし」などの働きやすい条件のそろった会社へ入社することをおすすめします。
ただ、働きやすい条件のそろっている環境で働くためには、求人内容を精査しなければなりません。またメディカルライターを目指す場合であっても、未経験が応募できる求人は少ないため求人探しに時間がかかります。
そこで在宅勤務したいと考えている登録販売者は、転職サイトを利用して求人を探しましょう。
転職サイトの担当者は、膨大な数の案件からあなたの希望条件を満たした求人を紹介してくれます。そのため転職サイトを利用すると、働きやすい求人や未経験可のメディカルライター求人を見つけやすくなります。
ただ、担当コンサルタントの力量には個人差があります。そのため転職サイトは、最低でも3社以上登録しましょう。そうすることで、より希望条件を満たした求人で働きやすくなります。
まとめ
登録販売者が勤務している店舗では、市販薬を販売できるようになります。言い換えると「市販薬を販売する店舗以外では登録販売者の需要がない」ことになります。そのため、登録販売者資格を活かして在宅勤務することは基本的に不可能です。
ただ登録販売者としての知識は、医療・健康分野の記事・資料作成で活かすことができます。そのため在宅勤務したい登録販売者は、ライターを目指しましょう。
しかし医療ライター職の一つであるメディカルライターは、難易度が高く求人が少ないです。また、クラウドソーシングを利用したライター職は報酬が低いため、あくまでも副業とするのが賢明です。
そこで在宅勤務を希望する登録販売者は、転職サイトを利用して就職を目指しましょう。そうすることで、メディカルライター職に就いたり、条件の良い本職の傍らで在宅ワークを実現したりすることが可能となります。
登録販売者が転職を行い、求人を探すにしても自分一人で行うのは現実的ではありません。そこで、ほとんどの人が転職エージェントを活用します。
転職サイトを利用すれば、「年収の交渉」「希望の勤務地」「労働時間の調節」を含めてすべて代行してくれるようになります。
しかし、転職サイトによって「地方在住者でも事前面談に対応している」「40代以上でも利用可能」など特徴に違いがあります。人気の転職エージェントの中でも、これらの特徴を理解したうえで、どの転職サイトを利用すればいいのか検討しなければいけません。
そこで当サイトでは、転職サイトごとの特徴について解説しています。転職では2~3社以上に登録して活動するのが基本になるものの、どの転職エージェントを利用すればいいのか理解したうえで以下のページから比較検討し、転職サイトへ登録するようにしましょう。