登録販売者試験に合格すると、自宅に合格通知が届きます。合格通知には「合格後の流れ」として、販売従事登録に必要な書類などが記載されています。
また、合格通知に記載されている案内の通りに手続きすれば、登録販売者として働き始めることができます。さらには何度も手続きするものではないため、現役の登録販売者であっても従事登録の方法を把握していない人が多いです。
特に、従事登録に関する書類を紛失した時や転職・退職時などの手続きに関して記している参考書はありません。また自治体によっては、公式ホームページにも記載がないケースがあります。
そこで登録販売者の販売従事登録の手続きについて、状況別に解説していきます。
もくじ
販売従事登録とは何のための手続きなのか?
登録販売者になるためには、登録販売者試験に合格する必要があります。ただ、試験に合格するだけで登録販売者となれるわけではありません。
扱い方を誤ると身体に害を生じる危険性のあるものが薬です。そのため市販薬の販売は保健所で管轄しており、店舗の所在している保健所に「市販薬の販売業務に就く」旨の登録を済ませなければ、登録販売者試験に受かっている人であっても市販薬を販売することはできません。
例えば東京都・渋谷区にあるドラッグストアで市販薬販売の業務に就くためには、渋谷区の保健所に「市販薬販売の業務に就く」旨の登録を完了する必要があります。この登録が販売従事登録です。
また販売従事登録を済ませなければ、登録販売者試験に受かっていても「登録販売者である」と名乗れません。登録販売者として働くためには、販売従事登録が必須なのです。
以下は、実際の販売従事登録に必要な申請書の画像です。
登録販売者試験に合格したら、登録販売者として働き始める店舗が所在している保健所に販売従事登録の申請を行うことになります。
このとき、販売従事登録は「市販薬販売に従事する登録手続き」であるため、薬の取扱店で働いていないと申請することができません。従事登録の際には、勤務先の薬店で発行された勤務証明書(雇用証明書)が必要です。
以下は、実際の勤務証明書の写真です。
この書類には、使用者(雇用者)と被使用者(あなた)の住所氏名を記入する欄があります。販売従事登録を行うためには、このような書類を会社に発行してもらう必要があるのです。
また販売従事登録の際には「市販薬を扱う上で健康上の問題がない」という医師の診断書や戸籍謄本、登録手数料、登録販売者試験の合格通知なども必要です。
これらの書類を提出して従事登録を終えると、販売従事登録証(登録販売者の免許証にあたるもの)が発行されます。販売従事登録証は登録販売者として勤務を始める際に必須となります。
以下は、実際の販売従事登録証です。
ここには、販売従事登録番号と販売従事登録年月日が記載されています。これらの情報は販売従事登録証の再発行時にも必要となります。そのため、念の為控えて保存しておくことをおすすめします。
なお合格通知は販売従事登録の際に回収され、手元には残りません。販売従事登録の二重登録を防ぐためです。基本的には、販売従事登録証を返納すると合格通知が返却されます。
合格通知書を紛失したらどうするのか?
では従事登録前に登録販売者試験の合格通知を紛失した場合、販売従事登録ができないのでしょうか? もう一度登録販売者試験を受けて合格しなければ、登録販売者として働くことができないのでしょうか?
もちろん、その必要はありません。登録販売者試験の合格者は都道府県で管理されています。そのため合格通知書を紛失してしまっても、販売従事登録に必要な書類を揃えることは可能です。
具体的にいうと合格通知書を紛失した場合、あなたが登録販売者試験を受験した地域の保健所に合格通知書の再発行または合格証明書発行を申請すればいいです。
ただ、これら書類の発行手続きには再発行手数料(金額は自治体によって異なる)が必要です。また、あなたが合格した登録販売者試験の施行年月日や合格年月日、受験番号などを調べておく必要もあります。
以下は、実際の合格証明書の申請書です。
ここには、登録販売者試験の合格年月日や合格番号などを記入する欄があります。これらがわからないと、合格証明書の発行を申請することができません。
このとき、もし試験の施行日や合格年月日、合格番号などがわからないのであれば、「何年にどこで登録販売者試験を受けたか」だけは調べておきましょう。
登録販売者の試験日は都道府県によって異なります。また、試験は基本的に年1回しか行われません。そのため登録販売者試験を受験した年と地域がわかれば試験実施日を特定することができます。
また、試験日が判明すれば合格年月日を調べることが可能になります。そうすれば、試験を受けた保健所に合格者名簿から合格番号を割り出してもらうことができます。
販売従事登録証が必要な会社での手続き
販売従事登録証は、あなたが登録販売者であることを証明する書類です。そのため、薬の取扱店で登録販売者として働くためには販売従事登録証が必要となります。
具体的にいうと、あなたが登録販売者として働き始める際には販売従事登録証の原本を会社に預けます。
会社はあなたの販売従事登録証を保健所に提出し、「店舗で働く登録販売者の名簿に変更がある」ことを届け出します。そうすることによって、新しく「店舗の登録販売者名簿」に加えられ、あなたは登録販売者として働き始めることができます。その後、販売従事登録証は会社からあなたに返還されます。
このとき、事業者の中には「この会社で登録販売者として働くのだから、販売従事登録証を会社で保管しなければならない」として従事登録証を預かろうとするケースがあります。
ただ販売従事登録証は「あなたが登録販売者である証明書」であり、資格者本人が所持するべきものです。会社で販売従事登録証を保管する必要性はありません。
販売従事登録証を紛失したら登録販売者として働けないのか?
ただ場合によっては、販売従事登録証を会社に預けて返してもらい忘れてしまうケースもあります。また、会社や資格者本人が販売従事登録証を紛失することもあります。
このとき、販売従事登録証は再発行することが可能です。発行には3,000~4,000円程度の手数料が必要となるものの、「従事登録証を紛失したら登録販売者資格が失効する」というわけではありません。
ただ従事登録証の再発行には、一ヶ月程度の時間がかかります。また、販売従事登録証は発行した都道府県でしか再発行できません。
例えば、あなたが東京で登録販売者試験後の手続き(従事登録)を済ませた場合、大阪や愛知などの保健所では従事登録証の再発行ができないのです。
実際に以下は、埼玉のホームページに記載されている販売従事登録証再交付についての案内です。
ここには、「埼玉県以外で発行された販売従事登録証は、発行した都道府県へ問い合わせるように」と記されています。販売従事登録証を発行した自治体ではないと再発行できないのです。
離れた地域へ従事登録証の再発行を依頼する場合、書類を郵送でやり取りすることになります。そのため従事登録した自治体から離れた地域へ引っ越している場合、従事登録証の再発行には時間がかかります。
したがって販売従事登録証の紛失に気付いたら、なるべく早めに再発行手続きを済ませることが大切です。
また販売従事登録証の再発行には、販売従事登録番号や販売従事登録年月日などの情報が必要です。このとき、これらの情報がわからなくても従事登録をした保健所であれば調べてもらうことが可能です。
ただ調べてもらうには時間がかかるため、窓口で長時間待つことになります。そのため、なるべく従事登録の番号・年月日はあらかじめ控えておくことをおすすめします。
なお販売従事登録証の再発行が勤務開始日に間に合わなくても、店舗販売業の変更届を受理できるように便宜を図ってくれるケースがあります。
この場合、登録番号や従事登録年月日、再発行の手続き日・地域などを会社に伝えます。また「会社が店舗販売業の変更申請を行う日」を保健所の担当者に伝えておくようにします。
そうすると担当者が再発行手続き中の書類を確認し、販売従事登録証の原本を提出しなくても店舗販売業の変更を受理してくれることがあります。つまり販売従事登録証の原本があなたの手元になくても、登録販売者として働き始められるケースがあるのです。
ただ、すべての場合でこのような便宜を図ってくれるわけではありません。販売従事登録証は「登録販売者の免許証」であるため、これを持っていないと登録販売者として働けないのが原則です。
そのため「従事登録証なしでも手続きしてもらえる」という前提で相談を持ちかけると、申請を拒否される可能性が高いです。本来は通らない希望であるため、「本当に困っているので助けてほしい」と相談を持ちかけることが大切です。
退職時に従事登録に関する手続きはあるのか?
なお前述のように、販売従事登録の手続きをするためには薬の取扱店に勤務している必要があります。勤務先が発行した雇用証明書がなければ、販売従事登録を済ませることはできません。
これを言い換えると、「特定の会社(ドラッグストアなど)で働いているからこそ、販売従事登録証を発行できる」ということになります。そのため、「勤めていた会社を辞める場合、保健所で従事登録の変更手続きが必要であるのでは」と思っている登録販売者はかなり多いです。
販売従事登録をし直す必要はない
ただ実際には、あなたが薬店を辞める際に保健所で行う手続きはありません。保健所では登録販売者個人ではなく薬の販売店単位で資格を管理しているためです。
そのため登録販売者が退職する際に保健所で手続きを行うのは、資格者本人ではなく資格者を雇用していた会社です。退職する登録販売者は、特別な手続きをしなくても新しい店舗で登録販売者として働き始めることができます。
このとき定年や海外への移住など、「今後は日本で薬を販売する仕事に就く予定がない人」だと販売従事登録を取り消す手続きが必要です。基本的に、登録販売者業務に就かないことが確定してから30日以内に申請することになります。
また、登録販売者が死亡したり失踪したりした場合、死亡届などを提出する家族などが販売従事登録を取り消す手続きをしなければなりません。
実際に以下は、厚生労働省が発行する登録販売者についての規定です。
ここには「販薬の販売に従事しなくなったときや資格者が死亡・失踪した際には、30日以内に従事登録を消除しなければならない」と記されています。
一方で「薬店での勤務は辞めるが、今後登録販売者としての仕事に就く予定・可能性がある人」は販売従事登録を取り消す必要はありません。つまり、転職によって登録販売者以外の仕事に就く場合であっても、販売従事登録を取り消す必要はないのです。
したがって定年などによって今後薬の販売業務に就く意思がない場合を除き、退職時には販売従事登録に関する手続きが必要ないことを覚えておきましょう。
まとめ
登録販売者試験に合格した人が登録販売者として働き始める際には、販売従事登録を済ませることになります。販売従事登録を行うためには、試験の合格通知書が必要です。
ただ登録販売者試験の合格後、しばらくしてから従事登録を行う場合、合格通知書を紛失してしまっているケースがあります。このような場合、合格した登録販売者試験を実施した都道府県に合格証明書を発行してもらう必要があります。
また、販売従事登録などの保健所への届け出は、登録販売者として初めて働き始めるときのみ手続きが発生します。転職・退職時に保健所で資格者本人が行う手続きはありません。
ただ販売従事登録証を紛失している場合、新しい会社で登録販売者として働き始めることができません。そのため手元に従事登録証がないのであれば、早急に再発行手続きを進めて再就職に備えましょう。そうすることで、転職先の会社でスムーズに登録販売者として働き始めることができます。
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